見出し画像

ものづくりの仕組みの変遷、フォード、トヨタ、TOC

 こんにちは、ゴールシステムコンサルティングの村上悟です。

 今回からは、ものづくりシステム(オペレーション・コントロール)の歴史について振り返ってみましょう。私たちが今日当たり前だと思っている、欲しいものが何でも手に入る生活。これは18世紀にイギリスで起きた産業革命による革新(イノベーション)の結果です。この産業革命による工業化以前は、何か製品を生産しようとするときは、それぞれの部品を一つずつ別々に組合わせて、1台ごとに手作業で作っていました。

 今日、私たちはパソコンを組み立てようと思えば、PCショップに行って部品を購入すれば、部品の互換性が担保されていますから、様々なスペックのパソコンを簡単に組み立てることができます。この仕組みのルーツ、同じ部品ならどれでも同じように組立ができるという、「部品の互換性」は19世紀にアメリカで完成しました。これによって、作業を細かく単純作業に分解して、非熟練作業者でも仕事を分業する事が可能となったのです。そして20 世紀に入ると、ティラーやギルブレイスらによって科学的管理法が開発されると、仕事をさらに細かく、要素作業に分解して改善する事で生産能率を劇的に向上させることが可能になりました。この科学的管理法(テイラーシステム)は、フォード社にも導入され、仕事を単純作業に分解し、コンベーヤ-で同期をとる方式が編み出されます。「鉄鉱石を溶鉱炉に入れてから完成車が出てくるまで 2日間」と言われた、同期一貫生産のしくみで驚異的な生産性の向上を実現しました。T型フォードは、1909 年から18 年間に渡って、1,500 万台以上生産され、フォード生産方式は「できるだけ多くの数量」を「できるだけ速く」つくる、当時としては画期的な生産方式であり、フォード・モータスは富裕層の独占物であった乗用車を一般大衆にも手の届く存在にしたことが大きな功績でした。

 そしてその後、ヘンリーフォードの同期生産方式の考え方に学んだ日本企業が、戦後の焼け野原から世界に羽ばたきます。フォードの同期生産方式をスーパーマーケットの在庫補充方式をヒントに学び、生産の流れを犠牲にすることなく複数車種を生産(混流生産)するトヨタ生産方式が誕生したのです。かんばん、あんどん、平準化生産、タクトタイムでの同期生産、ニンベンのついた自動化、ジャストインタイム、多車種混合ライン、ムダの徹底的排除などなど、流れのスピードを上げるさまざまな創意工夫による改善が継続的に行われ、トヨタは次第に国際競争力を高めてゆきます。

 トヨタ生産方式(TPS)のしくみも、単一品種から多品種化の流れに対応した環境変化への適応の歴史でもあったのです。そして1970年代、アメリカ製造業は巨大な市場を背景にした、大量生産方式の圧倒的な優位性に安住し品質向上の努力を怠ると、日本企業が信じられないほど高品質の製品をひっさげてアメリカ市場に進出してきました。これは日本企業が、品質管理の権威であるデミング博士の教えなど、アメリカの最先端の管理技術に学び、第一線従業員をも巻き込んだ改善活動を進めた結果、自動車、テレビ、工作機械等どれをとっても日本製品は安く、故障が少なく安心して使用できるようになっていたのです。

 1970−80年代は、アメリカに追いつき追い越せでやってきた日本の製造業のビジネス・モデルが一つのピークを迎えた時代であったと思います。自動車、テレビ、家電製品、半導体など多くの製品が圧倒的な競争力で市場を席捲した時代だったのです。その結果、激化する貿易摩擦の中で、日本研究も盛んに行われ、79年には、ハーバード大学のエズラ・ボーゲル教授が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を出版し、日本でもベストセラーになりました。その結果、我々は日本が世界一の経済大国になったという幻想をも抱いたのでした。

 そして、80年代のアメリカでは「日本に学べ」がブームとなります。日本のものづくりを冷静に研究し、トヨタ生産方式は「リーン生産(TPS)」、日本的品質管理は「シックスシグマ」など、そのエッセンスを欧米流に体系化してアメリカ流の新しい経営手法として普及しました。リーン生産と名前を変えたトヨタ生産方式は、MIT(マサチューセッツ工科大学)のジェームズ・ウォマック博士らに徹底的に研究され、その著書『リーン生産方式が世界の自動車産業をこう変える』(1990年)で全米に広まりました。また、本家であるトヨタ自動車も激化する貿易摩擦に配慮する形で、アメリカにトヨタ・サプライヤー・サポート・センター(TSSC)を設立し、そのノウハウを広く開示・指導した事により、さらに大きく普及する事となったのでした。

 その後、トヨタ生産方式を徹底的に研究し、全く違うスタイルで生まれたのがTOC(Theory of constraints :制約理論)でした。1980 年代の半ば、TOCの開拓者であるエリヤフ・ゴールドラット博士は、工場改善をテーマにした小説『ザ・ゴール』を発表し脚光を浴びます。生産ラインの能力はボトルネックで決まる。工場の生産性を改善するためには、ボトルネックの能力を最大限引き出せば良く、ボトルネックだけは詳細なスケジューリングを行い他の工程はボトルネックに従属させるといDBR う DBR( Drum Buffer Rope )と呼ばれる生産管理方法が提案されたのです。TPSではうまく成果を出せない企業の多くにとって、緻密な管理を要求するTPSに比べれば、DBR の簡便さは極めて魅力的であり、ボトルネック工程にだけ集中するというTOCは大いに期待される事となりました。

 次回は、フォードモータースのヘンリーフォード、トヨタTOC自動車の大野耐一、TOCのエリヤフゴールドラットという三人の巨人を振り返ってみます。

ここまでご覧いただきありがとうございました!GSCでは、最新のセミナー情報など、仕事に役立つ情報を週に1回お届けしています。登録無料・いつでも配信停止可能です。GSCのニュースを見逃したくない方は、ぜひご登録ください!

▼近日開催予定の無料セミナー一覧です。以下の一覧ページから、該当するセミナーを選び、お申込いただけます。
→12/2(月)CCPM基礎セミナー第3回
→12/3(火)クラウド作成体験セミナー
→12/9(月)生産管理と製造現場の整流化セミナー
→12/13(金)多品種少量の工場管理のアプローチセミナー、

▼ただいま、TOC思考プロセスを本格的に学ぶ「ジョナコース」も募集中です(次回早期割引は12/20申込分までです)。

▼記事に関するコメントは、お気軽にコメント欄にご投稿ください。また、当社へのお問合せ等は、以下の問合せフォームよりご連絡ください。

▼ゴール・システム・コンサルティングは、ただいまYouTubeも隔週月曜公開中です!

いいなと思ったら応援しよう!