五島悠悟

実在しません

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インターネットをやろうとする企業アカウントたちについて

ミームとは、文化的遺伝子のことである。生物は遺伝子によって自らの特徴を後世に残そうとするが、人間には言語やその他種々の表現によって自らの生きた証を残す能力がある。そこから転じて、インターネットミームとはソーシャルネットワークや動画サイトで伝播される「ネタ」のことを指し、ミームの本義とは多少ずれる感じもしなくはないが、複製され、時に改変され、掛け合わされながら世代を渡っていくという意味では確かな遺伝子的性質を持っている。 インターネット上の諸アカウント=人格がバズを狙う動機は

    • 『地面師たち』 ハリソン山中とは一体何だったのか

      この記事は『地面師たち』についてのネタバレを含みます。 『地面師たち』をご覧になっただろうか。視聴していなくとも、一部のセリフやシーンがSNSでネットミーム化しており、「おおむね、こんな作品だろう」、というイメージが醸成されていることと思う。 そしてそのイメージは概して外れていない。『地面師たち』はまさしくネットミーム的な作品だ。 ごく雑に要約すると、『地面師たち』はめちゃくちゃデカい金額が関わる詐欺事件に関するドラマだ。 物語は、精鋭の集まる詐欺師チーム、騙される側の組

      • 「バズ」と「ミーム」論

         インターネット上で(特にSNS上で)ある情報が拡散されることを、「バズる」ということがある。「バズ」の原義は「虫が群れ集って鳴らす羽音」のことであり、「大袈裟なばかりで中身のない空騒ぎ」という皮肉な含意がある。拡散される情報の全てが「空騒ぎ」ではなかろうが、ネットの盛り上がりの寿命が短いことは確かで、多くはピークが過ぎてしまえば羽虫が散るように霧消してしまい、跡形もなくなる。もっとも、現在我々が「バズる」という言葉を使うときに、そうしたニュアンスが念頭に置かれていることはす

        • マスクをしないと公然わいせつになる時代がやってくるのか?

           マスク着用生活も2年目に入ってしばらく経った。未だに、食事などで同僚がマスクを外していたりすると、「そういえば、この人こんな顔だったっけ」とか思ってマジマジと見てしまう。  1年間でマスクにまつわるトラブルのニュースも幾つか記憶に残るものがあった。マスクを着けずに飛行機を降ろされたおじさんや、マスクを正しく着用しなかったせいで試験を失格になったおじさん。新聞沙汰にまで発展する事例は稀なのでサンプル数は多くないけれども、どうもおじさんが厄介ごとを起こす傾向にあるらしい。そし

        インターネットをやろうとする企業アカウントたちについて

          ジャイアンと「人KENまもる君」と社会悪の問題

          「人権イメージキャラクター人KENまもる君と人KENあゆみちゃんは,漫画家やなせたかしさんのデザインにより誕生しました。2人とも,前髪が「人」の文字,胸に「KEN」のロゴで,「人権」を表しています。人権が尊重される社会の実現に向けて,全国各地の人権啓発活動で活躍しています。」――法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken84.html)より  アンパンマンが菓子パンの擬人化であるのと同様に、「人KENまもる君」はやなせたかし

          ジャイアンと「人KENまもる君」と社会悪の問題

          『The Last of Us PartⅡ』から考える"ポリティカルコレクトネス"

          大作かつ怪作となったポストアポカリプス・アクションゲーム  『The Last of Us PartⅡ』とは、アメリカの開発会社(ノーティドッグ)によってつくられ、2020年6月19日に発売された、PS4用アクションゲームである。謎の菌類が蔓延し、崩壊した世界を舞台としたいわゆるポストアポカリプスものであり、前作で描かれた滅びゆく市街地の風景の美しさと人間ドラマは好評を博し、大作としての評価を得ている。  前作のストーリーからして、一人の人間の命と世界そのものを天秤にかける

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          なぜ『ゴースト・オブ・ツシマ』は蒙古襲来下の対馬を舞台にしたのか

          蒙古襲来は「ニッチ狙い」か 『ゴースト・オブ・ツシマ』は、2020年7月17日に発売されたPS4用のオープンワールド・アクションゲームである。アメリカの開発会社(サッカーパンチプロダクションズ)によって製作された、サムライを主人公とするゲームだということで話題を攫った。基本的なゲームシステムは、ごくオーソドックスなオープンワールドゲームだが、日本を(しかも一見して違和感のないごくまっとうな日本を)舞台としていることが、西洋風の食器に和食を盛るがごとき一種の新鮮味をもたらしてく

          なぜ『ゴースト・オブ・ツシマ』は蒙古襲来下の対馬を舞台にしたのか