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「その話、興味あります。」
「相席させて頂いてもいいですか?」若い女性に声をかけられた。今時丁寧な言葉遣いの子だな、と思った。丸の内ストリートパーク。友人とキッチンカーのお弁当を食べながらおしゃべりをしていたときのことだ。
「どうぞ」と着席を促す。パソコンを広げた彼女はすぐに仕事モードに入った。我々は再びおしゃべりに戻る。彼のクライアントの経営の話しやら、関連して不動産投資の話から、都心部の不動産事業の展開などについてしばし放談していると、私がカメラのレンズを望遠ズームに取り替えようとしているのを見て、「プロカメラマンですか?」と聞いてきた。
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「いや、アマチュアですよ。趣味でね。」と答えると、「私、モデルなんです」と言う。でも驚くのはまだ早かった。「今の不動産のお話、興味あります。」
仕事をしながら我々の雑談を聞いていたようだ。この少しのやりとりとイントネーションを聞いて、「中国の子だな」と直感した。どの辺が興味あるのかと聞くと、彼女は色々と話し始めた。
もともとデベロッパーに関心があり何社か受けたのだが受からなかった彼女は、現在メーカーで金融システムのSEをやっているが、いずれ不動産に関わる仕事につきたいと言う。その理由を聞くと、アマゾンのシアトル本社建設がジェントリフィケーションを招いたことを学び、不動産の重要性を学んだということだった。
「大都市の大規模開発もいずれ限界が来ますよね?」と核心をついてきた。
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「多分そうだね。」「やっぱりその時に不動産と金融が重要になると思います。今宅建の勉強もしています。」その後も色々話していると日本企業の問題やコミュニケーションのあり方など様々なことについて彼女の見解を堂々と語り続けた。いずれも納得できる意見だった。
「何故日本にいるの?」と聞くと、10年以上は結婚するつもりがないという彼女は、「日本と結婚したようなものです」と答えた。真意は不明だったが、なかなか面白い子だった。
中国限定のSNSでは日本のビジネス・就職事情を発信するサイトを持ち、インフルエンサーとしても収入を得ているそうだ。こっちは休暇でブラブラしている身、あまり時間を取らせてもいけないなと思い、切り上げ間際に、「写真撮ってもいいかな?」と聞くと、「いいですよ、ちょっと待ってください」と言い、鞄からメイクバッグを取り出し、マスクを取ってサッと口紅を塗ると、立ち上がって左右を見回し、自分の背景を決めてすぐにポーズを決めた。
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今まで厳しいビジネスマンの目をしていた彼女の表情は一瞬でモデルに変わり、ポーズを決めた。完全にプロの所作だった。圧倒されながら、次々とポーズを決めていく彼女にシャッターを切るだけの私。彼女のモデル技術とカメラの性能だけで写真がはき出されてきた。
面白い時代になったものだな、と思った。
2021年9月投稿