「北匈奴の軌跡 草原の疾風」第五章(2)
四
ジュアールは、報告に出向くゴリークとともにバランベルの本営への帰路を急いでいた。草原には心なしか春の息吹が感じられる。名もない草の花がほんのわずかであれ、目にとまった。
「いまになっていつもの春が舞い戻っても、もう元には戻れませぬ」
ジュアールは慨嘆した。
「ううむ。東ゴート族を無慈悲に追いつめなくてすんだかもしれぬな。あまりに殺しすぎた。ジュアール、わが軍の次なる動きはどうなる。主上はまだまだ殺し足りぬと言われるであろうか」
物事の終わりは次の始まりである。ゴリ