【ザゴール2編4:彼は数字でしか動かない...】
このマガジンの過去の記事は上記に入れてます。
過去のマガジンで改善の理論学習と実践をしてきた紫耀(ショウ)も入社して15年になる中堅社員となりました。製造で現場管理を経験した後、IT推進課を経て、再度製造部に戻ってきたようです。
そんな時、紫耀(ショウ)はある日工場長の哲也に呼ばれ、製造管理だけでなく事業管理についても携わってほしいと内示を受けます。そこで、事業管理のいろはを知らないことに不安を覚える紫耀(ショウ)に対して、哲也は、問題解決とは何ぞやについてザゴール2を使って解説していくことに。前回第二章まで解説し、問題解決のために思考プロセスを単純な構造を使って解説してきました。第三章では、より複雑な問題を分解していきます。
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◆生贄の三社
🧒:おはようございます。
👨🦳:おはよう。今日は第三章に入っていく。タイトルは、「生贄の三社」だ。
🧒:生贄の三社・・・。えぐいタイトルですね・
👨🦳;ああ、まず社外取締役の宇田さんという人と売却先との交渉から場面が始まる。そこにゴローさんも参加している。売却候補の3社の一つ、プレッシャースチームの売却について交渉だ。話はどんどん進んでいくのだが、あきらめがまだついていないゴローさんは、その会議が終わった後、売却自体の再検討をしてもらうため、宇田さんと会話をする。
🧒:わずかな可能性に賭けるというわけですね。どのように話したでしょうか。
👨🦳:話している中で、宇田さんは、今回の売却も最も高い値で実施しようとしており、経営者は株主のため、従業員のため会社は利益を守らなければならない。といっているんだ。つまり、会社の利害関係者の利益を守るということだ。
🧒:でも。その目的を達成するには2つの条件がありますよね。「株主の利益を守ること」と「従業員の利益を守ること」。多角事業のグループ会社を売却することは、株主の利益は守られるかもしれませんが、会社が売られることは売却更田会社の従業員には不利益になる可能氏が高い。下記のような格好になると思います。つまり、3社をめぐって売却するしないの対立が起こり共に解決するのが難しくなるかと思います。
👨🦳;その通りだ。ゴローさんたちも同じように説明をする。だが、宇田さんは納得しない。そして、宇田さんははっきりと
ゴローさんの所属するユニコ(その売却候補の親会社)は、各付けで落ちようがないほど落ちている。ユニコという会社全体の「従業員の利益を守る」ためにも一部の犠牲は仕方ないと思う。
というんだ。
🧒;なるほど、そこで「生贄の三社」ということなのですね。。。でも、「株主の利益を守る」ために「多角事業グループの子会社を売却」するのは、十分に利益がないはずですよね。もしこの会社の利益を上げられれば、つまり売る必要がく、株主の利益を守ることが出来れば宇田さんの目的は達成されるわけですよね。ゴローさんがそこを解決する方向を提示できればよいのですよね?
👨🦳;その通りなんだが、、いや、そんなに甘くないというか、やはり経営のプロはいくら理屈を言っても実践を数字で出すことでしか信用はしない。まずは、数字で示してくださいと言われて一蹴されてしまうよ。
🧒:そうですか・・。そりゃそうですよね。。。
◆解決への糸口。思考プロセスの展開
👨🦳;でも、暗い話だけでないんだ。その後、売却候補3社のうちの一つのダイナ印刷に行くと社長から、前回の解説した菓子袋事業で大きな案件が取れたという話が届くんだ。
🧒:小ロットの注文を多くとり、在庫を減らし、その管理ロス分を指しい引いて低単価かつ高利益で受注していくという戦略でしたね。それで注文が取れたとは、大きいですね。売却を踏みとどまらせる一つの案になりますね。
👨🦳:まあ、必要条件であるが十分条件ではないね。3社すべての数字が揃わない限り社外取締役たちの心は動かないことになっているからね。
🧒:でも、このダイナ印刷の解決策を材料にして話を聞いてもらえるようにしていくのがよさそうですよね。
👨🦳:そう、社外取締役には冒頭に出てきた宇田さんの他に2人キーマンがいるんだ。ゴローさんもその二人にアプローチをかけるんだ。
🧒:おお、なるほど
👨🦳:早速ゴローさんは、そのうちの一人の松原さんという女性の社外取締役と打ち合わせを設定する。
🧒;なるほど、まず、そこでダイナ印刷の戦略の下記の思考プロセスを説明、さらに現状を理解してもらうということをするわけですね。
👨🦳:その通り。
🧒:話た結果は、どうだったのでしょうか?
👨🦳;ダイナ印刷の売却交渉は先延ばしにしたほうがいいかも知れないと彼女は言ったんだ。
🧒:おお、じゃあ売却の件は見直されそうなのですかね?
👨🦳;いや、売る気は変わらず、高く売れるために先延ばしにするということだ。
🧒;まあ。そこは甘くないですか。
👨🦳;そう。だが、松原さんは思考プロセスについては興味をもった。そこでゴローさんは一緒に今回の問題を提案しようという。そして、ここで突然ではあるんだが、この思考プロセスをより深く進めていくための解説がはいる。TOC(制約理論)の大家で恩師のジョナさんとの対話の回想シーンとなり、「好ましくない現象、UDE(UnDesirable Effect)」について解説がされる。下記だ。
思考プロセスでは、「問題」とはそれぞれに独立しているのではなく、「原因」が「結果」を生むという因果関係で結び付いている。ただ「問題」だと考えられるもののほとんどは現象に過ぎない。TOCではそれらを「好ましくない現象。UDE」と呼んでいる。UDEをリストアップして、その因果関係を図にする。それを「現状ツリー」と呼ぶ。現状ツリーを構築できれば、すべてのUDEの原因がわずか一つか二つの「根本(コア)」となる問題にあると明らかになる。
とね。
🧒:コアの問題?
👨🦳;多くのUDEはコアの問題から派生している「現象」に過ぎないんだ。問題なのかただの現象なのかは見極めることが必要だ。でないと、枝はだけを解決することになってしまうんだ。
🧒:なるほど、たくさんのUDEを1つずつ消すのではなくコア集中することが大事で、そのために必要なのが現状ツリーというわけですか。じゃあ、早速その現状ツリーつくりに入っていくわけですね。
👨🦳;そうなんだが、この時松原さんからお題が出される。
🧒:お題?
👨🦳;松原さんは他の会社で同じような問題を抱えているそうで、その問題について現状ツリーを作ってほしいというんだ。UDEは下記であるという。
1競争がますます激化している
2 価格引き下げのプレッシャーがますます増大している
3 市場が望む価格では、十分なマージンがとれない場合が増えている
4 市場の期待に応えるパフォーマンスを示すことができないと、市場から見放されてしまう
5 マネジャーは、部分最適化を達成することで、会社を運営しようとしている
6 社内それぞれの部署同士で、互いのパフォーマンスの悪さを責め合っている
7 売上増大のために何か策を講じろと、ますますプレッシャーが高まっている
8 新商品をこれまで以上のペースで投入しないといけない
9 新商品が次々と導入され、市場が混乱する
10 新しい販売チャネル・製品は、既存の販売チャネル・製品の売上減につながる
11 営業スタッフの多くが、必要なスキルに欠けている
12 営業スタッフに負荷がかかりすぎている
13 製造、流通部門の改善が順調に進まない
14 技術部門による新商品の開発が順調に進まず、信頼性にも欠ける
15 革新的なマーケティングのアイデアが企業には欠けている
これだけのUDEに対して、現状ツリーが作れるか?というのが松原さんからのお題だ。
🧒;おお、なるほど。15個の現象もしくは問題を整理して現状ツリーを作れということですね。それが納得いくものになるかどうかですね。しかし、内容見ると日本企業あるあるですね・・。
👨🦳;その通り。おっと、だが、今日はもうこんな時間だ。是非考えてみてくれ。次回はこのUDE(好ましくない現象)に対する現状ツリーを解説しよう。
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今回は、ここまでです。現状ツリーについてやっと説明がでてきました。これを実際に作って問題の構造を見えるようにして本質を捉えられるかが、問題解決に重要ポイントとなりますよね。次回は、15個のUDEを整理する現状ツリーの作成の流れについて解説したいと思います。
なお、下記noteにものづくりに携わる人であれば必要であろう知識について、本マガジン同様に対話形式で解説しています。もしご興味あれば、覗いていただければ幸いです。
休憩がてら、番外編マガジンもあります。