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【ストーリーとしての競争戦略編23:ガリバーからの教え】

引き続き一橋大学の楠木健教授の「ストーリーとしての競争戦略」について対話形式を使って解説していきます。本マガジンのこれまでの投稿は上記に入れています。

前回のザゴール2編マガジンで製造から事業管理部への兼務となり、思考プロセスでの問題解決をについて学んだ紫耀(ショウ)は、関連子会社の社長をしている健にたまたま会います。お互いたまた本社出張だったようです。そこで、よい戦略とは何かについて議論を開始します。そして、オンラインで、勉強会をしていくことになり、オンラインで毎日実施しています。これでで第5章まで学びました。今回は第6章「戦略ストーリーの読解」の第4回目解説をします。前回はガリバーの戦略ストーリとして見ました。そこからの教訓を学んでいきます。

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◆読解からの教訓

🧒;おはようございます。前回まで5Cでガリバーの戦略を解説してもらいました。

👱🏼‍♂️;そうだな今回は、ここから得られる教訓、インプリケーションについて解説していく。これで6章は最後だ。ガリバーのストーリーの読解からはさまざまな教訓が引き出せるのですが、ここでは特に大切な三つの論点を指摘していく。

◆戦略は内向きに

👱🏼‍♂️;成長戦略は「内向き」に第一の教訓これだ。成長戦略はそれまでその企業を動かしてきたストーリーにフィットしていなければならない。これが第一の教訓なんだ。「内向きの成長戦略」というと、語義矛盾に聞こえるかもしれないが、これまでもたびたび強調してきたように、外的な機会に飛びつくだけの「外向き」の成長戦略は成功しない確率が大なんだ。

🧒;はい。理解しています。成長戦略というと、「さて、これからどういう分野が伸びるのかな……」とばかりに、目前の外的な機会に目が向きがちです。しかし、そうした外的な成長機会は、競合他社にも同じように見えているものですもんね。

👱🏼‍♂️;もちろん、外的な成長の機会が豊富であるには越したことがないのだが、目先の機会にやみくもに手を出してしまえば、かえってこれまでつくり上げてきた戦略ストーリーの一貫性が破壊されかねない。成長の機会をものにできないばかりか、これまでの強みも喪失してしまうなんてことがある。

🧒;文脈をとらえるという内向きな戦略が必要になってくるというわけですね。フィットをよく考えることが大切なんですね。

👱🏼‍♂️;ガリバーの成長戦略では、ストーリーとのフィットが強く意図されている。もうかなり古い話をしているが今でも共通性はある。事例にある2004年まででいえば、成長のための新しい打ち手として最も大きかったのは、ドルフィネットによる小売への進出だ。ドルフィネットは、BtoCにの卸売に特化していたガリバーにとって、新しい収益源を開くものだった。

🧒;確かに、BtoCですが、ドルフィネットはあくまでも買取事業の自然な延長上にあるんですよね。どんな人気車種であっても、卸売と同じように、7-10日問の在庫期問が過ぎれば、オークションに出してしまうというのがドルフィネットのポイントでしたから。7-10日間に限定すれば、小売と卸売が一つのストーリーの中で併存できます。

👱🏼‍♂️;現車の展示をせず、画像販売にとどめるのも、大きな展示場を抱えれば、ストーリーの基本線が崩れてしまうから。な2004年にドルフィネット経由で販売される車は買い取ったうちの10%だったが、2008年には20%まで上昇しています。単一の企業としては、現在では小売でも日本で最大の中古車販売業者になっている。

🧒;利益も稼ぎ出し、さらにオークションへの流通となっているわけですね。

👱🏼‍♂️;さらに、ドルフィネット事業は、車の買替えに伴うローンや保険といった金融サービスいもつながっていった。そして金融事業はガリバーの利益の五%程度を支えているんだ。

🧒;一貫性ですね。金融まで展開し、長さもある。

👱🏼‍♂️;2005年にはBtoBのオークションの「GAO!オークション」も始めている。ドルフィネットで買い手がつかなかった車は、原則的にガリバーのオークションに出品されます。ガリバーにはそもそも買い取った大量の中古車があるので、自らオークション運営も手がけるというのはいたって自然な話なわけ。

👱🏼‍♂️;ここでもこれまでのストーリーとのフィットが明確に意図されているのですね。他のオークションとの競合してまう部分もあります。

👱🏼‍♂️;ポイントは二つ。第一にドルフィネットと同様に、ガリバーのオークションは時間が限定されている。自社オークションへの出品は一回だけ。そこで成約しなければ、従来と同じように、外部のオークションに出されることになるんだ。ガリバーのオークションは週に一回ですので、いずれにしても早いうちに外部のオークションで売却されます。出品を一回に限定することによって、在庫回転率を高くしてコストとリスクを排除するというストーリーの基本線を崩さないようにしているわけ。

🧒;さらにその高回転率で、ほかのオークションの生態系は崩さないってことですね。

👱🏼‍♂️;二つ目のポイントは、ガリバーのオークションは業界初のインターネットの完全リアルタイム・オークションになっている。USSなど大手オークション運営会社は現車のオークションを中心としている。

🧒;オークションがネットって、今ならわかりますが、、当時ではなかなかすごい発想ですね。

👱🏼‍♂️;成約率を見ると、GAO!オークションは40%程度で、これは現車オークションの成約率(50%)を下回る。入札する業者が現車を直接見ることができないインターネット・オークションには不利な面があるが、大規模なオークション会場に投資をしてしまえば、ガリバーのそもそものストーリーに反して、高い固定費を抱えることになる。さらに、それ以上に問題となるのは、現車をいちいち自社のオークション会場に搬送するということになれば、ドルフィネットの小売と外部オークションでの売却の時間的なスキを衝いた機動的な出品ができなくなってしままう。

🧒;なるほど。ストーリー-とのフィットを考えると、オークションを自社で手がけるにしても、インターネットを利用する必然性があったわけですね。

◆ キラーパスを出す勇気

👱🏼‍♂️;第二の教訓は、経営者にはキラーパスを出す勇気が求められるということだ。前章でわりとしつこく話をしたけども、ストーリーの中核に「一見して非合理」なキラーパスがあるかどうか、「普通に優れた戦略」と「真に秀逸な戦略」の分かれ目はここにあります。


🧒;でも、見方によっては、キラーパスを繰り出すというのは、あえて「愚行」に手を出すと
いうことですよね。それが最終的にはストーリーに重要だったとしてもなかなか手が出せないのが現実な気がします。

👱🏼‍♂️;ガリバーの事例で興味深いのは、「小売の高いマージンを追わない」というキラーパスを決断した羽鳥さん自身が、それまで長い間中古車販売業界のインサイダーだったという事なんだよ。すごい勇気だ。社員の反発も最初はあったという、それでも決めきったんだな。ここにはものがたりがあったはずだ。

🧒;「損して得取れ」というのはわかるのですが、目先の利益を見殺しにせざるをえないということですね。だからこそキラーパスを出すのに勇気が求められるゆえんなんですね。

👱🏼‍♂️;その勇気がなければ、ユニークかつ持続的な競争優位のあるストーリーは実現できません。ここに経営者のリーダーシップの一つの本質があるんだよ。

◆なぜを突き詰める

🧒;でもどうしたら「一見して非合理」なことをあえてするという決断に踏み切れるのでしょうか。キラーパスを繰り出すのに勇気が必要だとしたら、その勇気はどこから生まれるのでしょうか。

👱🏼‍♂️:それは自らの戦略ストーリーに対する「論理的な確信」にしかない、というのが楠さんの意見なんだ。戦略ストーリーを構想する経営者は、自らのストーリーに論理的な確信を持てるまで、「なぜ」を突き詰めるべきなんだ。これが第三の教訓だ。戦略ストーリーは構成要素の因果論理でできている。

🧒;なるほど。因果論理とは、なぜある打ち手が他の打ち手を可能にし、なぜその連鎖の先に長期利益が見込めるのか、「ストーリーの筋」を意味していましたよね。

👱🏼‍♂️;そう。一つひとつの打ち手がしっかりとした因果論理でつながったときに、ストーリーは動きだすんだ。当然戦略に関しては、絶対の保証はない。しかし、論理的な確信を持つことはできます。それは「これだけ情熱を持ってやっているのだから、必ず道は開ける」という気持ちの話でないし「一か八かの勝負だ」というかけでもない。

🧒;その確信が大事ということですね。でも、それこそなぜその確信が持てるのでしょうか・・。

👱🏼‍♂️;自らのストーリーに対する論理的な確信を得るためには、構成要素のつながりの背後にある「なぜ」を突き詰めていくしかないんだ。何をやるか、いつやるか、どのようにやるか、戦略はさまざまな問いに答えなければならないが、何よりも大切な問いは「なぜ」なんだよ。
戦略ストーリーの成功は、「先見の明」では必ずしも説明できない。

🧒:ガリバーの成功にしても、羽鳥さんが「将来の中古車業界はこうなるだろう」と誰よりも早く予見して、結果的にそれがうまく当たりました、おめでとうございます、という話ではないということですね。

👱🏼‍♂️;ガリバーの例でいうと。なぜこれまでの中古車業界のやり方がコストとリスクを抱えなければならなかったのか、なぜ展示場での小売をやめて買取に軸足を置けばコストとリスクから解放されるのか、なぜそれが持続的な競争優位をもたらすのか、戦略ストーリーがそうしたさまざまな「なぜ」を突き詰めていたからこそ、現実がストーリーについてきたんだ。

🧒:戦略とは将来の世の中や環境が「こうなるだろう」(だからそれに適応しよう)という予測ではないのですね。自分たちが世の中を「こうしよう」という主体的な意図の表明なのですね。

👱🏼‍♂️;羽鳥さんにとって、中古車業界の将来は、予測の対象となるような外部要因ではなく、自らつくり上げるべきものだったんだ。戦略ストーリーはそのための設計図なんだよ。

🧒:なるほど。わかりました。

◆最後に

👱🏼‍♂️;6章もこれで終わりだ。この章では、ガリバーインターナショナルの事例を取り上げて、戦略ストーリーを詳細に読解。優れた戦略ストーリーがどのようなものか、それがなぜ優れているのか、具体的なイメージで理解していただけたと思う。次の章でいよいよ私の話もおしまいです。最終章では、これまでいろいろな切り口でお話ししてきたことをまとめて、ストーリーとしての競争戦略の「骨法」を解説していく。いよいよ最後だ。

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6章はこれで終了です。ガリバーの戦略ストーリの読解とそこから何が大事かを読み解いていきました。次回は、いよいよ最終章7章にて骨法を解説しこのマガジンを終了します。

*下記で、noteのコンセプトと、このマガジンとは別のものづくりに関連するマネジメント理論・書籍のリンクを記載しています。もしご興味あれば、覗いていただければ幸いです。

休憩がてら、番外編マガジンもあります。

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