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ナッジ研究者がお答えします#20:ナッジの長期的な効果は?

【質問】ナッジの長期的な効果についての研究結果はありますか?

一般的に、ナッジは効果が限定的である(例外については脚注参考)と言われ、長期的に効果を発揮するナッジの開発が提言されています(この論文を参照)。

長期継続しない理由として、現状のナッジは、多くの対象者が共通して持つバイアスに訴求するものが多く、「多数に利く弱い介入」がほとんどだからと考えられます。
しかし、現実世界では、対象者のバイアスにばらつきがあり、ナッジに対する反応も異なります。このため、ナッジは行動変容ステージを一段上げるのには適していますが、行動定着までさせるほどの力はない可能性があります。この解決策として、2つ示します。

①ナッジ+ブースト
ナッジでそっと後押しし、啓発でブースト(一気に加速)
するという組み合わせで行動定着、という考え方で、私もこれに賛同しています。ナッジだけよりも、啓発によるヘルスリテラシー向上と一体化した方が相乗効果が生まれやすいと考えます。

②個別化されたナッジの開発
これからは、ビッグデータに基づき、マーケティングの視点を取り入れ、カスタマイズされたナッジも可能になってくるでしょう。「全員に利く弱いナッジ」と「個別化された強いナッジ」を適切に組み合わせることで、無関心層も動かせる可能性が高まり、さらには長期的・安定的な効果が期待されます。一方、ナッジは「そっと後押しする」という前提があることから、強いナッジの開発に合わせて、介入や倫理のあり方も見直されるべきであると考えられます。

【脚注】例外的に、一部のナッジは効果が持続する可能性があります。例えば、東京都足立区の飲食店では、野菜小鉢を最初に出すことをデフォルトにして、ベジファーストを促進しています。何度もそのお店に通っている人でも、最初に出されたものから食べ始める習性はなかなか変えないと想定されます。


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