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ナッジ研究者がお答えします⑬:「ましょうの攻撃」はなぜダメ?

【質問】「ましょうの攻撃」(「~しましょう」の連発)は推奨されないと聞きました。なぜ、よくないのでしょうか?

竹林の回答

「~しましょう」は勧誘(英語のLet’sやShall we~?)を意味し、さらに依頼やソフトな命令として使われる、広い意味を持つ言葉です。「ましょう」は使い勝手が良いので連発される場面も見られますが、私は連発しないことを推奨します。その理由を、3つの観点から整理しました。

【理由1】人は正論を言われるのが嫌だから

「ましょう」は正論とともに使われることが多く、そして人は正論を言われるのが嫌いで、会話も弾みません。
そもそも「ましょう」は上から目線のニュアンスを与え、相手の心に響きにくい言葉で、その上、相手にとって「頭でわかっているけれど、できていない行動」に対し使われることが多いです。
いきなり「禁煙しましょう」と言われて、「わかった!目が覚めた。一生タバコを吸わない」となる人を見たことがありません。
一方、納得できるストーリーや根拠を示した上で「よかったら、一緒に禁煙外来に行きましょう」と続くのなら、受け入れられる可能性が高まります。
大半の「ましょうの攻撃」はストーリーが欠如しています。どうしても使いたくなったら、ストーリーをしっかり固めた上で、結論として「一緒にやりましょう」と伝えるべきです。

【理由2】過度に連発される傾向があるから


私が今まで見た中で、最多の「ましょうの攻撃」は、A4版チラシに「毎食後、正しく歯を磨きましょう」「毎日運動しましょう」「野菜を350グラム以上食べましょう」と、15個の「ましょう」を使ったものでした。これらは、指導する側でも実践が難しい行動です。
発信する側は「ましょう」を連発しても、あまり疑問を持たないようです。
一方、受け手は、嫌な記憶として定着してしまう可能性が大きいです。

毎日公衆衛生の論文を読みましょう。1日おきに英語論文をよみましょう。毎週他分野の論文も読みましょう。定期的に抄読会に参加しましょう。できる限り学会発表をしましょう。予行演習は十分に繰り返してのぞみましょう。質疑には適切に答えるようにしましょう。質の高い論文を書きましょう。英語論文も書きましょう。リジェクトされても再投稿しましょう。YouTubeで発信しましょう。毎日更新しましょう。意見には全部答えましょう。noteも毎日書きましょう。できることから始めましょう。

望ましい行動を15連発しました。
あなたは楽しく読め、実行したくなりましたか?おそらく、2つ目くらいで嫌になってきたとお察しします。
伝えたいメッセージを絞れば、「ましょう」も激減します。

「年1本以上の論文投稿をお勧めします。投稿によって、あなたの研究が次の研究者へリレーできます。そのためにも、学会発表を通じ、研鑽していくことが必要ですが、まずは毎朝、論文を読むことから始めてはいかがでしょうか?」

「ましょうの攻撃」の時は、詰め込み過ぎの可能性を疑った方がよいです。

【理由3】義務に対して「ましょう」を使うと、相手は「やらなくてもいい」と感じるから

「定期健診は毎年受けましょう」という風に、義務に対しても「ましょう」を使うと、相手は義務だとは受け止めません。
この場合は「受けてください。なぜなら~」とはっきり書く方が、誤解なく伝わり、行動に繋がります。

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参考になりますと嬉しいです。
質問をいただくと、私の思考の整理にもなります。ありがとうございます。

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