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ナッジ研究者がお答えします⑰:ナッジ×啓発って?

【質問】ナッジの効果が弱くなったときには、啓発と併用するとよいと聞きましたが、具体的にどういうものがあるか、教えていただけると嬉しいです。

ナッジの観点からお答えします。

例えば、階段を鍵盤模様にペイントして、階段利用を促すナッジがあります。しかし、最初は効果的でも、何度も見ているうちに新鮮味がなくなってくる可能性があります。また、「鍵盤模様のペイントがない階段では、エスカレータを使ってしまう」といった効果の限定性も問題になります。

ナッジという外部からの刺激だけで、これらの問題をクリアするのは難しいです。啓発によるヘルスリテラシー向上という内なる刺激も必要です。「なぜ階段を使うのが大切なのか」「階段を使うとどんないいことがあるのか」といった理由や目的を明確にすることで、効果が持続します。

階段にナッジ×啓発を利かせる場合、「階段をここまで昇ったら、りんご1個分」といった健康情報を掲示するとよいと考えます。

私が好きなナッジ×啓発は、千葉大学の健康都市・空間デザインラボの事例です。柏の葉キャンパス駅(千葉県柏市)から、近隣の商業施設へ向かう高架下の歩行者専用道の路面に、1m間隔ドットと、メッセージサインを描いています。

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「面白そう」と感じた後に健康情報を目にする、という設計によって、肯定的なプライミング効果(最初の刺激がその後の判断に影響する心理)が発動し、住民が好意的に受け止める可能性が高くなります。そして、得た情報をすぐに実行に移したくなる設計も、このナッジの魅力です。行動定着につながることと期待しています。

記事に共感いただければサポートのほどお願いします。研究費用に充てさせていただきます(2020年度は研究費が大幅減になってしまい…)。いい研究をして、社会に貢献していきます。