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つながりと感謝とリーダーシップとナッジ

2020年12月11日、津軽弁で語る「行動経済学で人を動かす」オンラインセミナー(主催:TEDxGlobisU)が行われ、100人の参加者とともに、楽しい90分を作り上げることができました。皆様、ありがとうございました!
開始前からたくさんの応援コメントをいただき、人とのつながりのあたたかさを実感し、胸がいっぱいになりました!
カレー顔あさこさんがnoteを書いてくださいました。とてもわかりやすいです(嬉)!!

当日は参加者からたくさんの質問をいただき、中でもナッジとリーダーシップに関するものが多かったので、紹介します。

前提として、リーダーシップにもいろんな形があります。ここでは、リーダーシップに使えるナッジを「そうすることがよいとわかっていても、なかなかできない人の背中を押す」に限定し、「納得していない相手の背中を押す」は除外します。リーダーシップに心理学的知見を悪用した、「同調効果を用いて信者を集団自殺に導いたカルト宗教教祖」「単純接触効果を活用して民衆の支持を得た独裁者」「コミットメントを利用して戦争捕虜のイデオロギーを変えさせた軍隊」といった悪しき前例があることを私たちは忘れてはいけません。この前提を揃えた上で、質問にお答えします。

Q 上司と部下の関係におけるリーダーシップとナッジは相性がよいですか?

A リーダーとして相手に①わかりやすく②印象的に③社会的に④ベストタイミング伝えることで、フォロワーも増えやすいでしょう(①~④はナッジのEASTフレームワーク(easy, attractive, social, timely)に該当)。その意味で、リーダーのコミュニケーション手法としてナッジを活用するのは有用です。
一方、リーダーが相手に寄り添おうとしても、相手のことがよくわからなければ、うまくできません。ここで、研究によって集団のバイアスをある程度わかっているため、バイアスに対しては寄り添うことができます。例えば新入社員に課題を与え、頭ごなしに「期限は守れ、いいな!」と指導した場合を考えます。その社員はそう言われて燃えるかもしれませんが、逆に上司に大きな不信感を持つというリスクがあります。それよりは「皆がやっていることが気になる心理(同調バイアス)」に訴求して、「去年は新入社員の98%が期限内にこの課題を提出した」と言った方が期限を守る可能性が高く、お互いのストレスも少ないです。

リーダーシップ

Q 企業の組織変革を担当しています。「集団を一気に動かす」ことについて具体的に効いたナッジをお聞きしたいです。

A 「権威には従いやすい(権威バイアス)」「同じ内容でも言う人によって、従うかどうか変わる(メッセンジャー効果)」という心理があります。これを利用したものとして社長による健康経営宣言があります。担当役員ではなく、社長が行うことで、集団介入としてのパワーが違ってくるでしょう。

Q 年上と年下の部下がいます。それぞれに同じく通じるナッジはあるのでしょうか?または、年齢・性格等によってナッジは使い分けるのでしょうか?

A  年齢や性別に応じた特性が明らかになっています(例:「男性は女性よりも競争を好む」「若年層はリスク愛好的で、加齢に伴い現状維持選好が強まる」「幸福度は男性の中高年層が最も低い」)。公衆衛生の場面で考えると、若い層に喫煙リスクを強調すると、逆に喫煙への憧れが強くなる(カリギュラ効果)といったことも起き、現在の利得に訴えたナッジやインセンティブの方が効果的です。なお、属性による差異は集団の場合であり、個別対応の場合は注意が必要です。

Q 相手が本当にやる気のない人、苦手だからと最初から諦めてる人、最初からマニュアルを読む気がない人であっても、業務で必要であれば、自ら行動、学習するようになるか?という点が気になっています。適材適所という意味で、無理矢理苦手なことをやってもらうより、少しでも適性があるところでやってもらうほうが効率面から見たら良さそうです。

A やる気があっても出さない人には教育が必要であり、その中にナッジを組み込むことで効果が見込まれます。一方、能力のミスマッチを生む人事により、生産性が低下しているのは好ましくなく、環境を変えることが優先かと考えます。相手の意に反した人事は幸福度を下げ怒りを生み、そして怒りはリスク愛好的行動に繋がりやすく(Ferrer, 2015)、組織としても思わぬ損失を招く可能性があります。

Q 仕事上で、あるメンバーが興味を持てばもっと楽になるような事柄に対して、いかに誘導するか。ぜひ、教えて欲しいです。

A 私の好きな研究に「レゴ好きの人を集め、レゴブロックを組み立てるたびにインセンティブを与える。でも一方のグループは組み立て終わった瞬間に目の前でそれを壊すと、やる気を失う」「レポートの提出締切を自分で設定した学生の方が提出率が有意に高かった」(どちらもD.Ariely, 2013)というものがあります。「その社員がそれをする意義があること、その仕事をすると喜ぶお客様がいること」を示し、その社員自身にスケジュールを作らせることが有用であると示唆されます。

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今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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