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ナッジ研究者がお答えします⑱:「どうせ無理」と言う同僚にどう接する?

【質問】職場の自己肯定感が低い同僚や仕事を選ぶ後輩に活用できるナッジの事例がありましたら教えてくださると助かります。

ナッジの観点からお答えします

これは難しい質問です。様々な要素があり、人事のミスマッチが背景にある可能性もあるからです。ここでは、「何事に対しても、やればできるのに、"どうせ無理"と最初から諦めてしまう人」に対して、一歩踏み出せるように後押しするナッジを紹介します。

【研究】ホテルの客室清掃員はかなりの肉体労働だが、客室清掃員の67%が「定期的な運動をしていない」と認識していた。そこで彼らをランダムに2つのグループに分け、Aグループは運動の大切さを教え、Bグループは運動の大切さに加え、「あなたの日常業務は〇kcalを消費する運動に匹敵するものです」と伝えた。
4週間後、体重測定したところ、Aグループは体重変化はなく、Bグループは0.8㎏減量した。
(Crum , Langer. Mind-Set matters: Exercise and the placebo effect. 2007. Psychol Sci . 2007. 165-71. )

Bグループでは「身体活動・運動メリット情報の伝達」に、「活動量のフィードバック」というナッジを組み合わせました。これによって、「既にこれだけ身体活動しているなら、もう少し頑張ってみるか」と考え、活動量を増やした可能性があります(ただし、オリジナル論文では「プラセボ効果によるマインドセットの変化」と示唆しています)。

これは、ゴールが見えるとラストスパートで頑張りたくなる「目標勾配仮説」といわれるナッジです。自転車もペダルをこぎ始める時はしんどいです。ゴールを低く設定し、背中を押し、「やればできるかも」というイメージができると、動きやすくなります。そして、達成時には努力を褒めることで、「やればできる」というマインドセットが育まれることが報告されています。
スピードが出始めたら、ゴールを遠くにする(ストレッチゴールの設定)ことで、さらにモチベーションが高まるでしょう。

これは組織のマネジメントにも応用できそうです。参考になれば幸いです。

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