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宿題をしてこなかったときにかける言葉

宿題をしてこないケースは色々ある。新米講師のときからの大きな悩みのひとつでもあった。今、講師として働いて20年弱、宿題をわすれたー、と嘘をつく生徒はゼロに近い。

週に1回のレッスンだけで生徒の英語の力を伸ばすのには限界がある。書くのは時間がかかるし、読む練習も何度もはできない、ちょっとした文法問題の宿題はお手本を教室で見せて、少し一緒に行ったりして残りを宿題にする。

生徒の半分くらいは真面目に宿題をしてくるが、残りの半分くらいは忘れたり、してきていない(わかっていても)傾向があった。しかも、忘れてきたり、してこない生徒は同じメンバーになりがちである。

最初のころは、何で宿題をしてこないのか全く理解できなかった。だから「なんでしないの?」「しないとみんなから遅れれて大変なことになるよ」など責める言葉を生徒に浴びせかけていた。しかし、それはほとんど効果がないということにすぐに気づかされた。生徒は「学校の宿題がたくさんあってできなかった」「時間がなかった」「忘れてた」を繰り返す。

そこで、きちんと宿題をしてくる生徒にどんな風に宿題をしているのかを聞いてみた。毎日の学校の宿題のあとに自主勉強の時間をとるのでそこでする。ただし、30分まで(キッチンタイマーで計る)できなかったら次に日に繰り越す。幼稚園児の生徒はレッスンから帰ってすぐする。(親に促される子とそうでない子もいた)または、土日に出かけるから、その前に終わらせておいてという親の声かけによって土曜の午前中までにはおわらせる、などがわかった。

いつ宿題をするかルール化してある生徒はうまくいっているようだった。考えてみれば、我が家も宿題をするルールがあった。我が子が小学生のころは、平日は夕飯(だいたい夜7時)までに。遊びに行っていてできていなかったら、夕飯後すぐに。塾などの宿題は土曜の午前中、午後からスポ少の練習にいくからそれまでにする。日曜は朝からスポ少だし、試合が入る場合も多いので。

そこで、私の生徒保護者達にもそれを伝えて、宿題をする時間や曜日を決めるように伝えた。週1回と決めるなら金曜の夜や土日の朝がいい、どういうわけか休日の朝に限って子どもは早起きするものだ。だから、起きてすぐでなくてもいいから、休日の朝ご飯をいただく前とか、朝ご飯をいただいた後とかにする、朝からでかける予定があるなら、金曜の夜、もしくはお出かけのあと。平日はCDをきくのみにして、夜寝る前とか夜の歯磨きの時とか時間決めるように勧めた。

そして、この記事の一つ前の記事にも書いたが、保護者には「宿題したの?」「いつするの?」とお子さんをせめるのではなく、「宿題はどれくらいあるの?」「難しいのやっているね」など、声かけに気をつけていただくようにお願いをした。

このような声掛けをはじめ、私自身も宿題を忘れてきた生徒に「今度して来てね」という声掛けに変えていった。そうすると、生徒自身から「宿題をしてくるのを忘れちゃった」と教室に入ってくるなり、自分から申告してきたり、「宿題はこれとこれだったよね」と尋ねてくるようになった。忘れてたと申告があると「今すぐしなさい、まだ時間あるよ」など対応して、宿題をしてこなかったことを責めるのを止めた。

また、「宿題をしようとしたが難しくてわからない」と子どもがいう、という話も保護者から聞くこともあった。保護者は「自分がよく聞いてこないからでしょと、言うんです」という話もあった。しかし、それは私がレッスン中に十分時間をとっていなかったり、練習がまだ足りていなかったりということもあると気づいた。そこで、保護者にもそれを伝え、「わからない」と生徒が言ったときは「先生に聞きなさい」と伝えてもらうようにお願いした。保護者が家庭でなんとか宿題をさせようと教えてしまうと、生徒はレッスン中に先生の話をあまり聞かなくなるというのもあるからだ。生徒にもそれを伝えた。おうちの人はレッスンを受けていないんだから、宿題がわからないって聞いても、わかるわけないよ、だから、わからなかったら、次の時に先生に聞いてね、と。それをくれ返し伝えていたら、生徒も「わからなかったから、途中までしかできていない」など伝えてくれるようになった。

レッスン中に宿題の答え合わせやチェックをしていて、宿題を忘れていることに気づくこともある。いつからか、宿題を忘れていたら”恥ずかしい”という気持ちに生徒がなってきているの気づいた。そんな時は「忘れることもあるよ」とか、「勘違いしていたんだからしかたないよ」と声をかけるように私がなっていた。このようなことを繰り返しているうちに、生徒はうっかり忘れ以外は宿題をしてくるようになった。言葉の力は不思議である。誰も責められるのは辛いのだ。自分にいくら非があっても。まだ子どもなんだもの。

というわけで、宿題に取り組める体制やちょっとした声かけで、生徒はそれをやりとげられるようになっっていった。それは私の気持ちを平穏に保つことに一役買っているとともに、生徒自身の宿題をやれているという自己肯定につながり、学習の定着にもつながり、いい循環を生み出している。言葉というのは本当に不思議な力を持っている、これからも、優しい気持ちで導いていきたい。

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