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誰だって自分は特別だと思いたい 小さな孤独に寄り添うこと
誰だって自分は特別だと思いたい―――
そう、ギュンサンは言う。ギュンサンとは、韓国の俳優ユン・ギュンサンのことだ。
『ソウルの田舎者』というバラエティ番組にゲスト出演したギュンサンは、郷里の高校をひさしぶりに訪ねる。高校時代にあまりよい思い出はないが、会いたい先生がいるという。
そして、当時の担任だった教師と再会したギュンサンが涙で目を赤くしながら語ったのが冒頭のひとことだ。
当時ギュンサンは、周囲からは明るく友人が多いと思われていたが、じつは心から打ち解ける仲間をみつけられずひとり孤独を抱えていたという。
やがて授業をサボったりするようになるが、よくいる“ふつうの”生徒の一人にすぎなかったギュンサンの孤独に気づく者はいなかった。だが、唯一それに気づいたのが担任の先生であったことはギュンサンにとって何にも代えがたい幸福だったろう。
先生と話していると僕も特別な生徒だと思うことができたのです―――
同じようにごく平凡な生徒で、友人とつるんで遊ぶことにも興味が持てない孤独な16歳だった僕がこの話を聞いたら、きっと心からうらやましがったにちがいない。
だが、そのかわり、誰かの小さな孤独に気づいてあげることならあるいはできるかもしれない。ひとりの大人として。
心やさしい大男ユン・ギュンサンの涙を見てそんなことをかんがえた。
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