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長野県産の米は使えない? 州ごとに税率が違う? 国によって違う、日本酒の輸出事情

こんにちは。「東海ヒトシゴト図鑑」編集チームの青木と申します。

今回は、「東海ヒトシゴト図鑑」で「企業図鑑」の執筆を担当させていただいている私が、ページに入りきらなかったお話の一部を、個人的な感想も交えながらつづるシリーズの第3弾。
今回取り上げるのは「千古乃岩(ちごのいわ)酒造株式会社」です。

10年前から海外展開を開始

本編でも触れましたが、千古乃岩酒造では製造する日本酒の海外展開を行っていて、現在は7つの国・地域に輸出しています。またそれ以外のいくつかの国でも、展示会に出展するなどして輸出の準備を進めています。

取材では、海外展開を担当する代表取締役の中島大蔵さんが、国ごとに違う輸出事情のあれこれをお話ししてくださいました。その一端をご紹介します。

ブラジル

千古乃岩酒造では2024年7月、現地の日本人会からの招待を受け、サンパウロ日本祭りで初めてのブラジル出展を行いました。

取材はその少し前。
「ブラジルはアメリカからの日本酒輸出量が多いです。アメリカでは日本酒をたくさんつくっていて、日本よりアメリカから輸出した方が近いですから。ただ、(日本から出荷しても)売れなくはない国ですね」
と中島さんは話してくれました。

初めてブラジルに行くのにどうして「売れなくはない」とわかるのでしょうか。
聞いてみると、「財務省の貿易統計を見れば、金額と統計が出ているので」と教えてくれました。

これは財務省のホームページで公開されているもので、検索すれば、日本酒がどの国にどれくらい輸出されているのかわかります。
データから、ブラジルは日系人が多く、日本食の文化があるから日本酒を飲む機会も多いだろうという推測もされていました。

中島さんが自ら調べ、客観的なデータの根拠を持ちながら海外展開を進めていること、そしてそれが、調べようと思えば誰でもアクセスできるデータであることが印象に残りました。お金をかけなくても、工夫次第でさまざまなことが見えてくるのです。

インド

2024年2月に千古乃岩酒造は、在日インド大使館での日本酒のイベントに招かれました。

インドでは、2019年にアルコールの取り扱いに関する法律が改正され、インドへの日本酒輸出が実質的にできなくなりました。

その後法律の運用が変わり、正式に輸出できるように。ただ、インドには連邦直轄領以外に29の州があり、州ごとに輸入制度や税率などが違います。そのため、輸出へのハードルは依然として高い状況です。

中国

中国は食品輸入の規制が「めちゃくちゃ厳しい」と中島さん。日本酒については、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、その近辺の10都県で製造・産出されたものは輸出できない状況です。
千古乃岩酒造でも、以前は原料に長野県産の米も使っていましたが、この規制にかかるという理由もあり、現在はすべて岐阜県産にしています。

出展でのトラブルに巻き込まれたこともありました。中国・重慶での物産展で、一緒に出展した酒蔵の書類に不備があり、同じコンテナで輸送されていた千古乃岩酒造のお酒も会場に届かなかったのです。
ただ、中島さんは手荷物のキャリーケースで商品をある程度持ってきていたため、商品なしで出展する事態は免れました。

中島さんの経験上、中国に限らず、同じ国でも税関によって提出書類が変わることがあるそうです。また、会場への配達時間を指定しても、その通りに「届くわけがない」と考えて動いているといいます。

日本の常識とは違うことの連続

普段触れるニュースやSNSなどではなかなか出会えないような、各国の実情や輸出のエピソードが次々と出てきて、つい興味津々で聞き入ってしまいました。

中島さんは「常識で考えるな、常識を考えろ」という言葉を大切にしているそうです。
日本の常識がそのまま海外の常識ではありません。各国のさまざまな事情に直面しつつも、自ら海外進出への道を切り拓く中島さんは、まさにこの言葉を具現化して行動されているように感じました。

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