育休を機に夫婦で愛知から長野へ移住。フルリモート&兼業で実現する地域に根差した新しい働き方
岐阜を拠点に人材育成を軸とした地域活性化を東海、全国的へと推進しているNPO法人G-net。「立場や年齢に関係無く、愛着あるまちや共感する事業に参画できる環境」というビジョンを掲げている同社には、多様な働き方をしているスタッフが在籍しています。
今回は育休中にG-netへ参画し移住先の長野県でフルリモートで働きながら、兼業もされている谷合俊明さんに、働き方や兼業先との相乗効果、目指す社会についてお話を伺いました。 仕事と子育てを両立したい方や、自分の暮らす地域に関わりたい方は是非参考にしてください。
育児と仕事の両立を可能にするG-netの働き方とビジョン
ーーーーーG-netでは、どのような事業をされているのでしょうか?
私は、NPO法人G-netの新規事業チームで、主に地域の人事部事業を担当しています。地域の人事部は、地域企業が1社ごとに行っている採用活動や育成活動を、地域の企業が集まって一つの人事部として取り組んでいこうという、経済産業省が推進している取り組みです(令和6年10月時点)。その取り組みを、主に中部圏内の岐阜、愛知、三重などのエリアで推進しております。
具体的には、中部経済産業局の事業の担当として、行政の方々との連絡や打ち合わせを行ったり、中部圏内のG-netのような支援組織と共同で取り組みを進めたりしています。
ーーーーー行政とやり取りしながら地域で人事を統括するというのは大きな仕事だと思いますが、そんな事業をされている谷合さんの働き方はどのようなものなのでしょうか。
現在私は週4日、1日8時間、合計週32時間の契約で働いています。元々、岐阜のG-netとは関わりがあり、出身の岐阜に住んでいた時期もありましたが、現在は長野県の塩尻市に住んでおり、基本的に出社せず、ほぼリモートで働いています。G-netでは、オフィスにリモートスタッフ専用Zoomを設置しているので、常時コミュニケーションを取ることができます。
また私が所属している新規事業チームは、ほぼ全員がフルリモートで働いているため、オンラインでの打ち合わせやチャットでのコミュニケーションが当たり前の環境となっています。対面で顔を合わせる機会よりも、リモートでの業務の方が多いぐらいです。もちろん、細かい部分では対面で顔を合わせる必要もありますが、基本的にリモートで問題なく業務ができています。
ーーーーーそもそも、フルリモートが可能だから働こうと思われたのでしょうか?
いえ、G-netに参画したいと思った一番の理由は、G-netが掲げている理念に強く共感したからです。私は育休中にG-netに入社しましたが、その時、周りには育休後に働き方を見直したいと考えている人が多くいました。特に女性は、出産や育児を機に、理想とする働き方ができないという悩みを抱えているケースが目立ちました。そんな中、G-netは「立場や年齢に関係無く、愛着あるまちや共感する事業に参画できる環境」というビジョンを掲げていました。これは、私自身が切実に求めていたものでもありました。
最初のきっかけは、育休中に働ける会社を探していたことでした。たまたまリモートワークの環境が整っていたことも大きかったですね。育休中に子供の面倒を見ながらでも、いざという時にすぐ対応できる環境は本当にありがたかったです。G-netの理念に共感し、育児との両立がしやすい環境だったことが、入社の決め手になりました。
ーーーーー全員がフルリモートで働くという環境で、気づかいやコミュニケーションにおいて気を付けられていることはありますか?
G-netに入社してから気づいたことですが、リモートワークではこまめに報告や相談をすることが大切だと感じています。以前は、ミーティングのタイミングでまとめて報告すればいいと思っていましたが、1週間ほどミーティングが空いてしまうと、周りの方から頻繁に報告や相談をチャットでしてほしいと言われました。
周りの方々は、多すぎると私が感じるぐらい逐一情報共有を行っていました。チャットに気軽に投稿していいという文化があったので、途中経過でも共有した方が安心感につながるのだと理解しました。
またリモートワークでは、体調面も定期的に共有するようにしています。顔を合わせていないからこそ、自分や家族の体調不良やコロナの影響などについて、あらかじめ共有しておくことが大切だと思います。私が入社する前から、周りの方々もこのような対応をしていたので、私もそれに倣って、気になることはすぐに連絡や相談をするように心がけています。
ーーーーーリモートワークになって谷合さんも周りに影響を受け、コミュニケーションの工夫をされてきたんですね。
そうですね。前までは、新規事業チームが「ブラックボックス化している」と言われていました。各個人がすごく動いているので、チーム内で完結してしまい、チャット上などでも会社全体に見える形になっていなかったんです。確かに、全体のミーティングでは個々の動きはわかるのですが、全体感があまり共有されていませんでした。
そのため私自身は、前の所属チームのチャット文化の名残で、いろいろなものをこまめに投稿するようにしていました。そうしたら、周りのチームの方から「新規事業チームが何をしているかわかるようになった」と言われるようになったんです。意識的にしていたわけではないのですが、情報発信の効果はあったのだと思います。
ーーーーー チームだけでなく、会社全体での効率的な業務遂行のためのコツは何でしょうか?
会社全体に見える形にすることによって、部署を超えてフォローしてくれることがあります。例えばチャット上で、急ぎ用件や個別で名指しした人が忙しそうだからと別の人の名前を括弧書きで追加しておくと、ミーティングが続いていて返信できない場合など、代わりに返信してくれます。このようにお互いの状況を察してサポートし合うことは、リモートワークだからこそ可能になるんだと思います。
G-netとMEGURUでの兼業がもたらす2つの相乗効果
ーーーーーG-netで働きながら、兼業でNPO法人MEGURUさんでも活動されてると伺っているのですが、MEGURUの働き方や業務内容について教えてください。
MEGURUは、私が現在住んでいる長野県塩尻市を拠点としている団体です。対面での業務もありますが、リモートでの仕事も可能で、基本的にはフルリモートでG-netと同じような形で働いています。
MEGURUの業務内容もG-netと似ています。「はたらく 生きる すこやかに」をメインテーマとして、地域ぐるみでの人材育成などを行っています。ただし、MEGURUは塩尻市を主な活動地域としているのが特徴です。
私がMEGURUで担当しているのは、塩尻市と一緒に行っている関係人口創出事業です。この事業では、地域の活性化や課題解決に関わりたい塩尻に関心がある方が、課題解決の取り組みを通して、塩尻の活動人口を増やしていく取り組みをしています。
ーーーーーこの働き方によって相乗効果を感じられている部分はありますか?
G-netは比較的広域で活動しているのに対し、MEGURUは塩尻市に特化して深く関わっているという点です。G-netでは、岐阜市や愛知県など、より広いエリアを見据えたプラットフォーマー的な取り組みを行っており、私も全体的な仕組み作りに携わっています。一方、MEGURUでは塩尻市に根ざした活動をしているため、一人一人の市民や企業により近い目線で向き合うことができます。自分が塩尻市に住んでいるからこそ、地域に密着した視点を持ちながら、G-netでの経験を活かして、塩尻市というまちをより広い視野で捉えることができていると感じています。
もうひとつは、G-netとMEGURUの事業領域が重なっている部分があるということです。実際に、先日は両団体が主催となって、塩尻市で200人規模のイベントを開催しました。私はG-netの立場で企画に参画しつつ、MEGURUのメンバーとしても現場に入り、橋渡し役として様々な調整を行いました。普段からG-netとMEGURUの間で情報交換を行っていたこともあり、イベントの準備はスムーズに進みました。両団体に所属して、それぞれの状況をリアルタイムで把握し、より効果的な連携が取れるところなどにも、相乗効果があるように思います。
目指す社会は「誰もが働き方を柔軟に調整できる社会」
ーーーーーG-netとMEGURUで共に地域の人材育成を担当している谷合さんが感じている働き方についての課題はありますか?
育児や介護などで自分の希望する働き方ができない人たちが、もっと生き生きと働ける環境を整えることですね。G-netではチームを超えたメンバーで業務改善に取り組んだり、こまめな情報共有で柔軟に働ける環境づくりをしていますが、もっと多くの企業でそういった取り組みが広がればいいなと思っています。
育休の制度は整備されてきていますが、まだまだ浸透していない現状があります。特に、今いる人材を前提に業務を回すのではなく、誰かが休んだり辞めたりしても、柔軟に対応できる体制が必要だと思います。
理想を言えば、誰もがいつでも休みたいと思ったら休めて、時間を減らしたいと思ったら減らせる、そんなグラデーションのある働き方ができる社会になればいいですよね。そうすれば、もっと多様な人材を受け入れられるようになるはずです。地域の人事部事業としても、そのような環境づくりをもっと多くの企業に推進していきたいと考えています。
ーーーーー働き方の環境を整えていく中で、子育てとの両立や男女での働き方について、谷合さんの理想や目指す社会を教えてください。
私自身、子育てと仕事の両立をしながら、育休中に働いた経験から感じたことは、育児に参画したいと思っている人や育児の時間を取りたいと考えている人が、男女問わずもっと自由な働き方ができるようになればいいなということです。私自身の経験に加えて、周りの男性の働き方を見ていても、男性だから女性だからというバイアスを外してみると、もっと多様で自由な働き方ができるはずだと思います。
実は、妻と結婚する際に、子供が小学生になった時に妻が時短勤務やパートタイムに切り替えないといけないという話が出ました。しかし、私はなぜ女性だけが働き方を変えなければならないのだろうかと違和感を覚えました。
私がリモートワークで子供が帰ってくる時間に家にいられるのなら、妻は働き続けることができるはずです。女性だけが働き方を変えるのではなく、夫婦でお互いの働き方を柔軟に調整できる社会になればいいなと思います。子供たちには、働くことに対してネガティブな印象を持ったり諦めたりしてほしくありません。多様な働き方ができる社会を目指していきたいですね。
G-netに興味を持ってくださったら、ぜひお気軽にこちらからお問い合わせください。
◆このインタビュー記事は、オンラインアシスタントサービス「TIMEWELL」が制作しています。
担当ライター:水野 泰成