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好況の波を、オールジャパンで更なる高みへ「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」第1回全国研修会開催

2024年11月5日(火)、ぐるなびが事務局として参画する訪日外国人向け観光情報サービス「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」の第1回全国研修会が、東京・渋谷エクセルホテル東急プラネッツルームで開催され、インバウンドへの取り組みをめぐる最新情報と意見交換がされました。2025年4月の大阪・関西万博の開催までいよいよ半年を切る中、「LIVE JAPAN」参画企業のインバウンド担当者が全国から一堂に集まるのは初めてとあり、研修会では双方向交流によってそれぞれの地域、業種のインバウンド対応に役立てていこうという熱気に包まれました。今回の記事では、研修会の様子をレポートします。

株式会社ぐるなび 取締役会長・創業者の滝久雄

ー開会宣言の後、最初に挨拶した株式会社ぐるなび 取締役会長・創業者の滝久雄は「『LIVE JAPAN』を言い出した本人です」と、笑顔でマイクに向かいました。

(滝)
本日の研修会には、68社局の参画企業の中から多くの皆様にお集まりいただきました。さらに、国交省から審議官の水島智さん、観光庁長官の秡川直也さん、そして田村明比古元観光庁長官、国交省の幹部の方々も駆けつけてくださいました。皆さま、ありがとうございます。
観光は日本に残された重要な成長産業の一つです。失われた30年といわれるように停滞感のある日本において、大きな可能性を持つ数少ない領域、それが観光であると捉えています。
そのような考えのもと、2012年に初代観光庁長官を務めた本保芳明さんとともに「インバウンド研究会」を発足し、観光関係の皆さまとインバウンド施策について本格的かつ実証的な研究を開始しました。
最近でも、昨年には「偏愛東京」という新しい情報サービスを開始し、そのオプション企画として「上野公園・谷根千を世界一の観光スポットに磨き上げる特区に!」という、観光地磨き上げのお手本を作るためのプロジェクトを進めているところです。

ー続けて「LIVE JAPAN」誕生の経緯についても説明しました。

(滝)
ひとつのきっかけになったのは、先の東京オリンピックです。オリンピックはインバウンド拡大の契機となる一大イベントであることから、私は交通広告メディアを活用して招致のお手伝いをしました。
2013年に、2020年東京開催が決まったあと、改めて、オリンピックをどのように活かしていくのか、そもそもオリンピックとは何かということを考えました。それを建築家の隈健吾さん、漫画家の大友克洋さんとも語り合い、たどりついた結論が、「オリンピックは、オリンピック開催後50年の東京、日本のあり方を決めるシンボリックなイベントになる」ということでした。
インバウンドに取り組み始めていた私は、東京でのオリンピックというこのチャンスに、インバウンドに向けた情報発信の領域で、レガシーとなるサービスを作り上げたいと考えたのです。

ーこうしたビジョンを、東急の当時の社長である野本弘文氏、東京メトロの当時の社長である奥義光氏に話したところ、すぐに賛同を得ることができ、それが「LIVE JAPAN」へとつながっていきます。

2015年6月の記者発表会の様子

(滝)
各社がバラバラにつくるのではなく、まずは鉄道会社が一緒になり、関連する企業が一つになって作ろうと意見が一致し、記者発表に至りました。2015年6月のことです。システムの構築には、ぐるなびが展開していた「レッツエンジョイ東京」などのノウハウをフル活用し、2016年春に「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO」のグランドオープンを迎えました。この時の記者発表会には、鉄道会社を中心に21の参画企業の皆さんが勢ぞろいし、さらに当時の国交省審議官の武藤浩さん、当時の観光庁長官の田村さん、東京都の前田信弘副知事なども参列してくださり、期待の大きさを強く実感させられました。

グランドオープン記者発表会の様子

ーここに誕生した「LIVE JAPAN」は東京以外のエリアへと展開が広がります。2018年には北海道版がスタート。当時の記者発表会には北海道観光振興機構会長をはじめ北海道副知事、そして東京のグランドオープンに続いて田村氏も登壇。2019年には、関西と東北でのサービスを開始。関西版の記者発表会には、大阪府知事の吉村洋文氏、当時の大阪市長の松井一郎氏、当時の藤田耕三事務次官、観光庁長官の田端浩氏らが参列しました。関西版の2か月後には、東北でのサービスがスタートし、発表会には関西に続いて田端氏をはじめ、JR東日本副社長を務めた当時の東北観光推進機構会長、小縣方樹氏らが出席と、全国的な広がりを見せました。

(滝)
さて、現在の「LIVE JAPAN」はというとアクセス数を順調に伸ばし、コロナ禍でインバウンドがストップしたなかでも、SNSで日本情報を発信し続けたところ、海外からかなりのアクセスがあり、「LIVE JAPAN」は世界に多くのファンを持ち、広く受け入れられている、という実態を再確認することとなりました。
情報の品質、信頼性でも認められており、「観光情報から災害情報まで、日本観光に必要な今日の情報が得られる」と評価をいただいています。災害情報としては、2018年秋、北海道に大停電をもたらした北海道地震、関西空港を孤立させた台風、また2024年1月の能登半島地震の際にも「LIVE JAPAN」は国と連携して、インバウンド向けのリアルタイム災害情報を発信し、訪日客の滞在に重要な役割を果たし、助けとなりました。

LIVE JAPANの災害情報一元化サイト

こうして、スタートから8年が経ち、「LIVE JAPAN」は信頼できる情報、品質の高い情報として高い評価を確立できました。現在は交通関係事業者を筆頭に、日本の観光産業にかかわる事業者のほとんどが参加するコンソーシアムになり、その数は68社局を数えています。さらにインバウンドに圧倒的に利用されるサービス、いま以上に欠かせないサービスへと飛躍すべき段階にきています。

ー続いて国土交通省から水嶋智審議官が登壇し、基調講演を通じてご挨拶をいただきました。

国土交通省 水嶋智審議官

(水嶋氏)
業界の枠組みを超え、インバウンド産業をレガシーにしていこうとの国の方針のきっかけは、滝会長です。ベンチャーなどの指南役を務めていただくべくお招きしたところ、10数年先まで見据えたアイディア、提言を頂いていたのです。コロナ禍で、どん底だったインバウンドは力強い回復を見せ、2024年はコロナ禍前を超えるような推移となっており、地方創生としての期待も高まっています。スマートパワー、ソフトパワーを集結し、外交や安全保障上でも日本の平和でゆるぎない地位を多言語で発信していく役割は重要で、大阪・関西万博へ向けてインバウンドを力強く伸ばしていくことになると見ています。本日の全国研修会では、皆さまの実り多い成果、新たな成果を期待しております。

ー続いて、観光庁の秡川直也長官からは、行政としてどのように観光立国を演出してきたのかをお話いただきました。

観光庁 秡川直也長官

(秡川氏)
私は役所に入って37年、観光関連に4回携わらせていただいているのですが、2003年に「YOKOSO! JAPAN」のスローガンを掲げ「ビジット・ジャパン・キャンペーン」がスタートした際に、観光庁にいくことになりました。それ以降、2013年からぐぐっと訪日客数が伸び始め、ブレークスルーを迎えて、国を挙げての、政府全体の目標へとなっていくのです。ついには1,000万人を達成し、2030年には6,000万人という目標まで出てきています。今年が約3,500万人ですが、中国からの訪日客がコロナ禍前に戻ればもっと上がっていきますし、年々客層も変わっていたりします。

ーインバウンドの効果は少子化がもたらす日本の人口減にも好影響を与えると長官はこう続けました。

(秡川氏)
消費からみると、日本人はひとり年間約135万円を使いますが、人口減によってそれは減っていきます。これに対して、インバウンドは観光客ひとりあたり2021年で約21.3万円を消費し、今は25万円近くになっています。つまり訪日客6人で、日本人ひとりの年間消費となり、インバウンドによって景気を下支えできるかもしれないのです。
日本にはこれまで解放していなかったお寺や国宝など、まだまだ魅力的な文化財などがたくさんあります。ハイエンドな人たちがどう幸せを感じ、日本の何に魅力を感じるか。日本人が見過ごしているようなことが多いのです。
人が穏やかで、安全で、食事がおいしいという声が訪日客からはあがっています。また海外から見ると、コンパクトで、地域によって色んな魅力があって楽しいと思われているようです。
官民の幅広い連携によって、観光地域づくりを推進するDMO(Destination Management / Marketing Organization)とともに、入国手続きでの待ち時間を少なくするといったことも進めていきます。

ー続いて登壇した株式会社ぐるなび LIVE JAPAN企画部長の加藤洋平からは、インバウンドの最新動向が紹介されました。

株式会社ぐるなび LIVE JAPAN事業部長 加藤洋平

インバウンド最新動向として「オールド&ニュー」がキーワードになっています。たとえば銭湯などが注目されており、外国人観光客が求める情報として、「銭湯に幼児は連れて行くことができるか」といった質問が寄せられます。こういった質問を、外国籍のスタッフらとひとつひとつ確認し回答していますが、このような対応をしていくなかで、3つの情報が求められていることがわかりました。

①災害 
たとえば新幹線が止まっているとすれば、代替の交通機関には何があるのかということを調べて発信しています。このような対応により外国人の方が駅でスタッフに確認する負担を減らせられたらと考えています。
②二次交通
たとえば上高地でエメラルドグリーンの池を観たいとなった際に、直接行けるバスなどはあるかという情報を発信しています。
③チケット
レールパスやクーポンに需要があるものの、「その中でどれがいいのですか」「払い戻しはできますか」との質問が多く寄せられています。

さらに最近では、「リアル・ライブ」にも注目。Googleの生成AIチャットボット「Gemini」などで、桜の開花情報などが調べられている傾向にあります。現地発で、リアルな写真や動画などの情報がニーズとして高まっています。

ー後半は参画企業・団体から代表者が登壇しインバウンドに関するスピーチが行われました。

成田国際空港株式会社代表取締役社長 田村明比古氏

インバウンドには全省庁が関係しています。入国は法務省で、公園は環境庁、防衛相も空港の管制といった具合で、全勢力で臨んでいくということがポイントになろうかと思います。成田空港は1978年の開港当初、日本人の利用が74%で、海外からの利用者は26%と、日本人が海外に行くための空港でありましたが、現在はこの割合が逆転しています。日本の窓口は羽田と成田を両輪としてきましたが、今の利用者の伸び率でいくと、2043年には2023年の2倍になるとの見通しがあります。新しい滑走路の整備、老朽化しているターミナル、チェックインカウンターも今はオンラインが主流ですので改善し、コンセプトも新しくしていきます。また圏央道に隣接させる貨物ターミナルなど、周辺地域と一体になった開発を進めています

一般社団法東北観光推進機構理事長 紺野純一氏

東北6県のインバウンドは秋が主流でしたが、冬のブランド力が確実にあがっています。地域を元気にしていくには、行政との連携のみならず、東北全体をひとつのエリアとして周遊プランなどを打ち出しています。ドライブルートを7つ、さらに2025年秋には東北エリアで「アドベンチャー・ウィーク」を開催します。世界最大のアドベンチャートラベル業界団体「ATTA(Adventure Travel Trade Association)」と連携し、世界の旅行会社、メディア関係者に東北のアドベンチャートラベル商品を体験してもらう。また、人材育成を目的とした「フェニックス塾」も随時開催しています。

北海道エアポート株式会社観光開発部担当部長 水口猛氏

コロナ後アドベンチャートラベルという、体験型の観光が伸びています、アドベンチャートラベルは一般に「アクティビティ」「自然」「異文化体験」と言われ、その2つ以上を組み合わせた旅行形態と定義されているのですが、その土地の文化や歴史を知ってもらい、地元への還元も期待されます。ガイドが足りていないことなど課題もありますが、トランスフォーメーション(変革)のチャンスと捉えています。

一般財団法関西観光本部代表理事 東井芳隆氏

関西は2府8県、大きさで言うとコートダジュールやスイスのアルプスと同じくらいと言われていますが、インバウンドは大阪市と京都市が2本柱で、中国一本足打法のような部分があります。そこで関西一円の自治体、経済団体、観光団体等などとオール関西で一体となり、デジタル化やブランディングなどインバウンド振興に向けた施策を推進しています。万博を通過点として、さらに新しくインフラ整備などに取り組んでいきます。

以上、研修会レポートでした。研修会後に開催された懇親会では、参加者たちがインバウンドに関する最新の動向や課題について意見を交わし、終始活気に満ちた雰囲気となりました。多くの参加者がそれぞれの視点から議論を深め、新たなアイデアや連携の可能性を模索する姿が印象的でした。インバウンドの未来に対する期待感と情熱が会場中に広がり、今回の研修会が大きな一歩となったことを感じることができました。


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