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2024年を象徴する食は「うなぎ」! ぐるなび「今年の⼀⽫®」記者発表会レポート
その年の世相を反映し象徴する食として、ぐるなびが毎年発表している「今年の⼀⽫®」。2024年は「うなぎ」が選ばれました!選出の背景には、希少資源であるうなぎの食文化を後世に伝えるための研究や飲食店関係者の努力、さらには外国人観光客の人気の高まりなどがありました。2024年12月3日に都内で開かれた「今年の一皿®」記者発表会のレポートをお届けします。
「今年の一皿®」とは、優れた日本の食文化を人々の記憶にとどめ、より豊かな食の未来の進化、発展につなげることを目的に選定。総掲載店舗約42万店、総有料加盟店舗42,065店(2024年9月時点)の飲食店情報サイト「楽天ぐるなび」が発信する一次情報、ユーザーの閲覧履歴や⾏動履歴などを掛け合わせて分析したビッグデータを活用。ぐるなび会員へのアンケートやメディア関係者による審査などを経て「今年の一皿」実行委員会が承認し、決定されます。
2014年に開始し、今年で11回目を迎えた「今年の一皿®」。飲食店メニューとして、また家庭の食卓のメニューとして定着してきました。冒頭、「今年の一皿®」実行委員会委員長を務めるぐるなびの滝久雄会長は「『今年の一皿®』がきっかけとなって、人々に食べる楽しみ、喜びを再認識していただけたら。日本の豊かな食を支えるために日々頑張っている生産者や飲食店の方々の応援につながれば大変うれしいです」と述べました。
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また、来賓挨拶にご登壇いただいた農林水産省 大臣官房新事業・食品産業部長の小林大樹氏は、2024年7月には1か月あたりの訪日外国人数が過去最高となる300万人を超えたニュースや、2025年に開催される大阪・関西万博についても言及。「外国人観光客の約8割は、滞在中に日本食を食べることに関心を寄せている。『今年の一皿』は、流行に敏感な外国人観光客にとっても興味深い情報であり、さらなる世界的普及が図られることを期待しています」とお話しくださいました。
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「今年の一皿®」の選定条件は三つ。①その年に流行または話題になったこと、②その年の社会の動きと関係が深く世相を反映していること、③食文化の記録として後世に受け継ぐ価値があること。2024年はエネルギー高騰などの経済状況の変化や記録的猛暑の影響により、飲食店の原価割合が増加。人手不足を背景にAIなどの新技術の導入が進んだほか、訪日外国人が過去最高人数を記録し、旅行消費額が大幅に増加した年となりました。
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これらの世相を踏まえ、2024年「今年の一皿®」に選定された「うなぎ」。完全養殖の実用化に向けた研究開発の進歩や、加工技術の変化や提供方法の多様化により、高級食材としての地位を保ちながらも、うなぎ専門店や取扱店舗が増加したこと、インバウンド観光客からも人気を集め、「蒲焼」という日本発祥の伝統的なうなぎの食べ方を世界へ発信する起点の年となりました。
ノミネートされたメニューのなかからは「準大賞」や「インバウンド賞」も選出。準大賞に選ばれた「ジャパニーズクラフトジン」は日本の蒸留所で製造されたクラフトジンの世界的な評価の高まりなどが評価されました。インバウンド賞には食材、麺、スープなどに付加価値をつけた「プレミアムラーメン」が新たな食文化の象徴として選定。このほか、第二次ブームを迎えた「アサイーボウル」もノミネートされていました。
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各賞の発表の後には、「今年の一皿®」に選ばれた「うなぎ」にまつわるトークセッションが行われました。実食レポートなどを掲載するうなぎ応援サイト「うなぎ大好きドットコム」の高城久代表、うなぎ完全養殖のエキスパートである近畿大学 水産研究所の田中秀樹特任教授、女性職人の育成に取り組まれている株式会社うなぎ家の松井智子代表取締役社長が登壇され、それぞれの専門分野についてお話くださいました。
――「今年の一皿®」にうなぎが選ばれたお気持ちは?
高城:うなぎは日本人にとって、とても馴染み深い魚。茨城・陸平貝塚では土器で煮て食べた形跡が発見されており、少なくとも3500年以上は食べられている食材です。まさに、日本の伝統食といえるでしょう。今年は、その長い歴史のなかでも新たなフェーズに入ったことがいくつもあります。うなぎの食文化の継承という点において、とても良い年になったと思います。
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――今年のうなぎ市場にはどんな特徴がありましたか?
高城:外国の方々に人気が高まっています。うなぎ専門店での客層をみると、コロナ禍以前は、東アジア圏の人が多く食べていたのですが、最近は欧米の方がとても増えているのを感じています。また、養殖方法にも非常に大きな変化が。養殖うなぎの9割以上はオスなのですが、大豆イソフラボンを与えることでメスのうなぎを誕生させる方法が確立され、出回り始めています。職人さんも少しずつ増えてきていますし、大切な年になりました。
――うなぎを後世に受け継ぐための研究や活動も活発化しています。まずは、田中特任教授の研究内容について、改めてお話をお聞かせください。
田中:日本人が食べているうなぎの99.9パーセントが養殖で育っています。養殖されるうなぎの稚魚は天然のもの。つまり、もとをただせばすべて天然うなぎということになります。人工的に孵化させて育てる研究は、実は60年以上前から始まっています。ところがこれが簡単なことではありません。うなぎは自然には卵を産んでくれません。卵を産ませて孵化するまでに研究開始から十数年かかりました。孵化した赤ちゃんがどういうものを食べるかまったくわかっておらず、餌を食べさせるまで25年がかかりました。
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――完全養殖が難しい理由は?
田中:未知な部分が多いからですね。うなぎは成長すると海へ下っていきますが、どこで卵を産むのか長年わかっていませんでした。2009年に初めて、天然の受精卵がマリアナ海域で発見されたのです。稚魚から成長まで何を食べているのかはまだわかっていないんです。
高城:実は7年前に、先生のもとで完全養殖の様子を見学させていただきました。個人で申し込んだのは僕だけだったそうで、驚かれたのを覚えています。現在、1匹あたり約1800円とされている養殖コストは、これまでだと4倍近くかかっていました。ここまでコストを下げられたのは、先生方の努力のたまもの。うなぎの餌に鶏卵を使うなど、ものすごい研究が進んでいます。
田中:今、天然の稚魚がすごく高価になっています。孵化してから稚魚になるまでは、少なくとも半年以上かかります。他の魚種に比べると非常に長いです。そのあいだの餌を作るのも簡単ではありません。
――続いて、松井さんの活動についてお聞かせください。
松井:職人の高齢化で、現在は深刻な人材不足状態。育成にも多くの時間がかかります。そこで、私たちは主婦層をターゲットにした短期育成プログラムを打ち出しました。うなぎの取り扱いから串うち、焼きの技術までわかりやすく指導する環境を整備しています。独り立ちまでには約3か月を目安に行っています。主婦層はマルチタスクをこなす優秀な人材。包丁の使い方は家事で慣れている方が多く、まったくのゼロスタートではありません。その分、育成までの時間短縮ができます。
高城:うなぎ屋さんが閉店する理由は、長年価格の高騰だと思っていました。しかし、『うなぎ大好きドットコム』の活動でお店側と対話するうち、ほとんどの閉店理由が職人の高齢化であることがわかりました。ですが、なかには「かっこいい!」とあこがれて職人になってくださる方、若い方もいらっしゃいます。松井さんのような経営者の方の努力のおかげで、明るい未来が見えてきているのではないでしょうか。
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――最後に、皆さんの今後の展望についてお聞かせください。
田中:うなぎを絶滅させないための技術はできましたが、完全養殖には非常に手間がかかっています。完全養殖のうなぎがまだ市場に出回っていないのは、ルール作りができていないから。これから徐々に召し上がっていただく機会が増えていくはずです。その際は、プレミアムなうなぎという意識を持ち、これからも貴重な食資源としてうなぎを召し上がっていただけたら嬉しいです。
松井:加工技術の進化などで調理方法は多様化していますが、古くから伝わる文化を守っていくのも飲食店の役目。この食文化を絶やさぬよう、これからも人材育成に尽力します。
高城:うなぎの歴史は、ピンチをチャンスに変えてきた歴史でもあります。養鰻家の皆さんが、少ない資源を有効に使おうとうなぎ愛をこめてとてもおいしいうなぎを作ってくださるようになったんです。昨今、海外の方にもうなぎがおいしいとバレちゃいました。このままでは日本人が食べれなくなるのでは、という不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。完全養殖うなぎの商業化という未来が切り開かれることを願っています。
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古くから高級食材として知られ、ハレの日のメニューとしても名高い「うなぎ」。完全養殖の研究やうなぎ職人の育成プログラムといった、うなぎという食文化を後世に伝えるための情熱に触れることのできた発表会でもありました。そんな想いを知った上でうなぎをいただくのは格別。この機会に、ぜひ皆様もうなぎを召し上がってみてくださいね。