White Light/White Heat - US Original Later East Coast Press(プリントミス有)
The Velvet Underground
White Light/White Heat
Verve Records – US Original Later East Coast Press
USオリジナル盤・後期東海岸プレスです。特徴と雑感を書いてみます。プリントミスについて仮説など。
USオリ盤はジャケにスカル柄
画像では見えにくいですが、表ジャケにはスカル柄がデザインされています。オリジナル云々の話は、やっぱりここスタート。
東海岸プレス
西か東かの判断材料の多くは、ラベル部分にあります。この特徴はバリバリの東海岸プレスです。そのあたりは「White Light/White Heat ラベルの違い - Verve USオリジナル盤周辺」の記事で整理してみましたので、ご参照ください。
ラベル以外に見える東海岸プレスの特徴としては、ランアウト(ラベルの外側の溝のないヴァイナル部。デッドワックスとも呼ばれる場所)に、New Jersey州Bloomfield(東海岸)にあったMGM直営のプラントでプレスされたことを明示する「S」、ひょこゆがんだ袋文字のSマークが刻まれています。(下画像)
参照 :
BloomfieldのMGMプラントは1971年に閉鎖。ただし、Sマークは、60年代にMGMがプレスを下請けにだしていた先のひとつであるNew Jersey州のNewarkにあるSavoy Records' plantの印との説を唱える人もいるようです。
かなりいい音します、ナイスレコード
このレコード、かっこいい音がします。初期西海岸プレスのオリジナル盤のサウンドと聴感上ほとんど違いは感じないんですが、どちらかというと、初期西海岸よりは、この後期東海岸の方が飽和していてドーンと出てくる方向です。念のため、後期西海岸プレスと後期東海岸プレスを同条件でデジタル化した波形を比較してみたんですが(初期東海岸を持ってないもんで…)、後期東海岸プレスの方は、西よりRチャンネルの波形が大きいです。
もしかしてM/Sのバランスで見てみるとぜんぜん違ったりするのかなーとふと気になって確認してみたんですけど、そっちは極端なバランスの違いや特筆するほどの特徴はありませんでした。なんせ、西でも東でも後期でも、USオリ盤はかっこいい音がしますわ。耳が慣れているせいもあってか西海岸プレスの方が良いと僕は思うんですけど。
初期との違いは裏ジャケのみ
この後期東海岸プレスの仕様は、
でして、Discogsでいうとこのエディションに近いです。この後期東海岸プレスと初期東海岸プレスの違いは、裏ジャケのクレジットが修正仕様なことだけだと思います。まあ、だけ、ではないんでもう少し話が続くんですが…。
裏ジャケのプリントミスについて
以前に、後期西海岸プレスのUSオリジナル盤の記事「White Light/White Heat - US Original Later West Coast Press」の中でも触れましたが、この後期東海岸プレスの裏ジャケにも、右隅にプリントミスがあるんですよね…。そこにあるべきではない、天地のひっくり返ったモノラル盤の品番「V-5046」が印刷されています。このプリントミスのあるエディションについて調べてみると、どうやら、Oakfield Reissueと、Hollywood Reissueの一部にだけ見られるようで、どちらの場合も、裏ジャケのプリントミスだけじゃなくて、中身のレコードにもプレスミス(A面モノラル/B面ステレオなど)がある場合もあるとのこと。
プリントミスから考えたこと -1-
ただ、このレコードは全曲Three Prongなので、Oakfield Reissueの系譜ではないです。あと、ラベルのリムにある住所表記も「METRO-GOLDWYN-MAYER」でありSunsetラベルではないので、Hollywood Reissueの仲間でもなさそう(参照記事)。中身のレコードは両面ステレオなのでプレスミスは含んでない。よくわからんなりに予想できることのひとつとしては、、1972年以降にリリースされたOakfield ReissueやHollywood Reissueの一部に見られがちなプリントミスが、このUSオリジナル盤の裏ジャケにもあるわけなので、おそらくこのレコードもそれらと重なる時代、1972年前後に出回っていたブツなんじゃないだろうかってことです。だとすると、東海岸プレスのUSオリジナル盤としてはド後期。
プリントミスから考えたこと -2-
もうひとつ気になり続けてきたことは、モノラル盤の品番V-5046が「逆さま」だということです。これについても、なにも調べがつかないので勝手な想像の域は出ませんが、、「裏ジャケの右下に、あるべきでない文字がうっかりミスで印刷されました」と考えるよりは、「別の商品の部材を流用して作ったので妙なことになりました」の方が、事実に近いのではないかなと思っています。
A式(アメリカ式)のジャケットは、ボール紙でつくった芯になるポケットの上に、デザインが印刷された紙(以下:上紙)を貼って作っています。WL/WHの場合、裏ジャケに黒い縁があることから、芯の上に貼った上紙(🅐 + 🅑)の🅑(黒無地)の部分に、上からもう一枚クレジットなどが書かれた白い紙(🅒)を貼っています。🅒の白い紙を🅑の面よりひと周りサイズを小さくして黒い縁を作っています。(下図参照 : 貼り方の方式などについてはここでは割愛して簡略化)
仮説ですけど、ステレオの時代に突入して、余ってしまったモノラル盤用のジャケ部材(🅐 + 🅑)を流用して、ステレオ盤を作っていた時期があったんじゃないかなと思っています。上図の🅑の面は黒の無地なので、「上からステレオ盤の表ジャケを刷ったらいいやん、ゼロから作るより黒インクの節約やん。」とか、そういう発想のもと、この部材を再利用したんじゃないかなという仮説です。
上図🅑の黒の無地面を表ジャケに再利用して使おうとすると、芯のポケットの右開きを変更するわけにはいかないので、下図のように上紙ごとひっくり返す必要があります。
🅑の面が表ジャケの位置にきて、🅐の面が裏ジャケになったら、次に、クレジットの書かれた🅒の白い紙を🅐の面の上に貼り付けます。
こうすれば、このレコードの裏ジャケのように、逆さまのV-5064だけが右下にハミ出すんじゃないか、という推理です。
もしもこの説がそこそこいい線いってるとするならば、🅒の白い紙の下にはモノラル盤の表ジャケ🅐が埋まっていることになります。つまり、Andy Warholのスカル柄も隠れて埋まってる可能性は高いはずです。このプリントミス仕様のWL/WHは、実質的に表ジャケにも裏ジャケにもスカルがある「両面スカル」エディションなのだろうなと思っているんです。そんなことを夢想しております。
プリントミスから考えたこと -まとめ-
Oakfield ReissueもHollywood Reissueの一部にも、中身のレコードにもプレスミス(A面モノラル/B面ステレオ)があるとされていることも含めて、、MGMがPolygramに買収されるやされないやとバタバタしている1972年の前後数年の期間中に、余っていたモノラル盤のジャケ部材・ヴァイナル部材を流用して完成度の低いステレオ盤商品をつくっていた時期があったということなのかもしれない。
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