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White Light / White Heat ラベルの違い - Verve USオリジナル盤周辺

1968年にリリースされたThe Velvet Underground「White Light / White Heat」のUSオリジナルVerve盤のラベルにみる特徴・違いなどについて、備忘録としてざっくりとですがまとめてみます。

西海岸プレスと東海岸プレスの区別

White Light / White Heatがリリースされた頃のVerve(MGM傘下)は、流通の利便のため複数のプレス工場を使い分けていたとされています。MGMは、New Jersey州のBloomfield(東海岸)に自社プラントを持っていましたが、下請けとして多くの他社プラントにもプレス業務を委託していました。1968年にリリースされたWhite Light / White HeatのUSオリジナル盤の話に限ると、ほとんどの場合、東海岸プレスは、BloomfieldのMGMプラントで、西海岸プレスは、California州のH.V. Waddell社のプラントでプレスされていたと言われています。そして、プレス工場によってレコードに特徴の違いがあらわれます。

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西海岸プレス
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東海岸プレス

① フォント
ラベルで使用されているフォントが違います。バンド名・音源名のあたりを見て、べちゃっとした極太のフォントが使われているのが西海岸プレス少しスリムで縦長なフォントが東海岸プレスです。

参考 : 東海岸プレスのラベルの植字は、MGMが1972年にPolygramによって買収されるまでずっと、New YorkのPace Pressという会社が請け負っていたとの情報アリ。

② DG(深溝)
DGとは、Deep Grooveの略で、ちまたではよく「深溝(ふかみぞ)」と呼ばれます。プレス工程で生成される円状の溝で、プレスリングとも言われます。WL/WHのUSオリジナル盤では、DGは、西海岸プレスのレコードにだけあります。東海岸プレスのレコードにDGはありません。詳しくは後述しますが、画像の初期西海岸プレスのラベルには、センターホールを中心にした直径2.75インチ(約70mm)の円上の溝があります。東海岸プレスには、直径1.25インチ(約30mm)の円上の薄い線があるだけです。

西海岸プレス - 初期プレスと後期プレスの区別

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USオリジナル盤・初期西海岸プレス
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USオリジナル盤・後期西海岸プレス

④ DG(深溝)がダブル
西海岸プレスのプラント「H.V. Waddell」で生成されるプレスリングには世代による違いがあるとされています。

*1968〜1969年の間
直径2.75インチ(約70mm)のDG

*1970年代
直径2.875インチ(約73mm)と直径3.625インチ(92mm)のダブルDG

*1970年代後半以降
直径1.25インチ(約32mm)の薄い線

という流れで変わっていったようです。初期プレスには、直径2.75インチ(約70mm)のDG(②)のみ。後期プレスには、直径2.875インチ(約73mm)と直径3.625インチ(92mm)の2周分のプレスリングがあります。USオリジナル盤西海岸プレスを見て、ダブルのDGがあるのであれば、初期プレスを否定します。

⑤ 曲の権利情報表記
ラベルに記載されている曲の権利情報は、初期プレスのUSオリジナル盤では、全曲「Three Prong Music」と表記されています。後期プレスになるにつれて「Oakfield Ave. Music」に移行していきます。画像の後期プレスのラベルは、A2とA3のみ「Three Prong Music」で他はすべて「Oakfield Ave. Music」となっています。全曲「Three Prong Music」ではないことによって、初期オリジナル盤であることを否定します。東海岸プレスでも同じことが言えます。

リプロ盤と正規盤の区別

日本国内にもそれなりの数が流通している70年代初頭に製造されたUS製リプロ盤(Discogsのリンク)のラベルの画像を貼りました。このリプロ盤は、初期西海岸プレスを模しています。偽物としての特徴は、ラベルだけではなく他にもいろいろあります。そのいろいろについては「White Light/White Heat - Early 70's US Counterfeit」の記事をご参照ください。

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初期西海岸プレス USオリジナル盤
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70年代前半 US製リプロ盤

⑥ フォントのにじみ、粗悪な接着
リプロ盤のラベルは、インクがにじんだような文字潰れがあります。おそらく現物から版を起こしてるせいで、全体的にテキストが太ってしまってるんだと思います。また、その他の特徴としては、ラベルの青味が本物よりも濃くて、どちらかというと紺色に近いです。あと、使用している接着剤の質が正規盤とは違うようで、ラベル表面に浮いた接着剤によるシミが出ている箇所もあります。この盤もB面はかなり汚いです。

USオリジナル盤とHollywood Reissueの区別

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USオリジナル盤
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Hollywood Reissue

⑦ ラベルのリムにある住所表記
ラベルのリムに記載されているレーベルの住所からも、ある程度年代を推察できます。1968年にリリースされたWL/WHのUSオリジナル盤には「MGM RECORDS-A DIVISION OF METRO-GOLDWYN-MAYER, INC.-Made in U.S.A.」と記載されています。

1972年にMGMがPolygramに買収され、それ以後、1972年〜74年頃の数年間は「MANUFACTURED BY MGM RECORDS, INC., 7165 SUNSET BOULEVARD, HOLLYWOOD, CALIF. 90046」 と記載されます。住所にSunset Boulevardを含むことから、通称「Sunsetラベル」と呼ばれ、Sunsetラベルの付いたこの時期のWL/WHは、Hollywood Reissueと呼ばれます。画像のラベルは黒銀Verveですが、青銀Verveもあります。青銀のHollywood Reissueは、黒銀よりも断然希少で人気があります。

1968年〜72年頃の盤には「METRO-GOLDWYN-MAYER」、1972年〜74年頃の盤は「SUNSET BOULEVARD」といった感じです。それ以降は、番地に10019の付くNew Yorkの住所(複数種類アリ)となります。

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