『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』 ( #シン家族 ) を読んで妊婦が感じたこと
2020年3月下旬発売予定
『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』
花田菜々子 著
( #シン家族 )
ゲラ先読み企画に一般枠で当選し、"一冊まるまる発売前に読む"という初体験ができました!
感想を拡散して欲しい企画だそうなので、今回は #シン家族 についての感想投稿です。
著者の花田菜々子さんについては以前テレ東番組「おしゃべりおじさんとヤバイ女」に出ていた時の印象があるだけ。
わたしが"与えられればとりあえず読む"程度には本好きなので、読めたら嬉しいな〜くらいの軽い気持ちで応募しました。
この企画で予想外に嬉しかったのは、家のポストにゲラが投函されているという体験。わたしの日常に出版前の本が存在している!!
ただの本好きなので"本作りに関わっている"感が急に湧いてきて、ミーハーな嬉しさがこみ上げたんですよね。
多分"メールにデータが添付されているだけ"だったら、丁寧に感想文をこうして書くこともなかったんじゃないかなと思います。
データや電話だけのやり取りで終わらせてくれよ、と思うシーンは多いですが、久しぶりにアナログだからこその楽しい体験ができました。
関係者の皆様、ありがとうございました。
さて、肝心の感想を。
1個人の体験に乗せてたくさんの本が紹介される本作は、本好きにはたまらない一冊だと思います。
なにかわからないことに直面したら、まず本に頼る。
そんな著者の生活が前面に押し出されていて、書店員というプロフィールも相まって、紹介されている本はどんどん読みたくなりました。
※巻末に本文で紹介されている本が一覧でまとまっているので、後追いもしやすい!
一冊通して読んだ時、以下の3点について考えさせられました。
・偏見を持たれやすいシングルファーザー家族と過ごすこと
・子どもの教育との向き合い方
・著者の思考の背景にある本たち
偏見を持たれやすいシングルファーザー家族と過ごすこと
父と小学生男子2人の3人家族と一緒に過ごすことで、自分の中に埋まっていた偏見と向き合ったり、親戚からの偏見にぶち当たるシーンが印象的でした。
①自分の中に埋まっていた偏見
4人でごはんを食べながらバラエティ番組を見ていると、家族団らんの様子を描いたCMが映し出された時のこと。
おいおいおい、なんてCMを流してくれてるんだ、と、エロシーンが始まったとき並みにひやっとする。(中略)
「僕このCM好き」「へっ? どこが?」「この歌が好き」(中略)
勝手に私が期待してしまっていたのだ。「自分たちには母親がいない」なんて気に病んでいる子どもたちの姿を。嫌になってしまう。こんなに自由でいたいと自分で言いながら、自分こそが偏見に囚われている。
#シン家族 より抜粋
彼らは3人で完結しているのだ。「母」が欠落した家族をやっているわけではない。ミナトはそのことに自信を持っている。
#シン家族 より抜粋
※ミナト...シングルファーザー家族の長男
全力で寄り添おうとしても、自分が関わっていなかった時間分の家族の歴史はわからない。
最初は小学生男子2人に受け入れてもらうことに必死になって、徐々に慣れてきたら今度は相手の気持ちを考えて先走って無駄な心配をする。
わたしは2020年3月時点で、初産を予定している妊婦なので、残念ながら小さい子を含む家族に関する経験が薄いのですが、近い感覚は"転職直後、新しい職場に通い始めた頃"でしょうか。
見知らぬ人が複数いて、その人たちの間には自分の知らない歴史がある。
その歴史全部をインストールするのはどう頑張ってもできなくて、新たに自分を含めた時間を重ねていくしかない。
重ねていって初めて気付くことはたくさんあって、その中に自分が無意識に持っていた偏見が顔を出すこともある。
多分それは悔いても仕方のないことで、気付いたその瞬間から自分を変えていけば良いものなんだと思いました。
著者の変化は"大変だね"から、"彼氏の子育てをほめる"に表れたそう。いい感じ。
こうして、3人と仲良くなればなるほど、最初に思っていた「大変だね」という言葉が自分の感覚にもマッチしなくなっていた。私は大変だね、という言葉を捨てるかわりに、トンの子育てを大げさにほめていくことにした。
#シン家族 より抜粋
※トン...シングルファーザーの年下彼氏
②親戚から真っ直ぐにぶつけられた偏見
同い年のいとこ・真由とのやりとりのシーンは読んでいて辛かったです。
真っ直ぐな正義感をぶつけてこられると、悪気がある相手よりやりづらいこと、あるよなぁ〜。
片親に対する偏見や、真由の考える"子どもにとっての幸せ"。
それらは聞き手(著者)が望むか望まないかなんておかまいなしに、彼女の中から溢れ出た言葉なんだと思う。
間違ったことや意地悪なことを言ってるなんて夢にも思わず、むしろ正しい方に導こう!くらいの気持ちで正論を振りかざす。聞き手にその意見を「偏見だな」と感想を持たれていることも知らずに。
結局最後まで、2人で話し合ってすれ違いポイントを改めるようなことはしないところがすごくリアル。著者は「真由は何が言いたかったのだろう」で済ませているにも関わらず、このエピソードを載せた。なんでだろう。
著者に寄り添うかたちで読んでいるはずの第三者のわたしの目にも、この時の著者の思考は意地悪に映りました。
ここだけは"何かを伝えたい"というより、"シングルファーザー家族と付き合っている中でこんなことがあった"の日記っぽさがありました。
そんな不完全さも、実話ルポだと思って楽しめる人にはすごくオススメです。
設定が完成されている、美しい小説が好きな人だと不完全燃焼な気持ちになっちゃうんじゃないかなぁ...。
子どもの教育との向き合い方
わたしは男の子を身ごもっている妊婦なので、子ども(小学生男子)の教育について考えるシーンが出てくる度に、立ち止まって考えさせられました。
これもハウツー本と異なり、著者が悩んだシーンを切り取って書き出されているからこそ起こった事象かもしれません。
そこら中で「ちんちん!」と叫び出されたり、ファックサインを無闇に出したり、小学生の間で出会い系サイトもどきのものが流行ったり...。
自分の子どもが後にそんなことをすると想像すると、リアルすぎて今から頭痛がしそう。
でもきっと起こる、それら一つ一つにどうやって対応していくのが良いのでしょうか。
「こういう子になって欲しい」と思って誘導するのは"わたしの思う正しさ"の押し付けなのか?誘導するにしてもどうやって?などなど。
解答なんてどこにもなくて、その時に自分が「した方がいい」と思った対応を取るしかないのでしょう。
それでも悩むなら、悩んでいるテーマを扱っている本を読んで、答え(みたいなもの)を自分で掴み取る。
書店員らしさの溢れる著者の行動はあくまでも一例でしかないけれど、幸い本を読むことが負担でないわたしにとっては、忘れないでいたい行動として刻まれました。
著者の思考の背景にある本たち
冒頭にも書きましたが、「なにかわからないことに直面したら、まず本に頼る。」
そんな著者の生活が前面に押し出されていて、書店員というプロフィールも相まって、紹介されている本はどんどん読みたくなりました。
本の紹介は、その内容にフォーカスして語るものが一般的だけれど、実際に読んだ後は実生活の中で不意に「あの本にああやって書いてあったよな」って思い出してありがたく思うことが多いんですよね。
でも、思い出した前後のシーンまで含めて丁寧に伝えることが難しいから、なかなかそこまで含めたオススメが出来ない。だから他人に勧めることって難しい。
今作では著者が自分で体験したシングルファーザー家族のことを描きつつ、裏では「リアルな体験をもとにして本を勧める」という通常だと難しいことに挑戦してるんじゃないのかな、なんて思ったりしました。
書籍に仕事で携わった経験がないので、めちゃくちゃ勝手な推測ですが...。
ちなみにまんまと感化されたわたしは、本作を読みながら登場した本は今後読もうと思ってメモを取っています。
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わたしが著者、花田菜々子さんを知ることになったTV番組出演のきっかけとなった前作はこちら👇
改めて、ゲラ先読みという初めての経験をさせてくれた著者や、河出書房新社の方々に感謝を。
この投稿を読んで #シン家族 読みたい!と思った人が一人でもいますように。
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