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THE MARKETER with AIR Design:サウンドファン 金子一貴氏

2018年、テレビの音を聴こえやすくする「ミライスピーカー」を開発・販売するサウンドファンに入社し、その後2年足らずで執行役員に就任した金子氏。当時、WEBマーケティングの専門性が低かったという金子氏が、未経験の領域で売上を10倍に伸ばした秘訣とは何だったのか? また、現在は取締役/CMOとして経営に携わりながら成果を出し続けられるのはなぜか?
同氏がAIR Designと共にマーケターとして歩んできた道をひも解いていく。

株式会社サウンドファン 取締役/CMO   金子 一貴氏
University of Wisconsin La Crosse校でMBA取得後、株式会社ニデックで、眼科医療機器の国際プロダクトマーケティング部にて、複数製品のマーケティングに従事。海外ドクターとの共同開発、製品戦略立案などを担当。2018年4月サウンドファンのマーケティング部門を立ち上げ、2020年1月に執行役員、2021年12月に取締役就任。

BtoC立ち上げの新規事業にアサイン

金子氏の社会人のスタートは眼科向けの医療機器を扱うメーカーで、当時は製品担当だった。サウンドファンには2018年4月に入社。きっかけは、本屋で「日本のベンチャー25選」という本を手に取ったことで、掲載されていた企業のほとんどがSaaS企業だった中、メーカーとして掲載されていたサウンドファンに惹かれたのだという。

「とても技術がユニークであること、器官は違いますが『眼』と『耳』は構造が近い部分もあるので、医療機器メーカー勤務の経験も活かせると感じました。」

その後、マーケティング部発足に伴うマーケターとしてサウンドファンに入社したが、代理店やチャネル経由の、比較的大きな施設や法人向けの販売がメイン。コストをかけてブランディングやマーケティングに力を入れるというよりは、代理店の支援などが主な仕事で、一緒に取引先を回って手売りするような状況だった。

風向きが大きく変わったのは、入社直後に「ガイアの夜明け」で製品が取り上げられたこと。その反響は凄まじく、「テレビの音が聞こえにくくて困っている」「家で使える商品はないか」という個人からの問い合わせが圧倒的に多かった。法人向けの製品しか作っていなかったが、そこで、個人の需要があることが明確になったのだ。

「法人向けの方にチャンスがあると思ってビジネスを展開してきた当社は、一気にピボットするのは難しい状況だっため、BtoC事業の立ち上げを検討、そこに私がアサインされました。」

まずは、既存製品で小さく始めるために、『サブスクリプション』という形式をとった。聴こえに個人差がある製品なので、『合わなかったら返せる』というスキームがお客様にとってもメリットが大きいと考えたのだ。

2018年の後半から、サブスクリプションを展開する過程でお客様からいただいたフィードバックを元に開発を進め、個人向け製品がローンチされたのが2020年5月。それが「ミライスピーカー・ホーム」だった。

ミライスピーカーHP  https://soundfun.co.jp/


「AIR Design」との出会い

法人向けだった既存の製品をAmazonで販売するためFacebook広告を打ってみたところ、思いのほか良い反響が得られた。「ミライスピーカー・ホーム」ローンチ後、半月で400台ほど売れ、スタートダッシュとしてはかなり良い手応え。金子氏も「ネットで売れる」と確信していたという。サウンドファンとガラパゴス双方の取締役である守屋氏の紹介により、ガラパゴス代表の中平と金子氏が出会ったのはこの頃である。

「当時は、WEBマーケティングやインターネット広告に対する経験がそこまでなかったので、見よう見まねというか、気合いで進めていましたね(笑)LPOという言葉自体知らなかったですから。そこでインターネット広告の勉強を兼ねてディスカッションしましょうと。」
[LPO: Landing Page Optimization ランディングページを最適化するための手法]

守屋氏に「刺激をもらって来い」と送り出してもらったという金子氏は中平の話を聞いて、「AIR Design」の “AIを用いてデータで定量化する”という考え方がサウンドファンのカルチャーにマッチしていると感じた。


デザインを定量的にジャッジする

「ミライスピーカー」は一定程度認知されていたので、ローンチ当初は広告費をかけなくてもある程度売上が立っていた。しかし、更なる認知拡大のため、潜在層向けにプロモーションを展開するもCPA(Cost Per Action/顧客獲得においてかかる広告費用) は上がってしまう。WEB広告はしっかりPDCAが回る良い改善サイクルを確立できていたが、LPは感覚で制作していた部分も多く、どのように改善していいのか分からない状態だった。

「当社は常に“データドリブン”を徹底していますが、広告デザインを定量的にジャッジするのが難しくて。LPOについても社内に改善ノウハウが無く、かつ資金も潤沢ではない。限られた予算をどう投資していくべきか、客観的な判断ができず悩ましい状況でした。」

サウンドファンが本格的にAIR Designを導入したのは2020年10月頃、その頃はまだデザインを定量的にジャッジするという思想そのものが世の中になかった。にも関わらず、金子氏はAIR Designを導入してキャッチコピー、訴求軸、表現、トンマナ、レイアウトなどの観点から徹底的にクリエイティブの検証を行い、デザインの定量化に取り組んだ。

▲ コピーとデザインの2軸でのテストを実施


「ミライスピーカー」は、テレビの音を聴こえやすい音に変換する特許技術『曲面サウンド』を搭載。広く遠くまでハッキリとした音声を届け、様々な環境で従来型スピーカーからの言葉の「聴こえ」に困っている方々をサポートする製品である。しかし、実際に購入を希望するのは「聴こえにくい」と感じている本人なのか、もしくは家族や同居人なのか。当時は顧客層の解像度が今ほどは高くなかった。そこで複数の観点からユーザー分類も行い、最も効果的なコピーを見つけることができた。そのコピーは他の広告媒体で掲載しても訴求力が強く、CM のクリエイティブにも展開していくこととなった。「刺さるコピー」をAIR Designと共に考えられたことは、非常に大きな実績、経験だったという。それは「最も製品を望んでいるお客様を見つける」ために、何度も何度も泥臭く仮説検証を繰り返した結果だった。

デザインについて「ガジェット感」が無い方が良いのでは?という意見も出た。しかし、計測していた購入者の統計値では50代、60代の男性が購入しているケースが多かった。金子氏はそれを踏まえ、デザインの変更を行った。元々は若干暖かみのある色合いで、情報が多くごちゃっとしている感があったデザインから要素を大幅に削り、シンプルかつ色味の少ないクールなデザインへ。思い切った変更だったが、結果的にはユーザーにぴたりとハマるLPが出来上がった。

▲旧LP(左)と新LP(右)。効果検証を繰り返しながらデザインを変更。
▲ 現在展開しているLP


「現在のCVRも好調です。広告の運用状況や、CMの放送などによって流入の質が変わることはありますが、以前に比べると押し並べて良い状態です。改善していることが肌感ではっきりとわかります。 直近でも、CM効果もあり流入がすごく増えているのですが、AIR Design導入当初と比べると、今年は売上が10倍以上になっています。」

コピーとデザインの2軸でテストをすることは、AIR Designからの学び。今でも必ずキャッチコピー4種類とデザイン4種類を準備し、スクリーニング後に選ばれたものだけを使うようにしているという。しっかりLPOのカルチャーが根付いたことは、金子氏が当初AIR Designに期待していたことであり、導入してよかったと感じるポイントだと語った。


「小さな改善」と「チームワーク」

専門性の低いWEBマーケターから、執行役員を経て取締役に就任した金子氏に、当社代表の中平が尋ねた。入社からステップアップして経営に参画していく過程で、自身の変化を感じる瞬間はあったのだろうか。

「施策の結果として明確に数字がついてきたことで変わりましたね。自分自身、知見が深くない状態からWEBやBtoCマーケティングへの理解が深まって、客観的なデータに基づいて自信を持って説明できるようになったことは大きな変化です。マーケティングの責任者として、根拠と説得力を持つ形で説明できるようになったのは、ここ一年半ぐらいの話ですから。」

AIR Designの導入により「どういう意図で、どのような仮説に基づいて新しいLPをテストした結果、数字としてどうだったのか」という一連の流れがしっかりと整理され、プロセスを詳細まで理解しているので根拠を持って話をすることができる。広告運用のあるべき姿で意思決定がされている手応えがあるという。

WEBマーケティングの考え方や「ミライスピーカー」のターゲットについて、AIR Designを通じて考える機会をもらえたと話す金子氏。それがマーケティング活動全体に活かされていると感じる場面も多々あり、サウンドファンのマーケティングチームに力がついてきていると実感しているそうだ。

「元々WEBマーケターがいなかったことを考えれば、革新的だと思います。スタートアップに限った話ではありませんが、日々の“小さな改善”が非常に重要で、それを二人三脚でやっていただけることが本当に心強いです。LPにしても、『作って終わり』ではダメで、都度変化する顧客の流入状況に敏感にならないといけませんから。」

ガラパゴスもサウンドファンと同じスタートアップであり、まだまだ発展途上。改善の余地も大きい。振り返れば、時にミスコミュニケーションや摩擦が生じた場面などもあったかもしれないが、その都度両社で「小さな改善」を重ねて乗り越えてきた。今ではより良い関係を築けている。
双方が発展途上だったからこそ柔軟性を持って迅速に変化していけたこと、チームとして成長していけたことはスタートアップならでは。マーケティングとは何か、マーケターはどうあるべきか、AIR Designと培ってきた金子氏のナレッジは、現在しっかりとチームに浸透している。

今後は新たなマーケット、海外への展開なども想定しているという金子氏。近い将来を見据えて、別の視点での「勝ちLP」の検討を重ねたい。引き続きデータドリブンに、AIR Designと二人三脚で進んでいけたら嬉しいと、笑顔で語ってくれた。


●AIR Designサービスサイト


(文責:前川敦子)