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自律自転な人を育て 未来組織図を埋める:Galapagos Supporters Book⑨(前編)

シリーズAで累計13億円の資金を調達したAIR Designのガラパゴス。
そこには株主や顧問、社外取締役という形でガラパゴスを支える、たくさんの支援者の存在があります。
ガラパゴス・サポーターズブックでは、そのような外部の支援者と、ガラパゴス代表・中平の対談を通して、ガラパゴスとAIR Designの魅力をお伝えしていきます。

第九弾は、中平が通う私塾「中尾塾」にてリクルート流の経営メソッドを中平に指導されてきた、中尾マネジメント研究所の中尾さんです。

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■中尾隆一郎 プロフィール
中尾マネジメント研究所 | 代表取締役社長
1989年大阪大学大学院工学研究科修了。リクルート入社。リクルート住まいカンパニー執行役員(事業開発担当)、リクルートテクノロジーズ社長、リクルートワークス研究所副所長などを経て、2019年より現職。株式会社「旅工房」社外取締役、株式会社「LIFULL」社外取締役、「LiNKX」株式会社非常勤監査役、株式会社博報堂DYホールディングス フェローも兼任。新著に『1000人のエリートを育てた 爆伸びマネジメント』がある。

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自律自転する人と組織をつくる試み

ーーまずは中尾さんと、中尾塾のご紹介をお願いします。

中尾:世の中に自律自転する人・組織を増やしたいという想いで、「中尾マネジメント研究所」という会社を営んでおります。リクルートという会社に29年間いたんですけれども、自分でものを考えて決めて実行して、すごく楽しく仕事していたんですね。だから独立した際にも、「仕事が好きだ」思える人たちを増やして、楽しい組織を作りたいと思っていました。良いサービスと組織を作るプレッシャーをかける意味合いで、自分の名前を社名に入れたんです。「HARD THINGS」(ベン・ホロヴィッツの著書)にも、自分の名前をつけているサービスや会社は強いと書いてありますからね(笑)

中平:中尾さんは読書家でいらっしゃいますもんね。年間100冊くらいは読まれますか。

中尾:年間100冊を21年間続けていますね。

中平:月1冊以上本を読む人が17%...というようなお話を伺いましたよね。

中尾:厳密には、本に限らず「仕事に関係するインプットをしている人が17%」というデータがあるという話ですね。2000年の話ですが、リクルートのワークス研究所で責任者をやっていた時に13,000人を対象に調査をしたんです。その結果から、残りの83%と比較した時に、年齢や業種など同じ条件で見ればその17%の方が給料が高いし、良いポジションにつくことが見えたということですね。

中平:その結果は必然、という感じがしますよね。

中尾:日本って大学までは勉強するんだけど、社会人になってしなくなる人が多いんです。だから「学び続ける場」をつくらないといけないという想いをずっと持っていて。リクルートで組織の責任者をしたり、子会社の社長をやったりしていたので、部長や課長といった管理職にマネジメント、「管理」というより「経営」を学んでもらおうと思って社内で始めたのが「中尾塾」だったんです。100人くらいの管理職が参加してましたね。独立した後にその受講者から、「中尾塾はやらないのか?」と問われたわけなんですよ。やり始めたら大変だから迷ったんだけど(笑)一念発起して「経営者の塾を作ろう」と決めました。前は社内の管理職向けだったけれど、経営者が自律自転して、それが社員にも伝播していくような、そういう職場を増やしていこうと。そんな想いで始めたのが2年前です。

中平:2年前ということは、2019年くらいでしょうか。初めてお会いしたのは2020年の1月ですね。僕自身も学ぶことが大好きなので、「お仲間に入れて下さい」と参加したのが、2020年3月くらいで。多様な経営者とお話できて、すごく楽しく参加させてもらってる中で緊急事態宣言が発令されて。そこからは毎週オンラインでグループコーチングとディスカッションを繰り返してきました。この1年半くらいで相当成長させてもらった自覚があります。とにかく僕は、ご出身のリクルートを心の底から尊敬していて。

中尾:嬉しいです。

中平:盗めるものは全部盗む気概で参加していて、特に「リボン図」について理解を深めたかったんですよね。自分たちのビジネスにあてはめてみたら凄くはまったので。

型を知り、型の上にクリエイティビティを載せる

中尾:リボン図は、リクルートのビジネスモデルをフレーム化したものなんだけれど、「第三者が何かと何かをつなぐ」というモデルであれば何でも使えるので、応用範囲が広いんですよね。ただ、リボン図を知っている人は多いけど、本来の使い方が出来ている人は実は少ない。最初にビジネスを分解して、大事なところを見つけて、そこの解像度を明らかにするプロセスがあるんですが、普通の人は解像の仕方が荒かったり浅かったりしてなんとなくやった気分になるんだけど、課題の特定ができていないと思うんです。でも、中平さんはそのプロセスが元から身についてたように思います。

AIR Design リボン図 L

▲ AIR Designで活用しているリボン図。

中平:そうなんですよね。自覚はしていなかったのですが、僕が考えるプロセスがハマったんです。

中尾:僕はダメなパターンを「闇夜の鉄砲」と「CTスキャン」って表現するんです。暗闇の中で鉄砲打ってたまたま当たっただけれあれば再現性はない、それが「闇夜の鉄砲」。全部細かく分析して時間ばかりかけるのが「CTスキャン」。それが多くの人が陥るパターンなんだけど、課題を特定して深掘りできるバックグランドを中平さんは元々持っていた。最近はそれがさらにシャープになりましたね。

中平:僕も元々CTスキャン野郎だったんですよ。中尾さんにお会いするまで、とにかく課題を細分化・特定することが大事だと思っていました。中尾さんとグループコーチングの機会をいただく中で、マネージャーに必要な能力は「チームの最重要課題を三つに絞ることだ」と、確信を持ったんです。中尾さんにその考えを話した時に共感を示してくださって、リクルートグループの子会社社長をやられてた方が同意してくださるのであれば「これは正解だ」と。自信を持てたあの瞬間が、僕にとって非常に価値が高かったんです。

中尾:そうそう。リボン図のような型やフレームを決めることで創造性を失うと考える人もいるんだけどね。「型」というのは武道でいう、「守(しゅ)」の話だからね。「破(は)」が、型を破るという話。さらに離れて「離(り)」は新しい流派や型を作るって話なんですね。型やマニュアルが嫌だという人は、良い型を見たことがないんですよ。

中平:なるほど。リクルートさんって個性豊かで自由奔放なイメージがあるけど守破離の守はちゃんとあるんですね、きっと。

中尾:30年近く前は型もなにもなかったけど、なんとなく大事だから作った方が良いと思ってる人たちがいたわけですね。型があった方が短期で成果が出やすいから。

中平:そうですね。

中尾:型が無いと労働集約型になって、成果にもバラツキが出ますよね。型ができると、若手が立ち上がりやすいという利点もある。型をつくらずクリエイティブなことをしたいと言う人もいるけど、良いクリエイティブって、良い型の上に乗るものだと思うんですよね。

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中平:わかります。僕らはそれを「システム8割ヒト2割」と表現しています。8割方は機械、AIが肩代わりしてくれる。本当に集中すべき2割に人がヒトの時間を使った方が絶対に幸せですよね。フォーマット化や型化はむしろ人をクリエイティブにすることを、僕らのサービスの中で体感してもらいたいです。

中尾:そうですね。多くの人は、一度マニュアルを決めたら「変えられない」と考えるんです。でも実際はそんなことはなくて。有名な無印良品のMUJIGRAM(無印良品の業務を詳細まで網羅したマニュアル)の例で言えば、現場のマニュアルは毎月、本部のマニュアルも3か月に1度は見直すそうですよ。マニュアルって静止画ではなく、動画だから。1回は「型を知る」という意味でマニュアル通りにやってみて、必要であれば柔軟に変えていけば良いんです。

マッチングの鍵は、プロセスの中にある本質的なKPI

中平:「型」の話にもつながると思うんですけど、当時スーモカウンターの責任者をされていた時、マジックナンバーを見つけたという話がすごく好きなんです。

中尾:一番大事なところを見つける「クリティカルサクセスファクター」と言うものですね。スーモカウンターって、注文住宅建てたい個人と建設業者さんをマッチングするサービスなんですね。要は何社紹介すればお客さんが満足してくれるか、ターゲットの数字を見つけたという話です。

中平:当時チームの業績があまりあがってなかったと。

中尾:すごく気持ちの良いメンバーが揃っていてやる気もあるんだけど、マッチングがあまりうまくいってなかったんですよね。

中平:リボン図で表すと、左側が注文住宅を建てたい一般のお客さんで、右側が不動産業者さん。不動産会社さんとか工務店さんとか、マッチングした量が多いほどビジネスとしては成功するモデルですよね。

中尾:そうですね。お客さん、つまりユーザー心理では、不動産業者を何社も紹介されるの嫌だな、めんどくさいなと思ったりするわけです。注文住宅の場合、出来上がった家じゃないので都度見積りをするんです。例えば中平さんが工務店だとした場合、お客さんが中平さん1社しか考えていないことに気づいたら、値引きするのやめとこう、と思いますよね。

中平:高値で強気に出しますね(笑)

中尾:ですよね。でも競合がいたら意識して見積りを出すでしょう。だからお客さんのことを考えたら比較できる先がある方が良い。調べてわかったんだけど、お客さんは1社だけを検討していると言いながら、実は自分で他社と比較してるんです。

中平:なるほど、他でやってると。

中尾:こちらに見えてないだけなんですよね。僕たちが入ることで、そのあたりもフェアに、コミュニケーションが円滑になるんです。希望のハウスメーカーだけど担当者と合わないような場合にも、僕らのような仲介人が価値を発揮する。間に入って、第三者の立場から「担当を変えないか」と言うだけでうまくいくわけですよ。しかも頭の中にある、まとまりきっていない要望を三次元の「家」にする話、二次元の図面を見せながら三次元を想像させる仕事なので、感性とか仕事の進め方が双方で合わないと、すごくストレスになるんです。そんな時に、僕らのようなお見合いの仲人の腕の見せどころなわけですね。

中平:デザインの仕事も同じようなケースがありますね。

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中尾:人と人の相性まで見てマッチングするというね。

中平:結論として、導き出したマジックナンバーは3社というお話でした。

中尾:「3社以上紹介しよう」という話ですね。もちろん仲介人の立場で無理矢理決めさせることはできないんだけど、お客さんが家を建てる場合は、7割くらい僕たちが紹介するところで決めてくれるんですよ。

中平:それ、まさに型ですよね。3社を紹介するためにどんな創意工夫が必要か、自律自転で考えられたら本当に理想の組織だと思う。

中尾:そうそう。普通はお客様の要望通りが良いサービスと考えますよね。現場のアドバイザーも、「お客さんが1社で良いと言うのに、どうして3社紹介しないといけないのか」と考える。でも家を買うって一生に1回か2回しかないことですよ。比較しないと後々後悔しますからね。それが結局はお客さんのためになるんです。

中平:長い目で見ればお客さん、商売をするスーモカウンター、建てる人、三者にとって素晴らしい結果であると。

中尾:そう、三者が幸せ。相性まで見てマッチングしてるから揉めることもなく、良い結果になります。

中平:多分、成果が出にくいマネージャーは、別の KPIを追っていると思うんですよ。成約率だけ、とか。それはそれで正しい部分もあるけど、やっぱり「3社以上」という 揺るぎない本質的なKPI設定 がセンターピンで、それによりうまくいくんだろうと感じて。僕にとっては衝撃でしたし、学びがありました。

中尾:前提として、みんな成約数は増やしたいわけですよ。売上を上げたい、成約を増やしたいと思っているはずなのにそれが出ないのは、プロセスのどこかに問題があるんです。しかも顧客満足度は高いはずなのに成約は出ないってことは、何かが間違っているということ。そこに気づけるか否かなんですよね。

後編に続く

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▲ 関係者全員の幸せのため、事業プロセスの本質を見極める中尾さん。熱のある語り口からは、人の心理を起点に考える「人間好き」な印象が伝わってきます。

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(文責:武石綾子・髙橋勲)