推しの今季初ゴールを見て泣いた話
ゴールシーンは何を見ても、胸が熱くなる。心の昂りを抑えられずに涙を流すこともある。
けれど、7月23日、J3リーグ第18節・SC相模原対愛媛FC戦でゴールを目の当たりにした時に出たのは、安堵の涙だった。
サッカー、そしてSC相模原と出会って2年目。
僕には今季、初めて、いわゆる"推し選手"ができた。
2022年のSC相模原でストライカーナンバー・背番号9を背負う、浮田健誠選手。
シーズン開幕前、推すきっかけになったのは、最初は些細なことだった。
過去の動画を見て、ゴールシーンの泥臭さ、そして常に真っ直ぐゴールを捉えている姿勢に応援したくなる何かを感じた。
それから、入団時のコメントの『自分の左足で沢山のゴール、感動や夢を届けられるように』という文言に心打たれた。
感動や夢は「与える」という表現がよく使われるが、「届けられるように」ととても柔らかい言い回しをするところに、彼の根の部分の謙虚さを感じた。
サッカー選手として、人間として、応援したいと感じた。この選手のユニフォームを買おうと決めた。
開幕前には、このnoteの記事にコメントをくれたりと、どんどんと推したくなる要素が増えていった。
けれど、開幕してから待っていたのは、我慢と修正とまた我慢、とでも言いたくなるような、長い忍耐の時間だった。
開幕してから数試合、シュートはコンスタントに打てていたものの、バーに嫌われたり、あと一歩のところでゴールネットを揺らすことができないシーンが続いた。
もはや運の領域だと嘆きたくなるような、いわゆる"ツイていない"期間が続いた。
そんな試合をいくつか見ていて、気付いたことがあった。
アウェイゲームの練習前、浮田はよくチームの誰よりも早くピッチサイドに現れる。
客席を眺めたり、芝の状態を確認したり。準備の入念さと、気持ちの整理をつけている感覚がとてもよく伝わってくる。
僕はあの時間が好きだ。見ているうちに、あの彼の姿勢が報われてほしいと思うようになった。
推していて、辛いこともあった。
アウェイゲームでのメンバー発表で、初めてベンチ外になったときは、ショックのあまりその場から動けなくなった。
自分が推している選手を見れないという悲しみよりも、本人がどんな思いで今を過ごしているのかと考えたら、胸が張り裂けそうになった。
道すがら、20分ほどかけて混乱した気持ちを整えてからスタジアムに向かったのを覚えている。
けれど、その後の試合で、見違えるように身体を張って、ボールに食らいつくガムシャラな姿を見れたのが、心の底から嬉しかった。
あの姿を見て、何があっても、一生この選手、そして浮田健誠という1人の人間を応援しようと決めた。
時は流れ、チームの監督も交代した。新しい選手も加入した。
1ヶ月間、試合に出れない日々が続いた。
今振り返れば大変な時間だったかもしれないが、個人的には悶々としつつも、きっと大丈夫だと信じていた。
3節前、途中出場で少ない時間ではあるが、久しぶりに試合に出れた。動き、顔つき、全てが良かった。
絶対大丈夫だと、安心できた。
前節・アウェイ鹿児島戦では得点に繋がる鮮やかな落としを見せたりと、チームとハマってきたのをとても感じた。
そして7月23日。
チームはFW加藤拓己が序盤で負傷するというアクシデントに見舞われた。それによって浮田は早い時間からの途中交代で出場した。
久しぶりの長い時間の出場。
予定通りではない事態ではあったが、とてもスムーズに試合に入れていたように見えた。
ポストプレー、チャンス創出、いくつかいい場面があった。
そして後半の80分。
DF渡部大輔の丁寧なクロスに対して、フリーな場所へボールを迎えに行き、頭で合わせて狙い澄ましてゴールの隅へ。
このネットが揺れるシーンを待ち焦がれて、5ヶ月弱。
ゴールを見て思わず立ち上がったが、その瞬間に頭の中でこれまでのことが一気に思い出された。
シュートを外して悔しがる姿、うまく自分のプレースタイルがチームと合致しなかった時期。
きっと、色んな苦労があったと思う。
それは、おそらくフットボーラーであれば誰しもが味わう、ごくごくありふれた普遍的な苦労なのかもしれない。
けれど、初めて1人の選手を推すようになって、選手がどれだけの気持ちを抱えながら日々を過ごして試合に望むのか、少しわかった気がする。
ここから始まる。積み上げていける。
始められた。そう思うと、安堵感で涙が込み上がって溢れた。
チームとして試合は敗れたものの、何か重たい歯車が回り出したような、そんな感覚になった。
先にあげた彼の入団時のコメントに、「愛される選手になりたい」という一節がある。
開幕してから4ヶ月以上が過ぎたが、日増しに彼のゴールを願う声は大きくなっていったように感じる。
僕がスタジアムで会う方々も口々に言うし、多くのメッセージも彼に寄せられていた。
試合に出れない時、落ち込む僕に
「うっきーは大丈夫だよ、やってくれるよ」
「絶対に彼が必要なんだ」
と声をかけてくれて、励ましてくれた多くの方がいる。
ゴールの後、まるで自分がゴールを決めたんじゃないかというくらい、本人に伝えたいくらい多くの方々に初ゴールを祝ってもらった。
きっと、彼の謙虚で誠実な性格、そして魅力溢れるプレースタイルが、知らず知らずの内に人を惹きつけているんだと思う。
初ゴール、少し時間はかかったかもしれない。
けれど、ここから積み上げていける、始まりの一発になった。
一つずつ積み上げて、一緒に喜んで、一緒に大きくなろう。
どんな時でも応援したい。
彼がもっともっと「愛される選手」になるところを見ていたい。
『左足振ったら入る』
きっと大丈夫。
彼の左足が、希望と喜びを連れてきてくれる。
そう信じようと思った。
※後日追記
この記事が浮田健誠選手ご本人からリアクション頂けました。
こうやって心の底から応援したい選手に出会えて、本当に幸せです。