泡坂妻夫『生者と死者』
袋とじのまま読むと15ページ弱の短編で、袋とじを切って読むと200ページ程の長編に変わる、まさに空前絶後、唯一無二のキテレツ小説。
短編は自然と長編に溶け込み、両者の内容には全く矛盾がないとかビビる。
しかも短編と長編で登場人物の性別が入れ替わるし、さらに驚いたのは、筆者のあとがきまで本編に食い込んでくるというトリプルアクセル以上の高難度。
元のアイデアは狩久(かりきゅう)という大正生まれの作家によるものらしいが、実に7年の時を経てそれを形にした筆者の力量、忍耐力には舌を巻きますな。
そんな本作のメインストーリーは、主人公である酩探偵ヨギ・ガンジーが、記憶を失った超能力少女の秘密に迫るサスペンス・コメディ(シリーズ3作目)。
※短編はガンジーすら出てこない全く別の内容
登場人物はガンジーを筆頭にみんなどこか抜けてんだよね。そんな彼らのすっとぼけたやり取り、さりげないギャグの応酬がジワジワ笑える。
ちなみに筆者の泡坂妻夫氏は本名を厚川昌男と言い、既にお気付きの方もいると思いますが、ユニークな筆名はもちろん本名のアナグラムであります。
泡坂氏はマジシャンとしても著名で、彼の真骨頂とも言える巧妙なトリックやマジックのアイデアが、本作にはふんだんに盛り込まれておりますよ。
蛇足になりますが、自分これを中古で買ったんよね。でも袋とじは切られてなかった。短編だけ読んで売った人、マジ損してるから!笑。
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