『ナイフをひねれば』
私立探偵ダニエル・ホーソーンからの依頼を受けた作家のアンソニー・ホロヴィッツは、渋々ではあったものの彼との契約を履行し、ホーソーンにまつわる三冊の実録小説を書き上げた。
そんなホロヴィッツに、またしてもホーソーンから執筆の打診。
が、ホロヴィッツはあっさりと断りを入れる。
いまだ心を開かないホーソーンに対する不信感は拭い切れてないし、三度に渡る同行取材中には危険な目にも遭い、二度も病院に搬送された。もうウンザリだった。
そんな中、ホロヴィッツが脚本を手掛けた舞台『マインドゲーム』を酷評した劇評家が、何者かに刺殺された。
凶器から検出されたのはホロヴィッツの指紋。遺体には彼の髪の毛も付着していた。殺害の動機も十分だ。
すぐに警察からマークされたホロヴィッツは、もはやあの男に頼る他なかった。
果たしてホーソーンは、ホロヴィッツが逮捕されるよりも早く、真犯人を見つけ出す事が出来るのか...。
つーコトで、〈ホーソーン×ホロヴィッツ〉シリーズの第四段。
もうホントに毎回面白い。イチイチ最高を更新してくるのよねぇ。今一番読んでて楽しいヤツ。
誰が犯人なんだろう?って結構ガチで推理しながら読むんだけど、一度も当たった試しがない。
フラグとミスリードの数がエグいから、当然ワタシのような単細胞生物に当てられるハズもなく。一体どんな脳みそを授かったら、こんな小説を書けるようになるんだろう。
特に本作は今まで以上に登場人物の思惑や感情が交錯し、そこに過去の出来事と、誰も意図しなかった偶然が複雑に絡み合ってくるので、本当に最後の最後まで全く犯人の見当がつかなかった。
が、どれだけ逆境に立たされようとも、1mmたりとも動じることなく、一つ一つの謎を丁寧かつ大胆に紐解いていくホーソーン。
俺たちに出来ないことを平然とやってのける。
そこにシビれる、憧れるゥ!
で、個人的にこのシリーズ最大の肝は、やはりホーソーンとホロヴィッツの人間関係だと思っていて。
警察に追われているホロヴィッツは藁をもすがる想いでホーソーンの家を訪ね、「一晩でいいから泊めてくれ!」と懇願するんだけど、今度は逆にあっさり断られるんよね。
しかもホーソーンはインターホン越しに「ずいぶんご機嫌斜めだな」と、緊張感のカケラもなく言い放つ(笑)。
その二人の感情のコントラストもメチャクチャ笑えるし(全編を通じてそんな温度感)、何より自虐ネタ満載で読者を楽しませようとする作家は信用できる。
そして既に三件もの殺人事件を一緒に解決してきてるのに(ホロヴィッツはほとんど役に立ってないが)、なかなか縮まらない二人の距離、定まらない関係性。
でもきっとこれはホーソーンの過去が影響してて。彼は何らかの不幸により、あえてそういう付き合い方を自分に強いてるような気がするんだよな。
それでも非常にゆっくりではあるが、少しずつ顔を覗かせるホーソーンの人間性と過去。
その全貌が明かされるまで、あと六作。
ってあと六作も読めるのかぁ。
マジで楽しみだなぁ。