吉田五十八 No.1
数寄屋建築の世界では、吉田五十八(よしだいそや)という人は、とても重要な人物です。
簡単に言えば、現代数寄屋の形を作り出した、昭和期の建築家です。
それまでの数寄屋建築は、和室の境は襖や障子でくぎられ、欄間などが鴨居上に設けられる形が主流でした。
障子も決まった寸法となっており、ある程度決まった形が多かったです。
それらを取り除いたり、決まった形の殻を破り、作り上げたのが、現代数寄屋の形です。
生活基準も、畳からフローリング生活に変わりつつあった時代。
その変化に合わせて、和と洋の混合の数寄屋の形を、作り出したとも言えるかもしれません。
吉田五十八の設計
壁の線を消す
吉田五十八建築の一つの特長としては、とにかく家に対する様々な線を消していったという事です。
ただ消すというより、余分な線を無くし、生きる線を作り出すという方が正しいかもしれません。
例として、真壁工法から大壁工法に変えていったという事があります。
和室(数奇屋)=真壁、という考えを変え、大壁にする事で外に出ていた柱、梁、束を全て壁の中に隠し、壁に出る線をまず無くしました。
真壁だと、四隅や決まった間隔毎に柱が出たり、壁が薄い為に、鴨居を支えるための下地として、束が必要で出たりしていました。
それらを取り除いて、床の間周辺がスッキリしたと同時に、床の間周辺のスペースに自由度が増す形となります。
それは床の間に飾る物を、一層引き立てるという役割もあるのです。
左官壁 リシン壁
左官の壁(土壁)は、塗る面積が広くなるほど引っ張られる面積が多くなり、割れが発生しやすいものです。
その為、真壁をなくす事で、左官壁の面が広くなってしまいます。
そこで、吉田五十八先生は、モルタルを使った『リシン壁』を開発したそうです。
土壁に比べて固める壁で、土壁より動きに強いので、広い面をつくりやすくなりました。
今では、リシンかき落としや、吹き付けなど、色々なリシン壁があります。
線をなくす事を目的に、様々な開発、工法を変えていった事。吉田五十八という人は、本当に魅力的な建築を考え、作り出す人です。
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