あみだ湯(石川県珠洲市)
5月半ばに能登から帰って来たが、ようやく筆を執る気になった。車中泊のひと月に渡るボランティアは思いのほかダメージがあったのかもしれない。二市二町で活動したが、大半は珠洲市の銭湯あみだ湯で薪作りなどを行った。あみだ湯を知ったのは3月9日の朝日新聞夕刊の記事。移住者の若者が中心となり銭湯を再開したこと、被災した高校生が手伝っていることなどを知り、何か役に立ちたいと思いボランティアの受入を依頼した。
行ってみて強く感じたことが二つある。一つは銭湯が地域住民の暮らしのターミナルとして大きな役割を担っていたことだ。入浴のほか支援物資やクリーニングの中継所、時には炊き出しの場ともなっていた。そして人が集まると会話が弾み笑顔が広がる。あみだ湯はまさしくコミュニティーの核だった。もう一つはあみだ湯を運営する若者が実に楽しそうにやっていたことだ。あみだ湯は昔懐かしい薪風呂で、薪となる廃材の切断や運搬などは重労働だ。しかし、そこに悲壮感はなく飽くまで楽しんでいるようだった。
奥能登では水道が復旧していない家庭も少なくない。今日もあみだ湯には笑顔の花が咲いていることだろう。「いつもありがとうね」と声をかけてくれていたおじいさんの笑顔が思い出される。
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