参加者同士が学び合い、お互いが成長をサポートするコミュニティを作りたい
私は、2017 年に「外国にルーツを持つ高校生のためのキャリアガイダンス」の実行委員として、東京都立高校の教員とともに活動しました。このガイダンスは、外国からさまざまな事情で来日した高校生が自身の高校卒業の進路を考えるのが目的です。外国にルーツを持つ高校生が、学校の枠を超え集い、同じような体験をした社会人や大学生とともに自分の未来を考える良い機会になりました。
この活動を通じて、若者ひとりひとりと向き合い寄り添いながら、成長を後押しする継続的な活動が必要ではないかと問題意識を持つようになりました。同じく実行委員として参加し、自身も外国にルーツを持つ景山 も、「自分が高校生のとき、進路や将来について相談できる場がなかった。外国にルーツを持つ若者が集い、ともに学び合い成長するコミュニティを作りたい」という想いがありました。
そこで、外国ルーツの若者の成長を伴走する活動を開始したのが、glolab のはじまりです。glolabが目指すのは、「参加者同士が学び合い、お互いが成長をサポートするコミュニティ」です。そのためには、コミュニティに参加した若者が自ら考え行動を起こすことが大事です。様々な試行錯誤を経て、「外国ルーツの社会人と大学生が後輩である高校生をサポートする現場」をつくることからスタートしました。
今回は、その現場から、外国ルーツの大学生が秘めた力を持っていることを感じた事例を紹介します。
2019 年 12 月 17 日に「外国につながる高校生のキャリアガイダンス」(東京都国際教育研究協議会との共催)が開催されました。メインゲストとして矢野ディビッド氏(ミュージシャン、ナレーター、司会、一般社団法人Enije代表、明星大学客員講師)が講演を行い、その後に高校生がグループでディスカッションを行いました。ここに、glolabに参画した大学生3名(A、B、C)がファシリティターとして参加しました。
大学生らは、高校生が意見を引き出しやすい雰囲気を作ったり、意見をまとめたり、率先して高校生のサポートをしました。大学生 A は、同じ国のルーツを持ち大学受験を目指している高校生から、進学相談をされ、熱心にアドバイスをしました。大学生 C は、同じアフリカ大陸にルーツを持つ若者として、日本人が持つアフリカのイメージやあまりに日本の若者が無知であることといった自らの経験に基づく考察を筋道立てて話しました。
さらに、グループディスカッションの後、大学生側から「高校生に自分の体験を話し高校生の悩みを聞く会を開きたい」という提案がありました。そこには、責任感や使命感が感じられました。私たち大人が提案した場合を除き、自ら「やってみたい」という意思表示があったのは初めてでしたので、とても嬉しくなりました。
そしてこのとき、外国ルーツの大学生に「場」を与えさえすれば、その現場で今持っている最大限の力を発揮するのだと実感しました。そこで発揮された、「問題を発見する」、「コミュニケーションを取って相手を動かす」力は、彼ら・彼女らが、母国と異なる環境・文化の中で友人を作ったり、不慣れな日本語で進路・受験情報を調べて自ら判断してきた経験から培われたものだと思います。
今後も、このような「場」をもっと増やしたいと思っています。外国ルーツの若者が持つ力や成長可能性が、glolabのコミュニティで生まれたプロジェクトなどを通じて社会に提供され、認知されることを目指して、「参加者同士が学び合い、お互いが成長をサポートするコミュニティ」をつくっていきたいと思います。
柴山 智帆
愛知県生まれ。日系ブラジル人集住地区で不就学の子どもたちに出会い、外国ルーツの子どもたちの存在を知る。半導体メーカーの会社員を経て、外国ルーツの子どもたちの高校進学支援NPOに転職。その後、日本語講師となり、難民支援団体にて進学相談、日本語教育相談員に従事。趣味はサルサと音楽。