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パン職人の修造21 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

「あの〜、おじさんはここのオーナーの人ですか?」

「あー隣の子だね?そうだよ」

「このあんぱん、すごく美味しかったです。どんな所に拘ってるんですか?」

「これはね十勝産の小豆から作ってる極上餡(あん)なんだよ。うちのあんパンはね、豆本来の甘味を存分に堪能できる餡が包んであるんだ。豆の選別は重要だし、渋きりで渋をよく取ったり、味がさっぱりとしてキレがいい様にザラメを使ったり。生地は国産小麦に米粉を少し配合して柔らかさを出してあるんだ。全部の工程に拘ってこのあんぱんができているんだよ」

「それにこれ、そんなに大きくないのにずっしりしてるだろ?」

「はい」

「薄皮に包んで餡子を堪能できるようにしてるけど、大きかったら食べるの辛いだろ?」

「はい」

「ところが俺はそう思って作ってるけど、みんながみんなそうじゃない。世の中にはあんぱんひとつ取ってみてもそれはそれは沢山種類や作り方があるんだ。その店のシェフの拘りがあるのさ」

「ここに来てるお店はみんなそうやって拘りがあるんですね」

「そうなんだよ。催事は初めてかい?」「はい」

「そのうちこの業界の色んなことを見たり体験したりするようになるよ」

「ありがとうございました」

すごく良い人だったな、それにあんなに真面目にあんぱんだけを作ってるんだ。

僕もこれから色んなパンに挑戦して最後には自分のパン作りを見つけるのかな。

何かわかった感じになって江川が戻ってきたので修造が「どうだった?」と聞いた。

「僕多分ずっとパンを作ると思います。最後の自分のパン作りを自分で見てみたいので」


決心する江川2


「いいね、俺も見てみたいよ」

すると杉本が「最後の自分の自分でってどういう意味ですかあ?」と聞いてきた。

「自分が行き着くパン作りって何かって事だよ杉本」

「気の長い話だなあ」

そう言いながら杉本はずっとカレーパンを揚げ続けた。

意地になって両面を同じ綺麗な揚げ色にするのに集中した。

港に近い公園は時々涼やかな風が吹き、絶えずイベントにお客さんが訪れ続けた。

パンロンドのカレーパンを買った人達は揚げたてのカレーパンをハフハフと言いながらスパイシーな味わいを楽しんでいる。

「衣がカリカリだわ」

「カレーが美味しい」などお客さんが喜んで食べてくれている。

それを見て修造がちょっと嬉しそうに『したり顔』をしている。

催事も終盤に差し掛かり、他の店も売り切れたり品数が減る店が多くなってきた。

「あと少しで売り切れです」と江川が報告してきた。

「頑張ったね」修造がみんなに言った。

杉本が「俺、全部自分一人でちゃんと揚げる事ができました。途中意地になっちゃったけど、楽しかったです。」

「そうか、良かった。達成感あったな!」

「はい!」

「俺達は片付けて車に運んで行こう」

「はーい」

修造と杉本は台車に荷物を乗せて運んでいった。

その時、販売中の藤岡に「おい」と声をかけてきた男達3人が現れた。

横にいた江川は3人を観察した。3人とも同じような170cmぐらいの背丈で黒髪を短くしていてそんなに派手な出立ちではない。どちらかと言えば地味でまあまあダサい。

真ん中の黒いブルゾンの男が話しかけてきた。「藤岡!久しぶりだな。お前が店を辞めてから働いてるパン屋が出てるって言うから見にきたんだよ」

藤岡は黙っていた。

「へぇー!パンロンドって言うんだ!」3人はにやにやしながらのぼりを見て「後で話があるから公園に来いよ!」そう言って去って行った。

「ねえ、何?今の」江川が聞いてきた。

藤岡は一気に表情が暗くなった。

「さっきのは前の職場の同僚だったんですが、俺がみんなより先に色々と仕事を任されるようになって給料も上がった頃からギクシャクし出して、ある時ひと晩真っ暗な倉庫に閉じ込められたんです」


閉じ込められた藤岡


つづく

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