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【CADL】 「本人らしさ」とは何か

「本人らしさ」を尊重し、真摯に向き合うケアのあり方

月刊ケアマネジメント令和7年1月号の新春特集は「本人らしさ」です

「本人らしさ」とは何でしょうか。そして、相談援助職であるケアマネジャーが、この「らしさ」を掴み、それをケアに生かすにはどうすればよいのでしょうか。
ケアマネジメントを通して、各々の角度で、数多くの実践を重ねてきた3名の専門家が語り合い、「本人らしさ」の重要性について改めて問い直しています。

「本人らしさ」とは何か

鼎談者は次の3名
高室しげゆきさん
次世代ケアマネジメント研究会副理事長。ADLやIADLに加え、文化的日常生活活動・行為(CADL)を提唱し、ケアマネジメントの新たな視点を提供。著書は、利用者・家族に伝わる ケアプランの書き方術: ケアの質がぐっと上がる6W5H1R必携!イラストと図解でよくわかるケアマネ実務スタートブックなど多数。
村瀬孝生さん
宅老所「よりあい」の統括所長。利用者の「当たり前の願いや生活」を重視し、実践を続ける。シンクロと自由 (シリーズ ケアをひらく)の著者。
有馬埜節子さん
認知症専門相談員として、多くのケースに対応し、認知症専門デイサービスを運営。

ケア現場での「本人らしさ」の課題

1. ケアマネジメントにおける課題

高室氏は、「ケアプランの作成では、身体的な状態やADLのアセスメントは重視されるが、個人の趣味嗜好や生育歴に基づく“本人らしさ”の理解が不足している」と指摘。さらにICT化や効率化が進む中で、ケアプランが画一化し、「利用者本位」との乖離が生じている現状を問題視しています。

2. 「本人らしさ」とは更新され続けるもの

村瀬氏は、「本人らしさ」を生育歴だけで固定せず、今この瞬間の関わりを通じて変化し続けるものだと説明。これに対し、有馬埜氏は「体質や環境、生育歴など複合的な要因が“本人らしさ”を形作る」と強調し、相手の人格に触れることで新たな気づきが生まれると語ります。

3. 本人らしさに向き合う支援者の役割と責任とは

「本人らしさ」に向き合う際に支援者自身の姿勢が影響する点が挙げられます。彼女は、ケアマネジャーが「あるがままの自分」を受け入れることで、利用者との信頼関係を築きやすくなり、利用者の背景やこだわりに気づく余裕が生まれると指摘。

「本人らしさ」を支援する方法

1. CADLの提案

高室氏は、文化的日常生活活動(CADL)を支援の核に据えることを提唱。日常の中で本人の文化的背景や習慣に注目し、個別性の高いケアを実現する手法です。

2. 対話を通じたアプローチ

ケアマネジャーが「本人らしさ」をキャッチするには、ご本人との対話を丁寧に重ねる必要があります。
村瀬氏は、「家族やデイサービススタッフなど多様な視点を取り入れることで、本人の特性を浮き彫りにできる」と述べ、連携の重要性を指摘しています。

具体例から学ぶ「本人らしさ」の捉え方

1. 認知症の方のケース

ある認知症の方が、背中に何もないのに「この子を下ろして!」と言い続けていたエピソードでは、その背景に戦時中のトラウマや孤独感が隠されていました。人形を背負わせるという工夫で落ち着きを取り戻すことができたとのことです。

2. 「マジな嘘」で寄り添う支援

村瀬氏は、利用者に対して「学会がありますよ」と声をかけてデイサービスに誘うエピソードを紹介します。「利用者にとってのリアリティに共感することで、より自然な形で支援が可能になる」と述べています。

ケアマネジャーへのメッセージ 
悔いのないケアのために


村瀬氏の提案
ケアマネジャーは孤立しやすい立場だからこそ、気軽に相談できる場やネットワークを構築することが大切です。
有馬埜氏の提案
まず自分を認識し、「あるがまま」を大切にすること。悔いのない意思決定を支援するためには、自分自身の選択にも誠実であるべきだと強調します。

まとめ

「本人らしさ」を掴む支援には、観察力や共感力、柔軟性が欠かせません。また、支援者自身の人生を大切にする姿勢が、利用者との信頼関係を築く鍵となります。本鼎談は、ケアマネジメントにおける「本人らしさ」を深く考える貴重な示唆を与えてくれました。


• CADLについて: ケアタウン総合研究所
• 意欲動機づけシートについて: こちらからダウンロード


感想

この記事から、「本人らしさ」を尊重する支援の重要性と課題に気づかされます。「本人らしさ」は固定された特性ではなく、時間や関係性の中で更新され続けるものです。そのため、支援者はCADLを基盤に、日常生活に自然と現れる文化的な行為に注目し、多面的な理解を深めることが求められます。一方で、支援現場では「できていないこと」に目が向きがちですが、「できていること」を引き出し、自己肯定感を高める支援が欠かせません。

また、支援者自身の姿勢も重要です。「あるがままの自分」を受け入れることで、利用者の背景やこだわりに気づく余裕が生まれます。さらに、「マジな嘘」という手法は、利用者の価値観に寄り添う柔軟な支援の一例として印象的でした。

「本人らしさを失わない支援」とは、かつての特性を守るだけでなく、支援者との関わりを通じて新しい自分を共に築いていくプロセスそのものです。これは利用者が穏やかに過ごす鍵であり、支援者の在り方が問われる重要な視点だと感じました。


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