北海道中富良野町での有名メロン農家、寺坂農園さんの訪問記事です!
“Seek out innov a tors”
~番外編:中富良野町の寺坂農園 さんの見学~
レポート: 梶山正信
Ⅰ 何故、寺坂農園に訪問したのか?
1.寺坂祐一代表の魅力について
(1)その寺坂代表は、感動野菜産直農家を標榜されて、中富良野町でダイレクトマーケティングによりメロンを中心に農業経営をされていることを、私自身がFBで10 年近く前から知っていたので、私が是非訪問したい農家としてリストアップしていました。
勿論、何故知ったかと言えば、ダイレクトマーケティングで毎日のようにそのメロンの栽培やそれこそ季節ごとにやってくる短期長期のアルバイトさんの様子を一挙手一投足でFB投稿。また、専務である奥様と和気藹々と他の農家の商品を試食されているのを見ていて、本当に凄いと感じていたからです。
(2)普通、農家は勿論生産者ですから、その様子を撮影して一般の方にそれをわざわざ見せる動画を発信する時間がもったいない、そんなことより生産に集中しようと考える経営者が殆どです。
また、本当にバリューチェーンでの出口戦略を重視するなら、いちいちそんな動画を撮影する暇があったら、適時を逃さないよう目の前の自分の商品を売ることに注力するはずだからです。
そして、私がもっと驚いて動画を見ていた理由は自分の秘伝というか、農家は良く自分の土づくり、たい肥の製造は普通誰にも言わないのですが、寺坂代表はその技術も包み隠さず、他の農家に真似されても構わないと言わんばかりに動画で公開していて、本当に度量がある農家だ!と思っていたからです。
(3)ではこの投稿記事冒頭に、お馴染みの寺坂代表の看板前での、ご自分が取られた訪問者紹介写真を、私が確かに現場に伺ったという証拠の意味も込めて載せさせていただきました(寺坂代表、どうも撮影ありがとうございます!)。
(4)それでは、当日の見学ですが、2023年9月27日午後に新千歳空港からレンタカーを運転して往復5時間をかけて寺坂農園に訪問し、約2時間以上、二人で農業経営について語り合い、コミュニケーションを高め、初めてお会いしたとは思えないほどの対話ができました。このことから、本企画でのイノベーターとして個人的にはなりますが、投稿記事として以下に簡単に纏めたところです。
是非、寺坂代表の真の姿を、どれだけ苦労人として努力して、これまでの苦難と努力を乗り越えるための農業経営をされてきたのか、そしてこれからもチャレンジしていくのかについて、その意気込みもお聞きしました。
では、以下に私の勝手な私見にはなりますが、感動野菜産直農家の寺坂代表に負けないように書きましたので、そんな度量がある寺崎代表について、私から寺坂流ダイレクトマーケティングの根源を、ここで記述させて頂きます。
2.寺坂農園の経営規模等について
(1)寺崎農園自体は、法人化されて約10年ということですが、当初はメロンの生産農家として、親の代から家族経営この場所で農業をやってきたということでした。
法人化した現在は、ご自身と奥様の二人の経営者の他に、3名の常勤雇用の社員とピーク時は46人(現在は、全て日本人)のアルバイトの方が入れ替わり立ち代わりでメロン、アスパラガス、ミニトマト、トウモロコシ、人参の生産に参加されていています。
(2)勿論、主体であるメロン、アスパラガス、ミニトマトは6m×100mのとても超ロングなビニールハウス33棟(17棟+16棟)で生産されていますが、私も内地ではこんな長い1反のハウスなど見たことないので、思わず写真に撮りましたが、本当に入り口から端は良く見えない!みたいな長さでした。
私も、メロンの収穫はすでに終了していましたが、現在も栽培されていたミニトマト「ほれまる」を茎から直接食べさせていただきました。寺坂代表が日頃からFBで、こんな甘いミニトマトはない!と豪語されているように、本当に甘くて、これがトマトなのか!と思うぐらいの驚きの甘さでした。
(3)それでは、そろそろ私の本番である具体的な財務内容に入りますが、売上は、①直売2,500万円、②通販1.5億円、③6次化(ジュース生産)1,000万円の計約1.8億円であり、その半分近くをメロンの売上が占めているということでした。
ただ、25年前に始めた直売から、カタログ販売へ、そして現在はダイレクトマーケティングに本格的に戦略を切り替えて19年程だということですが、その通販で売上の8割以上であり、社員3名もその業務に当たる方ということですから、如何に今の寺坂農園の農業経営が通販で成り立っているかということかと思います。
(4)ちょっと余談にはなりますが、③6次化(ジュース生産)1,000万円については、始めてから10年程でやっと黒字化出来たということでしたが、当初から6次化かなり難しいだろうと感じていて、農水省の1/2のハード事業の補助金も受けず、この中富良野町の200万円の補助金と自己資金併せて650万円で整備したということでした。
理由をお聞きしたところ、農水省のハード事業で整備するとこの何倍もの投資が必要になるので、それではいつ黒字化できるか分からないということから使わなかったのが正解だったと・・・、ちょっと元農水省職員の私には耳が痛いお話でした(苦笑)。
(5)それと、理由は後でまた詳しく書きますが、今後はこれ以上の大きな伸びでの売上拡大は目指さず、現に今年のメロン生産は作業を無理しすぎないように生産量をわざと落としたというように、これからは無理のない適正な経営規模で、売上より利益重視の経営を目指すとの意向でした。
実際、この通販メインにする前の直売でのメロンの単を、以前は富良野メロンとして2千円/個、⇒寺坂メロンのブランドとして4千円/個とほぼ倍に上げているので、それでもこの直売所に遠くから直接買いに来て、ほぼ9割の来客者がメロンを買っていくという高倍率なので、これからも売上拡大ではなく、単価を上げて利益重視の経営を目指すとのことでした。
3.寺坂代表のダイレクトマーケティングについて
(1)先に、通販で今の売上の8割以上、1.5億円を稼ぎ出すと書きましたが、そもそもその考え方は、ランチェスター戦略、つまり弱者の戦略から来ており、寺坂代表もやっぱり現代の経営論を踏まえてここまで経営を拡大されてきたことが、MBAの私にもよく理解できました。
そして、FBで見ている方が多いと思いますが、寺坂代表と奥様の他の生産者の商品の試食については、私から「あれは物々交換、それとも買っているのですか?」とお聞きしたところ、実はあれは、他の線生産者が、自分の商品をPRするために、訴求力のある寺坂代表に送ってくるものだと分かりました(笑)。
(2)ですから、中にはキャベツなど、どうやって食べるの?こっちで料理するの?見たいな商品まで送ってくると苦笑いされていました。
でも、これってそのような訴求力がない者、そして生産に時間を使いたい、あまりそのような動画のスキルがない生産者には、寺坂代表の貴重な時間を使って自分の商品の宣伝が出来るのですから、経営者の時給が1万円として、10時間で動画を創ればその費用は10万円ですが、普通の生産者がその価値を生み出すのはとても難しいでしょうから、本当に上手いコスパだと感心したところです。
(3)最初から話が横道にそれましたが、本題に入って、何故、寺坂代表が感動野菜産直農家を標榜して、自ら撮影、登場したユーチューブで動画を発信しているかと言えば、①農家のインフルエンサーとして農業をPR出来る、②「働いてどうだった?!」動画は、働き手のアルバイトの人を登場させることで、人材の確保になる(実際ここに来る人は殆どこの動画を見ている)、③そして勿論、この動画を見てこの辺鄙な寺坂農園まで来て、9割以上の人が買っていくダイレクトマーケティングのためにやっているとありました。
今後は単価を上げていく、更に寺坂農園の商品を更に魅力のあるものに見せるためにも、私だけでなく、3人の社員もSNSで広く感動野菜産直農家としてこの寺坂農園をPRしていくと言われていました。
Ⅱ 寺坂代表のこれからの目標について
1.既に、もう目標は全て達成した!
(1)寺坂農園で売上が1億円を超えた時、寺坂農園の究極の目的は「従業員の幸せ!」としたとありました。そのためには、①自身の栽培技術をもっと上げたい、②土づくりを極めたい、③そして、従業員の待遇改善として賞与で6ヶ月分を渡せる利益を上げることが目標だと、寺坂代表は私に明言されました。
この中富良野地域のそもそもの給与水準が都会と比べたら高くないので、ここに勤めてくれている社員の働きに見合う、ここで働いて幸せに思ってくれる給与を渡すことが自分のモチベーションだと言われていて、本当に素晴らしい!と感じました。
(2)実は、その要因の基となる修羅場をいくつも経験されていて、知っている方も多いと思いますが、メロンハウスの中に農薬をまかれてハウスが全滅して経営が危機的な状況に陥ったり、とても優秀な人材を雇用したら、その人が他の社員を巻き込んで会社を乗っ取られそうになったりしたこともあると吐露されていました。
実は、このようなケースはMBAの授業では、当たり前にケースとして出てきますので、それを防ぐための人材マネジメントつまりHRMやリスクマネジメントを学びますが、さすがに農業経営ではそのようなことを学ぶタイミングは中々無いでしょうから、それを経験として実際に乗り越えられてきた寺坂代表は、本当に大変だったと想像します。
2.新たなチャレンジ、「農業を始めたい人の学校」!
(1)でも、その経験も踏まえて、昨年から何人かの農業関係のレジェンドの方と一緒に次世代の農業者を育成するためのオンラインの農業を始めたい人の学校を開始されており、第1期の50人に加え、今年の第22期も既にその定員が一杯になるほどの盛況だということから、本当に今からの新規就農者等に頼りにされる人間味あふれる寺坂代表だと、私も今回リアルに伺って確信できました。
(2)そして、最後に寺坂代表の目標は全て達成したかもしれませんが、新たな目標として、孤立無援となりメンタルをやられて農業から離れてしまう若い次世代の農業者のために、自分の心理カウンセラーとしてしてのスキルとこれまでの農業経営での失敗の経験を生かした、「農業心理カウンセラー」という新しいステージを切り開きたいと言われたので、私もそれが出来るのは今の寺坂代表しかいません!と強く太鼓判を押して、今回の見学を終えたところです。
Ⅲ あとがき
◼今回は、Seek out innovatorsの番外編として、かねてより訪問させていただきたかった、北海道中富良野町でダイレクトマーケティングの農業界のカリスマと呼ばれる寺坂農園を訪問させていただきました。
本当は、このコロナがなければもっと早くお邪魔したかったのですが、リアルでお伺いするのが非常に難しい3年間があっという間に過ぎてしまいましたが、私もこの3年間でMBAとなり、農水省を早期退職して、今、行政書士をメインに農業と関わらせていただいています。これもまた、運命であり、チャンスだと自分自身に矢を向けて捉えたいと思います。
◼これまでに書いたように、寺坂農園の究極の目的は「従業員の幸せ!」としたと寺坂代表からありましたので、現在、アルバイトを含めた全従業員での山登りやキャンプ、そして富良野の町の有名店のテイクアウト弁当を皆で食べ、気に入ったらその店に全員で行くような全従業員一体となった福利厚生で、組織のモチベーション、そして和を醸成しているとありました。
既に無理に売上拡大は目指さないと心に決められていますし、究極の目的である「従業員の幸せ!」のために、そしてこの中富良野町の農業の発展、そして日本の農業のためにこれから、新たな「農業心理カウンセラー」として活躍されるであろう、感動野菜産直農家である寺坂農園の代表として、専務の奥様と共に益々の商品の試食(笑)とご活躍を期待しております!
◼今回は日帰りとして往復5時間をレンタカーでお伺いしましたが、寺坂代表から、え、泊まらないんですか!富良野に泊まらないで日帰りする人は居ませんよ!と言われたので、次回は泊まって一緒に一献傾けることをお約束して、寺坂農園の入口で冒頭の写真を撮ってから帰路につきました。
このことから、福岡県出身でちょっと雪は苦手なので、次のタイミングは雪のない来年春過ぎになるかもしれませんが、中富良野町にまたお邪魔したいと思います。
最後に、寺坂代表には、何時も言っていますように「時間は命」ですから、その時間の使い方で自分生き方が決まる貴重な2時間を私のために使っていただきましたことに、この場を借りまして深くお礼を申し上げます。
梶山正信
一般社団法人フードロスゼロシステムズ代表理事(行政書士)
筆者プロフィール
1961年生まれ
2021年まで農林水産省に勤め、現在は一般社団法人フードロスゼロシステムズ代表理事、現在は「特定行政書士」として活躍中
2023年からは、早稲田大学招聘研究員として、カーボンニュートラル、地域活性化等を学んでいる。
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