専門性に対する考察
ヘリコバクターピロリの除菌による胃癌一次予防を推進するクラウドファンディングを目にして、今まで別々に考えていたことが繋がったような気がしたので、以下にまとめておく。
1点目は、専門性というのは1つしか身につかないということだ。
昔『MD×〇〇で医療を変える』みたいなキャリアにすごく惹かれていた時期があった。〇〇というのはMBAとかコンサルとか、医療とは関係が薄い分野のことなのだが。例えば、医療も経営もわかっていて医療現場の問題解決ができます、とかドヤ顔で言われたらカッコイイじゃないか。
しかし、そうした元医者達が医学的に微妙なことを本に書いたり、微妙な事業をやってたりするのを見て(※ ほとんどの方はちゃんとやっている。あくまでも一部)、そう話がうまくいくわけじゃないなぁと思い直した。何でこうなるのだろうと考えていたのだが、現時点での仮説は、その業界の専門性がないと適切な問題設定ができないからだと考えている(ついでに言うと、問題解決スキルに汎用性があるというのは幻想だと思う)。専門性を身につけるということは、何かを数年経験したぐらいで達成できるものじゃない。ましてや2つ以上の専門性を持とうとするなんて、あなたが天才なら話は別だが。凡人は選択と集中が大事なのだと思う。医療なら医療、経営なら経営。
だからキャリアチェンジをする際には、前の業界でもっていた専門知識・技術を振りかざすのは控えたほうがよいと思う。実際には役立つこともあるのだろうけど、過去の経験を過信していると大きな過ちを犯すと思う。僕も今後は臨床から距離を置くことになりそうなので、気をつけないと。
上記を前提とすると、2点目、誰と組むかが重要になると思う。
何かを成し遂げるには、異なる専門性をもった人材がチームを形成する必要がある。いわゆる他職種連携なんかも、こうした側面があるのだけれど。よいチームを作るにはよい人材を集めなければいけないのだが、とても難しい。特に自分の専門領域とは異なる業界の人材を探す場合、誰が正しいことを言っているのかよくわからないことが多い。例えば、僕には日銀のマイナス金利政策がよいことなのか否なのか判断できない。いろんなエコノミストの様々な意見を聞いても、誰が正しいのかわからない。だから組んでみたら地雷だった、という可能性も十分にあると思うのだ。
今回のクラウドファンディングのメンバーには医師も数名いらっしゃるようだ。憶測なので間違っているかもしれないが、恐らく彼らは「ヘリコバクターピロリを除菌すれば胃癌は減らせる」と信じておられる方々なのではないだろうか?これに協力した非医療者も、ピロリ除菌が医学的にファジーな問題であることは知らないのではなかろうか?まぁ、憶測でしかないですけど。
誰かと組んで、その人の考え方にバイアスがあると、問題設定を誤ってしまう。いくら優れた解決策を実行できても、そもそも誤った問題を解いていては意味がない。専門家がほしいけど、誰が正しい専門家なのかわからない…。じゃあどうすればいいのかと突っ込まれると答えに窮するが、人を見る目を養わないといけないなぁと思う、今日この頃。