GPW14とは何か

以前執筆したこちらの記事だが、なぜか定期的に読まれているようだ。確かにWHOの総合事業計画(General Programme of Work; GPW)について日本語で解説した記事は少ないが、そんなにGPWに興味がある日本人がいるのだろうか?

2024年5月の世界保健総会(World Health Assembly; WHA)で、GPW13の後継となるGPW14が採択された。これだけGPW13に関する記事が読まれたのだから、GPW14の解説記事も需要がありそうだ。ということで本稿ではGPW14の概要を解説する。


GPW14の読み方

まずGPW14の構成だがパート1~4に別れている。パート1ではグローバルヘルスの諸問題について「WHOからの視点」で論じられている。興味深い内容ではあるのだが、そうした諸問題についてWHOがどう取り組むかはパート2~に書かれているので、英語が苦手 or 時間がない方は読み飛ばしてよいだろう。本稿でもパート1の説明は割愛する。パート2が最も重要なので、しっかり読み込んでもらいたい。

GPW14の期間

GPWは通常5ヵ年計画なのだが、変則的にGPW14は2025~2028の4年間をカバーしている。これはGPW13の期間を1年間伸ばしたことによる。2019年末からの新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、GPW13の実行 & GPW14の作成が遅れたためである。

Strategic objectives

個人的な意見で恐縮だが、GPW13と14を比較すると大枠では大差ないと考えている。

確かにGPW13では triple billion targets という3つの大きな目標があった一方で、GPW14では6つの strategic objectives に増えている。しかしよく読んでみると、GPW14における最初の2つの strategic objectives がGPW13の healthier population に、真ん中の2つの objectives がUHCに、最後の2つのobjectives が health emegencies に対応していることが分かる。

強いて言えば triple billion targets が6つの strategic objectives に細分化されたことで、今後4年間にWHOが注力する重点分野が浮かび上がっている。特に以下の2分野は強調されているようだ。

  • 気候変動と健康

  • プライマリー・ヘルス・ケア (PHC)

気候変動と健康については、残念ながら現状WHOの中ではメインストリームではない。しかし気候変動対策は保健医療を含む全産業の責任である点を踏まえ、WHOとしても取り組みを強化せざるを得ない(まぁ予算も人材も少ないのだが)。WHOが何をするかの詳細は、以下の文章を読むのがよい。

またPHCについては、2018年のアスタナ宣言以降に徐々に盛り上がりを見せている?PHC再興ムーブメントの影響がある。PHCを強化することはUHCを達成する上で効率的な手段であり、保健医療へのリソース配分が限られる中で、よりPHCの重要性が増している。詳細は以下の文章を読むべし。

GPW14 results framework

これは詳細が決まり次第発表されるということなので、続報を待ちたい。

Corporate outcomes

パート3と4では、WHOが上記 objectives を達成するためにどんなアプローチで取り組むか (= how の部分) が論じられており、以下の4つの corporate outcomes が設定されている。

  1. リーダシップの強化

  2. 質が高くタイムリーな規範的・技術的業務

  3. 各国の固有事情を考慮した国支援

  4. 財政の持続性&効率的な(WHO事務局の)運営

Outcomes 1~3 はGPW13の頃から言われてきたことであり、正直、代わり映えしない。本稿で改めて詳しく説明するのは控える。

4つ目の corporate outcome だが、WHO事務局の機能強化のためにGPW14の承認前からテドロス事務局長が取り組んできた組織改革が盛り込まれている(なのでWHO内部にいた人間からすると真新しい情報は少ない)。例えば sustinable financing という、WHOの flexible funding を増やす試み、core predictable contry presence (CPCP) という脆弱または紛争影響国を中心に(その限りではないが)国事務所の人員を増やそうという試み、スタッフ・モビリティ等の新しい人事制度、等が含まれる。

総評

GPW14は13の延長線上にあり、突飛なアイデアは含まれていない。しかし気候変動などのグローバル・アジェンダは反映されている。またテドロス事務局長が彼の1期目の時からやりたかった改革(スタッフ・モビリティ等)が改めて言及されており真新しさはないが、WHOという巨大官僚組織を改革するには5年間は短すぎるのかもしれない。

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