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#04 こんにちは爬虫類脳

おさらい

前回の「トカゲの世界観」では、爬虫類脳:直感レイヤーではすべてのものを良いか悪いか、もしくはその間か価値判断していること、そして進化の過程で食べ物・暖かさ・保護を与えてくれた状況や物を私たちは理屈抜きに好むことを確認しました。

もう一度リストに軽く目を通して記憶を新たにしたら、早速写真を見ていきましょう!

ポジティブ・リスト
暖かく適度に明るく照らされている場所
温暖な気候
甘い味や匂い
彩度の高い(鮮やかな)色
心地よい音
シンプルなメロディーやリズム
調和のとれた音や音楽
優しい肌触り
微笑んでいる顔
リズミカルなビート
見た目が魅力的な人
左右対称なもの
丸っこいなめらかなもの
官能的な感覚や音や形
ネガティブ・リスト
高さ
予想外の突然な音や眩しい光
迫りくる物体
極度の熱さや冷たさ
暗闇
極度に明るい光
大音響
何もない広大な平地(砂漠)
鬱蒼とした地帯(ジャングル・森)
混雑した場所
腐敗臭
腐りかけの食べ物
苦味
尖ったもの
突然のきつい音
軋むような不調和音
不恰好な肉体
ヘビやクモ
排泄物
他人の体液
吐瀉物

Norman, D. A. (2005). Emotional design: Why we love (or hate) everyday things. New York, NY: Basic Books.

爬虫類脳探索の軌跡

ここからは、私自身が自分の爬虫類脳を確かめるために、アルバムをさかのぼって探索した軌跡をご紹介します。

この爬虫類脳の直感レベルは、長い長い進化の過程でゆっくりと形成され、万人が生まれながらに備えている感覚ですので、私の探索の軌跡をたどることで、同時にご自身の直感レベルも確認いただけるはずです。

もちろんどなたにも過去の記憶や思い出もあれば他の2つの脳の絶え間ない介入もあるので、あるいは共感いただけないポイントもあるかもしれません。ですが、この人は一体何を言っているんだ!という強い度合いの反対意見は出ないのではないかと予想します。

14 の事例をご紹介します。では早速見ていきましょう。

天気の境目

(ポジティブ&ネガティブ)

天気の境目

5月のダウンタウン・ポートランドを覆う空。長い長い雨季が明けるこの時期、運よく天気の境目が撮れました。右半分に注目すると、雨が降水雲から筋状に降っているのが見えます。空も街も暗く、今にもシューベルトの『魔王』が流れ出しそうな、悪いことが起こる前兆のような雰囲気です。左半分は雲間から光が差しはじめ、神々しい空模様が広がっています。まるで危険は去った、これから物事は上向きになる!という啓示のようです。

極寒の美

(ネガティブ)

凍りついたマルトノマ滝

凍りついた枝

オレゴンの観光名所マルトノマ滝です。お正月に毎年訪れています。これは極寒だった年の写真です。見てください、しぶきや枝まで凍っています!普段は透明な水滴が、氷点下では一帯を真っ白に染めていて、息を呑むほどの光景でした。初めて見る氷の世界は絶景でしたが感動したのも束の間…あまりの寒さに 5分で音をあげ退散。アイススケートリンクさながらになった道を、滑って尻餅つく人を横目に見ながら暖を求めて車まで一目散に退散しました。

北緯21度のパラダイス

(ポジティブ)

カンクン

一方こちらは北緯 21度、メキシコ南東部カリブ海沿岸カンクン。自然とパラダイスとか理想郷とかいう言葉が口を衝いて出る、絵に描いたような光景です。肌を撫でる心地よい風に、優しく繰り返すシンプルな波の音…どこもかしこも太陽に明るく照らされ、暖かい空気が漂っています。カンクンは世界中から人が集まる人気の観光地。第二の人生の舞台にこのような南国の温暖な気候の土地を選ぶ人も多いですね。

不気味の見本市

(ネガティブ)

ハロウィン2

ハロウィン1

あまりの完成度の高さに思わずシャッターを切ったマンハッタン街角のハロウィン・デコレーションです。ネガティブ・リストのアイテムがうんと入っています。迫りくる巨大なクモ。クモの糸に絡められた、腐敗の一途をたどる上半身。ズラリと並ぶ頭蓋骨。枯れかけのトウモロコシの茎。血の滲むただれた皮膚。半分に切断された肉体。左右非対称な歪んだ魔女の顔に絶叫する眼球も血の気も無い真っ白な顔!それらが雑然と何レイヤーにも重ねられています。これが暗闇で照らし出されたならさぞかし恐ろしいことでしょう…。ハロウィンは万人の感じる「気持ち悪い」がギュッと濃縮された見本市ですね。

花と光と音楽

(ポジティブ)

花と光と音楽1

こちらはダウンタウン・ポートランドの広場に突如として現れたお花畑です。イケアがPRで用意したと思われる色とりどりの花とベンチに誘われて、子供からお年寄りまでたくさん集まってきています。私もつられて立ち寄りちょっと休憩。春の陽気に包まれ、鮮やかな色が心を浮き立たせ、ライブミュージックがそれを後押しする——そんなお昼過ぎのワンシーンでした。両手を挙げて走り回る子や写真を撮るカップルにお弁当を食べるビジネスパーソン。みんな普段より気分が高揚し、たくさんの笑顔が飛び交っていました。

迫りくるギザギザ

(ネガティブ)

尖った枝

ハロウィンのように人工的に作り上げられた気持ち悪さには及びませんが、散歩の途中でギョッ!としたので撮っていた写真です。ギザギザに尖った枝が、意思を持っているかのようにくねりながら迫ってくる様子に、勝手に怯んでしまったのを覚えています。

ハエの昼食

(ネガティブ)

ハエの食事

昼食を楽しんでいるハエ 2頭。正直、あまり凝視したくはありませんが、本日の献立は虫の羽のようです。ハエにとってはまたとないごちそうなのでしょうが、私にとっては避けたい欲求が即座に湧いてくる光景です。(とは言え、なぜか写真はしっかり撮っています。笑)

丸くてツルツル

(ポジティブ)

クラフトショー

クラフトショー2

人は丸っこいなめらかなものが好きだと言います。なるほど写真の二人は、丸っこいツルツルしたカラフルなガラスの破片を楽しげに、しかし真剣に選んでいます。毎年恒例クラフトショーでの光景です。「これはなんに使うものなんですか?」と聞くと「分からないわ。笑」と返ってきました。何を隠そう、私もこれにならい、使い道がよく分からないまま選りすぐりのガラス破片を 5つ買って帰りました。後日談になりますが、窓辺に並べて飾ったり、花瓶と一緒にアレンジしたりと、何かと出番の多いアイテムになりました。

圧倒的なNBA

(ネガティブ)

トレイルブレーザーズ対クリッパーズ1

トレイルブレーザーズ対クリッパーズ2

ポートランド・トレイルブレイザーズとロサンゼルス・クリッパーズの試合です。バスケ好きの友人に誘われ観戦してきました。約2万人を収容するスタジアムはほぼ満席。こんなにたくさんの人が一堂に会しているのを見たのは人生初めてかもしれません。試合もさることながら、私は観衆の数に圧倒されてしまいました!そして圧倒されながらも気付いたことがあります。皆が着席している整然とした状態(1枚目)だとこの人数は高揚感につながりますが、試合終了後に出口付近が混雑(2枚目)してくると、今度は不快指数が高くなるんですね。対するものが多勢だと、個人の力では収拾がつかない感じが不快感の出所なのでしょうか。

動かぬ貝に怯える

(ネガティブ)

大量の貝ズーム

大量の貝

密集つながりで、オレゴンコースト沿いにあるパシフィック・シティのケープキワンダという場所で目にしたこちらをご覧ください。尖った先端を持つ貝やゴツゴツした質感の貝が所狭しとひしめいています。写真からは分かりませんが鼻につく匂いも相まって、実に近づきがたい雰囲気が漂っていました。洞窟のような形状(2枚目)が貝の繁殖に好ましい環境なのか、この一角だけがこんなでした。それもあって、脳が異常!危険!と判断したのか、襲ってこられているわけでもないのに動かぬ貝に並々ならぬ警戒心を抱いてしまいました。

甘い誘惑

(ポジティブ)

キャンディーショップ

キャンディー

カスケード山脈東端に位置するオレゴン州ベンド。ここはアウトドアやスポーツで賑わう都市。観光が最も重要な産業であるこの街には観光客を楽しませるお店やレストランがひしめいています。中でもひときわ賑っていたのがこのキャンディーショップ。流行りの歌と甘い匂いに誘われて覗いてみると、天井から吊り下がる楽しげな丸いペーパークラフトに色鮮やかなパッケージのお出迎え。お菓子となると皆なにかしら一家言あるようで、私のジャケ買いに加え各友人のオススメとを合わせて、思いがけずたくさん買ってしまいました(2枚目)。ちなみにこの中で一番好きだったのはGoo Goo Cluster : グーグークラスターというキャンディーバーでした(写真左下)。

驚くと息が止まる?

(ネガティブ)

金工

縁あって日米合同の金工展に関わらせていただいた際に、金工の制作現場を見学する機会がありました。「鉄は熱いうちに打て」とは聞いたことはあったものの、実際に目にするのは初めてでした。赤く発光する鉄を打つと、飛び散る火花!耳をつんざく大音響の金属音!気付くと私は息を止めて凝視していました。一旦慣れるとそのリズミカルな音に集中して楽しめましたが、保護グラスと防音イヤーマフが必須の激しい現場でした。

たゆたう時の流れ

(ポジティブ)

クラゲ1

鮮やかなオレンジ色と長い触手がドラマティックなこちらのクラゲ、パシフィック・シー・ネットルはオレゴンコースト水族館でも人気のディスプレーです。幻想的にゆったり優雅に動くクラゲの群。たゆたう触手を見ていると、時が経つのも忘れてしまいます。美しいものに接すると心が洗われる気がするのは、その美しさに自分の波長が同期してくるからでしょうか。

迷いのない美しさ

(ポジティブ)

ブーケ

最後は、見るだけで元気がもらえる、ポジティブリストのアイテムがぎっしり詰まったブーケです。まず、ブーケそのものが親しみを感じる丸い形。そしてそれを形作るのは左右対称の彩度の高いピンク・オレンジ・黄色の花々。スパイスに注入されているのは、これまた丸いつるりとした黄緑の実。花びらにそっと触れると官能的な張りのある感触。優しく鼻腔をくすぐるのはほのかに漂うバラの香り。こんなエネルギッシュなブーケは、太陽光の下で撮ると、迷いのない美しさが際立ちますね!

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パターンマッチングによる判断

トータルで 15 の事例、20 枚もの写真をご覧いただきました!お付き合いいただきありがとうございます。

ハエの写真などいささかお見苦しいものをお見せしましたが、これが蝶の食事場面なら、なんら不快感はなかっただろうと考えるとおもしろいですね。

カラフルな蝶が花の蜜を吸っている——額縁にでも入れたくなるような絵です。でも両者(両虫?)とも同じこと、つまりただ食事をしているだけ。別に蝶が人間に愛嬌を振りまいているわけでもハエが嫌がらせをしようとしているわけでもないのです。言ってみれば、私たちのバイアスがかかった反応です。

ですが進化の過程でポジティブに関連付けてられてきた美的性質を蝶や花が持っていて、ハエやその食べ物が持っていない。それ故に私たちの反応がポジティブかネガティブかに分かれてしまう。

良くも悪くも、この直感レベルではパターンマッチングにより判断が行われているのです。

好みへの反映の仕方

爬虫類脳がつかさどるこの直感レベルは、生物学的反応ですので、国境を越えて世界中でほぼ同じ反応が期待できます。そのため、商品開発や改善において、応用が一番簡単という印象を受けがちです。たしかに残りの二つに比べるとそう言えるとしても、この知識はあくまで指針として使うことが鍵となります。

その理由は、直感レベルの反応がそのまま好みに反映されるわけではないからです。言ってみれば、直感レベルの反応が一次反応だとすれば、他の 2つの脳を介した二次反応が最終的な好みの決定には関与してくるからです。

たとえば鮮やかな色を例にとって考えてみましょう。

パキッとした鮮やかな色は、万人がポジティブに反応するため、子供服やおもちゃ、公園の遊具によく使われます。しかしその反動で、大人になると分かりやすい原色は子供っぽく感じ、少しくすんだニュアンスカラーを好むようになったりするものです。かと思えば、大人だってスポーツやエクササイズの場面では、男性も女性も普段は身につけないようなビビッドな色を着たりします。私の友人でジム好きの男性は「僕がワークアウトが好きなのは、人に変な目で見られずに堂々と蛍光色が着られるからだ!」と断言していました。

このことから分かるように、ポジティブリスト・ネガティブリストは、画一的に適用するのではなく微妙な意味合いに注意を払いながら応用することが鍵なのです。

カラフルな遊具・ニュートラルカラーのワードローブ・蛍光色のウィンドブレーカー

あなたの番:直感レイヤー解体

さて、ここまで見てきたなかで、あなたの「好き!」は少し解明されましたか?

最初に思い浮かべたあなたの「好き!」なもの、リストに照らし合わせると何が該当しましたか?

私の場合タオルでしたが、一つ解明しましたよ。

該当項目:優しい肌触り

私が心惹かれた新しいタオル特有のふわふわと柔らかい手触り。これはポジティブ・リストの「優しい肌触り」が当てはまります。どうしてふわふわのやわらかい手触りを、私は好ましいと思うのか?と疑問でしたが、ノーマンの言葉を借りると、それは進化の過程で暖かさと保護を与えてくれたからなんだよ、ということなんですね。

あなたの解体結果、コメント欄でぜひお聞かせください!

次に見ていくレイヤーは私たちが哺乳類やいくつかの脊椎動物から受け継いだ旧哺乳類脳です。群れで生活する動物たちから受け継ぎ、私たちの日々の行動や社会的な交流に大きく関わっているこのレイヤー。ここは直感レイヤーと同様に無意識の領域です。

さて、このレイヤーは、私たちとプロダクトの関係にどのように影響しているのでしょうか?

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この記事は、グローブ・ポーターのオフィシャルサイトで公開した記事の転載です。

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