国賓への礼砲数は国際儀礼上は21発。「41発」は日本外交史上「初」ではないのか?
礼砲41発の意味を報じないメディアの謎
両陛下の国賓としての英国訪問(2024)は、ロングボトム駐日英大使が訪英前の記者会見にて「最上級のおもてなしを用意している」と語った通り、礼砲41発に始まる歓迎式典を受けたが、この事実は、国内メディアでは大変にさらりとしたものだった。
直接的に言えば、「礼砲41発」の意味を丁寧に説明したメディアはどこにもなかったということだ。
礼砲とは、外国の港に入る際、戦う意思はなく平和に敬意を表し、大砲が空であることを示すために15世紀にはじまった行為にルーツを持つが、今日では外交の儀礼的な慣行として、賓客の格式によって発砲数が規定されている。
国賓となる国家元首は、21発。その次点が、19発である。
そう言われただけで、「え?じゃあなんで41発も??」と思いませんか。というか、そう並べられて、はじめて「天皇陛下、すごい……!皇后陛下、すごい……」と、わかるのではかろうか。
岸田・安倍で19発。平成の天皇陛下の外遊も21発が通常
ちなみに、対外的な儀式としての礼砲数はは国際的に統一基準の上に則って行われるため、過去の外交の様子を見ると、面白いことがわかる。
日本と他国の外交の記録
・2024, 岸田首相の訪米。国賓待遇。礼砲19発。
・2015, 安倍首相の訪米。国賓待遇。礼砲19発。
・1994, 平成の天皇皇后両陛下、国賓として訪米。礼砲21発。
・1984, 中曽根首相のインド&パキスタン公式訪問。礼砲19発。
参考までに、他国と他国の外交
・2011, 中国の胡錦濤国家主席の訪米、国賓待遇。21発
・2006, 中国の胡錦濤国家主席の訪米、国賓待遇。21発
今年の岸田首相の訪米時は、「国賓待遇」として歓待されたものの(格式としては、国賓>国賓待遇>公式訪問の順)、日本の首相は厳密には国家元首ではないため19発となったとニュースでは解説されているが、同じく「国賓待遇」と述べられていても21発鳴らすこともあるという点は、ホスト国の心境を示すジェスチャーのようで、面白い。
「数」って、明確で大変にわかりやすいですよね。晩餐会のメニューの豪華さ、に比べて。
最高格式の即位の礼でも、21発
ちなみに、礼砲は海外の賓客・要人を迎え入れる時以外にも、国内の式典でも使われる。
令和の天皇陛下の即位の礼で響いた礼砲の数は、21砲。(平成の即位然り)
安倍元首相の国葬は、19砲。(国葬であるべきであったのかはさておき)
そう、最も格式の高い公的な式典で、その最高位にあたるものが21砲、その時点が19砲であることを鑑みると、「41砲」は、「最高位」というより、異例の、という方が適切なのではないか。
歴代の国賓待遇での首脳会談及び、平成の天皇陛下皇后陛下の外遊も規定通りの21発であったことを考えると、41砲をしてもらえた外交って、日本の外交史上、もしかして初なんじゃないかと思うのですが。
……どうしてこう報道しないのだろう。
安倍も、岸田も、先代天皇陛下夫妻(上皇夫妻)も、令和の天皇陛下と皇后陛下が簡単に飛び越えちゃったのが、くやしいから……???
とか邪推してしまいますね。
Appendix:
違和感の根拠として、歓迎式典に関する五大紙+時事通信社の報道の実績を。
①朝日新聞
「両陛下、英国王夫妻と馬車でパレード 最高位の41発礼砲も」
→唯一タイトルに異次元の礼砲数の記載あり。しかし本文中ではあっさりで、通常の「最高位」は21発であることには言及せず、わかりづらい。
②日経
「天皇皇后両陛下、歓迎式典に出席 英国王夫妻とパレード」
→タイトルにも、本文にも礼砲の数への言及はなし。「礼砲が鳴り響き」って、これだけ……???
③読売新聞
「天皇陛下、チャールズ英国王とともに馬車でバッキンガム宮殿へとパレード…訪英公式行事始まる」
これだけ。
④毎日新聞
「天皇、皇后両陛下が歓迎式典に出席 英王室との交流スタート」
「青空の下」と「礼砲41発」は1文字しか変わらないけれど、どちらが重要な情報なんだろう
⑤東京新聞
「英訪問中の両陛下、歓迎式典に 国王夫妻出迎え」
そりゃ鳴るわ。
⑥時事通信
こういう報道記者は、日本の総理大大臣が外遊に行き、いつか41発の礼砲を鳴らしてもらえると思っているのだろうか?いや、たとえそうでも気づかないのかもしれない。