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子供をグローバル人材に育てるべきか? N62

 グローバル化を背景に産学官をあげてグローバル人材の育成に近年取り組みが目立ってきた。最近一番驚いたのは海外で行なった大学の同窓会で知り合った大学生が「今の学生は大学を卒業するまでに半分くらい1-2年の長期留学を経験してますよ」と言っていたことだった。そして今は留学をする人が増えているので半年とか1年留年して就職が遅れることが一般的になっているとのことだった。私の時代はせいぜい夏休みに2ヶ月語学留学に行けばかなりの海外派とみなされたが今は交換留学をして単位までしっかり取ってくる時代になっているそうだ。  

 こんな話を聞くと国や企業がグローバル人材の育成を考えるよりも自発的に任せた方がうまくいくような気がするが、文部科学省がまとめたグローバル人材の概念は以下の3つの要素とのことだ。 

要素Ⅰ: 語学力・コミュニケーション能力 

要素Ⅱ: 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感 

要素Ⅲ: 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

 要素Ⅱはなんとなく日本人のコンプレックスに見受けられるため置いておいて、要素Ⅲはとても基本的でありながらもハードルをあげた要素だと私は思う。  

 私の世代はグローバル人材というと帰国子女ばかりだった。親が商社マンで英語はNativeだけど日本語が少し苦手(漢字弱い)みたいな人だった。彼ら彼女らは要素Ⅰは完璧だが要素Ⅲは欠落していた。海外で育つとどうしても日本の文化や慣習に馴染みがなくなってしまう。逆に私のように大学や社会人あたりから海外に触れはじめて海外経験を積むと要素Ⅲはしっかりしているものの要素Ⅰが片手落ちになる。しかし前者も後者も同世代で比較すれば稀有な存在ではあるのでそれなりの存在価値はあり、社会には貢献できているのだろう(食うには困らないということは必要とされているという認識という意味で)。  

 しかし今の子供たち(幼児から小学校低学年まで)をグローバル人材に育てることを考えるとちょっと海外経験をさせたところで何の差別化にもならない。むしろ海外経験をさせておかないと見劣りする人材になりかねない。英語はできて当たり前なんだから。  

 近年の英語教育熱は親が英語で苦労をした、あるいは英語ができることで有利な場面があったことの裏返しなんだと思うが、教育ママあるいはパパは子供に英才教育として海外経験を押し付けている。たとえそれは形式的に行われたとしても世代間の価値観とは異なり、子供たちは自分たちの視点(価値観)で海外経験を吸収して育っていることだろう。私は大げさにも日本の子供たちが切り開くグローバル化に期待したいのだ。  

 彼らが決断することは「日本人は日本民族か日本国民か?」、「日本は武力を持たないことを優位性とする理想平和主義になるべきか?武力を持った普通の国になるべきか?」、「日本国の世界の中でのポジショニング」と言ったことになるのだろう。  

 その役割は重い。だから親の世代の僕たちは少なくとも要素Ⅲだけはしっかりと伝えなければならない。  

 「寺と神社の違いはなんだ?」外国人が最初に日本人に問いただす質問の1つだ。案外答えられないらしい。まずは自ら学ぶことだと思う。 

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