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日本でインターンシップは成功するか?(海外のインターンシップの構造から読み解く)

 経団連がインターンシップの推進に一歩踏み出たようだ。嬉しいニュースである。

 さて、私は要請がある度に海外の大学と国内の大学の双方からインターンシップの学生を受け入れてきた。必要があるときは自分から大学にお願いをして学生を募集した。延べの人数で言うと10人くらい。1回につき1-2名程度を雇用した。基本的にはマスター(修士課程)の学生だが、一部学部生も雇用したこともある。そういった経験より現在の日本の制度ではインターンシップがマッチしないと私は考えている。むしろマッチさせるために日本の制度をどう変えるべきかを書いてみたい。

 まず日本(もしくは朝日新聞)はインターンシップを「就業体験」と訳しているがそれは大きな誤りだ。海外では「就業経験」が正しい訳である。私の後輩は厳しい学校よりインターンシップ経験が必須単位として設定させられている。しかも6ヶ月以上海外で行うこととされている。かつ、専攻内容によってはアジアだったり南米でインターンシップをしないといけないらしい。そして日本はインターンシップ制度が存在しないので数少ない卒業生に頼ってくるのだ。だから私はインターンシップ学生の受け入れ経験が豊富になった。何れにせよ、大学は学生に就業経験を求めている。そしてインターン学生はインターンの応募に立派な就業経験としてインターン経験をCVに書いてくる。そして本就職の際にもこの経験がCVに掲載されて採用に左右する。卒業単位と切り離してもとても大事な経験だ。

 そしてこのインターンは採用とは必ずしも直結していない。「経団連がインターンシップ(就業体験)について、採用と結びつけることを解禁するよう、政府に要請していることがわかった」とのことだが、このままだとその会社のインターンシップを体験しないと採用できないと言う仕組みにつながらないか心配だ。「企業側には優秀な学生に採用試験を受けてもらうきっかけになる」とのことだが、人気のない企業には採用試験以前にインターンシップの応募が来ないと思う。インターンが採用プロセスの1つとなるだけで、企業側の人材の見極めリスクを減らす手段にしかならないはずだ。

 またインターンの職務と報酬だ。基本的に海外ではインターンの仕事は一般の社員と同じように割り振られる。ジョブディスクリプションが作られてその職務を遂行しなければいけない。唯一の違いは期間が決められることくらいだ。3ヶ月程度から1年単位で契約をする。ちなみに今の会社で雇っているインターンはもう3年もの期間週2-3日ペースで勤務している。ちなみに給料はジョブグレードの最下級クラスで設定することが多い(経験があまりないので)。しかし経験がある場合はその経験に見合った給与設定をする。MBAの学生でスキルもあった場合はかなりの報酬設定をした。ちなみに物価が恐ろしく高いオーストラリアのメルボルン大学に留学をした日本人学生の月のインターン報酬は70万円ほど得ていたそうだ。

 噂で聞いた話だが日本の会社は仕事を教えてやるのにお金を払う必要はないと言って無償にしたり、インターンのためのプログラムをわざわざ設計して各部門の仕事を紹介して、少しだけ工場のネジを止めてみたりとか、仕事に触れてみて1ヶ月を過ごすインターンを作った会社もあったそうだ。ある意味学生を入社していただくためのお客さん扱いしているところがよくわかる例だ。

 とどのつまり日本の会社はメンバーシップ型なので入社してから仕事のイロハを教える前提になっている。インターンシップは入部届けを出す前の体育会の練習見学のようなものだ。

 一方、海外は大学教育から就業に到るまでが一気通貫で設計されており、ジョブ型ゆえにインターンと採用が必ずしも一致しない。また2年働いたインターンが別の会社を選ぼうとも企業に損失はない(日本の場合はインターン活動自体がコストでしかないはずだ)。少し心が寂しいだけだ(実際に私が経験した経験談)。

 結論としては、メンバーシップ型を辞めてジョブ型になることでインターンの意味が出てくる。そして大学教育も就業経験こそが就職に直結するので長期休暇の間に経験させるインターン応募を企業から得るために卒業生を世界中から探してこそ世界のトップスクールに君臨できるはずだ。東大や早稲田慶応あたりが引っ張って欲しい。 

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