イチローの5分の英語スピーチに見る成功のポイントとは
3月に現役引退したイチロー氏が9月14日、マリナーズに貢献した功労者を称える表彰式で、約5分間の英語スピーチを行った。
通常、通訳を介し日本語で記者の取材などに対応しているイチロー氏なので、非常に稀なことだと言っても良いだろう。
その映像がシアトル・マリナーズのTwitterで見ることができる。
どのようなことを話したかの日本語訳はこちら↓に掲載されている。
このスピーチ、原稿を読みながら、その上、とてもゆっくり、センテンスとセンテンスの間も十分取りながらのもの。
一般的に英語のスピーチは、1分間に120〜150ワード。120ワードだと聞き手にはとてもゆっくり感じると言われている。
では今回のスピーチはどうだったか? どう聞いても120ワード以下だったのではないだろうかと思い、上記リンク先にある日本語訳を元に概算してみると、日本語で1030文字くらい、それを英語に換算すると550ワードくらいなのではないかということが判明。5分くらいのスピーチということは1分に110ワード。
*文章にした場合、日本語文字数の約半分強が英語のワード数と言われている。(例:400文字は、200〜210ワードくらいになる)
このスピーチ、Huffingtonpostの記事タイトルでは「流暢な」と書かれているけれど、実は「流暢」とまではいっていない。わかる人にはわかるが、単語を発音しきれていなかったり言い切れていない部分や、つっかかりながら原稿を読んでいる箇所も結構ある。
しかし上手く、そして十分な準備がされた、イチロー氏に合った、聞き手にとってもわかりやすく、響く英語スピーチだったと言えるのではないだろうか。
広いスタジアムで、英語ネイティブの観客に、そして、そうではない人にもしっかり聞き取れる発音と抑揚(ネイティブレベルということではない)、イチロー氏のことをよく理解した、彼がしゃべりやすいスピーチ原稿の作成、そして重要な単語の発音を意識した練習が十分にされていたはずだ。そして、観客の反応を十分に計算した間の取り方と適度なスピーチの長さだったと言える。
「これはスポーツ選手のスピーチだから、ビジネスパーソンのそれとは違う」と言うことなかれ。スピーチの最も重要なことが何かをどうか思い出して欲しい。それは、聞き手の耳を傾けさせ、堂々と自分が伝えたいメッセージを伝え、それが相手に伝わることだ。
そして、このイチロー氏の行った英語スピーチやプレゼンのレベルへの到達は、努力次第で優秀な日本のビジネスパーソンであれば実現可能。
また、日本語のままだと面白みのない、堅苦しい連絡伝達のようになってしまうスピーチ原稿も、話し手の特徴や個性も踏まえつつ、アメリカ的な背景を加味したスピーチ原稿に昇華することで、英語ネイティブに共感させたり、時にはクスッと笑わせることも可能だ。
現在弊社ではそのコンサルティングとトレーニングを某アメリカ最大の展示会に出展する企業向けにサポートを始めていることもあり、今回のイチロー氏の英語スピーチは、日系企業が忘れてしまったり、おろそかにしてしまいがちな、本来最も重要なことがギュッと凝縮されている好例として、更に詳しい分析をしてみようと思う。