イメージアップは 足元固めから -メディアが見たイメージ戦略 vol 3- :『PRIR』寄稿記事
※本記事は『PRIR』 7月号(2005年)に掲載された日野江都子の寄稿記事からの転載です。
「企業の見極めをする際、その会社で働く人々の足元を見れば良く分かる」という。欧米から来た文化「靴」。海外では、一流といわれる店やホテルに行く際、服装ももちろんのこと、足元をきちんとしていくことで、それなりの客としてのもてなしを受けることができる。また、靴社会、アメリカでは、とにかく靴は常に美しいことが必須とされており、それを証明するように、街中には靴磨きや修理の場所がたくさんあるのだ。
人間の体の一番下で、目立った部分ではない足元が、なぜこれほどに注目を浴びるのだろうか? それは足元が、仕事に対する姿勢と緊張感を顕著に現す部分だからだ。そうなると、企業の看板を背負って人前に出る機会の多いエグゼクティブや広報の方々は、自分の足元により一層気を配らねばならない。直接会話を交わすことのできる比較的近い距離の人だけではなく、メディア露出など、一瞬にして不特定多数の人々にそのイメージが刻み込まれてしまう場合であればなおさらである。
企業の広報用ポートレートや取材の際の写真は、全身が写されている物よりもバストアップや腰から上のものが多く、会見や講演では、着席状態であったり、前に壇があったりして、大抵足元は見えない。しかし「見えないならば、良いだろう」ではすまないのが足元。写真でしか見たことがなく、素晴らしいイメージを抱いていた人と直接会った際に、それまで見ることのなかった足元を初めて目にして、良いイメージが崩壊することがありえるのだ。
日本語には足元にまつわる言葉が幾つかあり、その中でも『足元を見る』はよく使われるものの一つだ。人の弱みを見透かし、つけ込む、という意味で使われるこの言葉の由来は江戸時代にさかのぼる。その時代、旅人たちは徒歩で旅をしていたため、疲れて歩けなくなると駕籠(かご)屋を頼んだ。駕籠屋はお客を物色しており、足袋や草履の汚れ具合から疲れの度合いを見抜き、その弱みにつけ込んで法外な料金を要求したといわれる。
地面に一番近く接触しているため、全身のどの部分よりも汚れやすく、さらに全身を支えている足元は疲労も 集中し、その様子が見えやすい。その人のコンディションが一目瞭然となる部分なのだ。だからこそ、自分の足元には常に気を配り手入れする必要があるし、相手の足元はさまざまなメッセージが示されている。まさに自己管理がものを言う部分だ。
ではここで、靴に関する注意事項の代表例を挙げておこう。①艶・形を保つためのケア ②足の形に合ったものを選ぶ ③正式な靴は、男性は紐靴、女性はシンプルなパンプス。
汚れやすくへたりやすい足元は見えにくいため気を抜きやすい。だからこそ人は見ている。そこを奇麗にきちんと保って足元を固めれば、足元を見られても、足元をすくわれない重厚感と安定感を確実に手にできる。それにより自信をもった余裕の足取りで闊歩(かっぽ)できるのだ。