線を自在に操る神仏画家 藤澤松蹊氏
藤澤松蹊氏が神仏画を描くうえで、最も大切にしているのが「想い」、そしてこだわるのが「線」である。
描く作品の多くは、そのほとんどが神仏画であり、人々が拝む対象物になる。だからこそ、描く仏様や神徳の意味・謂れ(いわれ)を想いながら描くのだという。
観音様を描く際には、様々な厄災・不安・恐怖を取り除き、幸せをお授けになる観音様のご請願を思い描き、眉や髪の生え際など、繊細な線を一本一本描き重ねていくことで、観音様の表情はやわらかくなる。
書き手の想いは、必ず作品に投影する。常に厳粛・穏やかな状態を保ち、心乱れるときは筆を持たないと徹底している。
松蹊が描く線はとても繊細である。
筆と指の接点で脈を感じながら描く線は、0.0数ミリからはじまり、静かにカーブをえがきながら徐々に太く、最後は細く静かに逃げていく。
そんな卓越した技の繰り返しで、産毛から太く濃くなる毛のかたまりを表現する。
描いているときは息をとめて、時が止まるぐらいの静寂がつづくのだそうだ。