#9 事業者が知っておくべき「遺伝子情報を扱うリスク」
こんにちは、株式会社グリスタの斎藤です。
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遺伝子検査を扱うジムやエステサロン、スポーツ関連サービスなどが増えてきています。ですが多くの場合、リスクを理解されないまま遺伝子情報を取り扱っているであろうケースが散見されます。
今回は遺伝子検査を扱う際に、リスクを少しでも回避していただくための情報をお伝えします。
大きく分けると次の4つのリスクがあります。
1:法的なリスク
2:倫理的なリスク
3:遺伝子情報についてのリスク
4:運用面・セキュリティ面のリスク
遺伝子検査のメーカーから店舗や事業者で遺伝子検査キットを活用する場合、そのリスクは活用する事業者側も背負っていることを認識しなければなりません。
本来であれば避けられるリスクばかりですが、おそらく弁護士などの専門家に相談されていないのか、多くの遺伝子検査導入店舗や事業者の方々が気にされていないように感じます。
そのため、以下のチェックリストが参考になれば幸いです。
1:法的なリスク
経産省のHPには、DTC遺伝子ビジネスについて懸念や検討されている内容が公開されていますが、その中には「サプリメントなどの二次的販売のトラブルが増えている」ということが指摘されています。
【参考】経済産業省:消費者向け(DTC)遺伝子検査ビジネスのあり方に関する研究会
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dtc/index.html
遺伝子検査をサプリメントのフロント商材として扱っているケースなどは、弁護士に相談すると辞めるように注意されます。
これは、検査の結果から直接サプリメントをつなげる場合、医師法や薬機法に抵触する可能性があるからです。医師が治療の際に検査をして薬を処方するのと同じような解釈になってしまいますが、それを通販などのDTC販売で行っていい訳がありません。
これは一例ですが、他にも個人情報の管理や遺伝子検査キットの販売方法に問題が見られる場合も多いので、遺伝子検査を扱う際は、その辺を中心に専門家に相談してから導入するようにしましょう。
特に遺伝子検査の結果情報の取り扱いについて、個人情報の管理が適切に記載されているか、定義されているかを規約などを確認して、対応がしっかりしているか確認しておく必要があります。
2:倫理的なリスク
ECサイトで遺伝子検査キットを探してみると、病気リスクや適性、才能、能力、ダイエット方法など、実に多岐にわたる遺伝子検査キットが販売されています。価格帯も、2,000円~数十万円と様々です。
つい先日、ある地域のふるさと納税の返礼品に「子供の能力・才能」についての遺伝子検査キットが含まれていて、「科学的根拠が不十分なのに、誤解を招き、子どもの将来に影響を与える鑑定結果を出すことは倫理的な問題が大きい」という趣旨のニュースが出ていました。
その記事の中では「遺伝子検査で才能や能力に言及するものは、占い程度のものと言われている」と紹介されていました。そのことを遺伝子検査キットメーカーの役員にヒアリングしたところ「否定しないしよくわかっている」との回答があったことまで触れられていました。
これは法律違反を犯している訳ではありませんが、記事にも指摘されているように倫理的に問題視されているケースです。
科学的根拠が十分ではない範囲の事を、さも科学的に証明されているかのような事実誤認を与える表現は倫理的に問題があります。他にも、病気リスクをDTC遺伝子検査キットで言及したり、本人の努力ではどうにもならないような事象について言及するものも、倫理的に問題があると指摘されています。
事業者が導入する際には、このような倫理面の問題に配慮がなされているかどうかを確認してから扱うようにしましょう。
3:遺伝子情報についてのリスク
これは上記した【2】に大いに関連しています。
先に紹介した経産省のサイト上では、DTC遺伝子検査キットについて「ほとんどは有用性についての科学的根拠が欠如している」と記載されています。
【参考】経済産業省:第2回 消費者向け(DTC)遺伝子検査ビジネスのあり方に関する研究会https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dtc/002.html
代表的なものを例にあげると「肥満関連遺伝子」が該当します。
よく「糖質・脂質・タンパク質」の3大栄養素に絡めて肥満のタイプが分かる、ダイエット方法が分かる、何を食べたら太る・痩せる、などの言った訴求で販売されています。
この遺伝子については、10年も前にすでに肥満に関連がないという数千人規模の調査結果が発表されている遺伝子です。ジムやエステサロンなどの事業者で取り扱っているものにこの肥満関連遺伝子は非常に多く見られますが、これらを含めてほとんどで科学的根拠が欠如していると言われているのです。
このように、倫理的に問題のあるDTC遺伝子キットが販売され続けていることが指摘されていますが、これを知らずに扱ってしまう事業者に至っては「間違った情報を参考にしてしまっている」というリスクが存在します。
科学的根拠はどのようにとらえているのか、それはどうやって得られた根拠(エビデンス)なのか、専門知識はどのように担保されているのかなど、取り扱う場合は遺伝子検査からどのよう集められた情報を参考にできるのかを事前に確認するようにしましょう。
4:運用面・セキュリティ面のリスク
遺伝子検査と聞くと、どういう訳か多くの方が「ちゃんとした体制で運用されているはず」という前提で認識しているようです。
導入を検討されている事業者の方や、すでに導入・活用されている方は、この認識は今一度確認した方が良いポイントです。
運用面で最も確認しておくべき点は「検査体制」です。
どのような方法で、どこで検査されているのか、検体管理や匿名化はどうなっているのか、など気にする必要があります。
検査方法や検査場所を非公開にしている場合があるようですが、それは論外です。検体の取り扱いは、検査を受ける人にとって非常に重要なことです。やましいことがない限り、それを隠す理由がありません。
他には、専門的な知識のサポートレベル(国家資格保有、研究者の関わり、専門回答、研修など)、法律・倫理面の体制(リーガル理解やチェック、倫理審査委員会有無など)、検体管理やそれに対する理解度、検体採取(唾液か綿棒か)についてなど、運用面では多くチェックする項目があります。
さらに欠かせないのがセキュリティへの取り組みです。
検体の保存期間、個人情報の管理、事務所の情報セキュリティ体制、遺伝情報のデータ管理と、セキュリティ面での取り組み内容のチェックは必ず行うようにしましょう。
分かりやすいのは、PマークやISMSの取得有無をチェックすることです。
このように、遺伝子検査を導入・活用する場合は分かりやすいチェックポイントが存在します。
事業者が遺伝子検査を導入・活用する場合、事前にリスクを確認できる知識を身につけておくと、エンドユーザーからの質問に対してもすぐ答えることが出来るようになります。
またすでにリスクがある遺伝子検査キットを扱ってしまっている場合、今時点でリスクを被ってまで扱う必要があるのかどうか、今一度冷静に考えてみると良いかもしれません。
本日は以上です!
最後までお読み頂きありがとうございました。
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