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2021年に飲んだ500以上の日本酒を振り返るよ

日本酒はお好きですか?

2019年の夏に日本酒にハマってから、日本酒をたくさん飲むようになりました。そんな出会いの記事はコチラ

2020年は好きなコロナ禍もあり外食に出づらい環境でもありましたが、自分で購入したりたくさんのお酒を飲みました。その中でジャンルをいくつか設けてBEST5なんてつくってまとめたものがコチラ

そして2021年。勉強がてら国際唎酒師までとってしまい、日本酒沼により一層ズブズブハマっていきました。一時は感染拡大による時短営業などもありましたが、2020年に比べると落ち着いた印象があり、外で飲むことも出来て2020年の約3倍以上….500超の銘柄を飲んでいました。一気に増えています。飲みすぎ….(笑
去年のようにBEST5だなんてまとめられるような量ではないので、飲んだお酒の都道府県や酒蔵別にまとめて趣向の変化などについてまとめていきたいと思います。


1. 都道府県別ランキング

新潟県在住なのですが、よく行くお店が県内酒だけでなく、県外のお酒も取り扱っているお店であることや、飲んだことないお酒はなるべく飲むようにしています。いろんな場所のお酒を飲みましたので、都道府県別に多く飲んだ酒蔵とともに紹介したいと思います。お酒の神様でも何でもありませんし、すべての都道府県のお酒を俯瞰で紹介することは不可能なので、飲んだお酒をベースにご紹介します。

1. 新潟県 (190)

一番飲んでいたのは、さすがに住んでいる場所でもあり 新潟県 のお酒でした。

いくつか重複しているものもありますが190銘柄飲んでいました。
新潟県でなくても日本酒を飲む人でなくても聞いたことのある「八海山」「久保田」などが有名で酒蔵は90弱あります。また、米どころとして有名でもあり、"端麗辛口"ブームを生み出したといわれる新潟清酒ですが、近年のフルーティーであったり、濃醇な味わいの日本酒も多いです。実際に飲んでいるのは辛口・甘口いろいろ飲みましたが、好みもあり味わいのしっかりしたものが多かった印象です。

阿部酒造(あべ、越乃男山、スターシリーズ)
武蔵野酒造(寿亀正宗、スキー正宗)
天領盃酒造(天領盃、雅楽代)
越銘醸(越の鶴、壱醸、山城屋)
※()内は代表銘柄


2. 秋田県(31)

第二位は 秋田県 で31銘柄を飲んでいました。

米どころでもあり、"美酒王国秋田"として酒造協同組合がタッグを組んで、日本酒を前面に出している県でもあります。いまや日本酒を飲む人で知らない人はいない…という新政酒造や、東北地方最古ともいわれる飛良泉本舗など30ちょっとの酒蔵数で、全国でも多い方ではありませんが、実力派の酒蔵が多くあるといった印象でしょうか。新政が断トツで多く、その他にも何蔵かありますがフルーティーなお酒が多めでした。

新政酒造(No.6、Colors、PRIVATE LAB)
福禄寿酒造(福禄寿、一白水成)
秋田清酒(出羽鶴、刈穂、やまとしずく)
山本酒造(山本、ど)
※()内は代表銘柄


3. 山形県(23)

続いて第3位も同じく東北の山形県

山形県酒造組合でも "吟醸王国やまがた" や ”日本一美酒県” として日本酒をプッシュしている県です。…というかどこの県もおいしい日本酒作っているし、どこが日本酒県とかもう言えないですよね。50超の酒蔵があり、近年では十四代などを醸す高木酒造をはじめとして日本酒を飲んでいる方なら聞いたことのある銘柄や酒蔵も多くある県です。奥羽自慢が頭一つ抜けて飲んだ数が多く、綺麗な酒質のものが多めの印象です。

奥羽自慢株式会社(奥羽自慢、吾有事、HOCCA)
楯の川酒造(楯野川、光明、Shield 惣兵衛早生)
水戸部酒造(山形正宗)
亀の井酒造(玄亀、亀の井)
※()内は代表銘柄


4. 栃木県(22)

関東地方、最北に位置する栃木県が第4位。

温泉地の名でも有名な鬼怒川をはじめ多くの河川に恵まれており、豊富なミネラルを含んだ水のある土地であり、近年では酒米や酵母などもオリジナリティあふれる日本酒がおもしろくなっている県の一つ。鳳凰美田の小林酒造や本blogでも取り上げているせんきんなど30超の酒蔵のある県です。せんきんの様なモダンな味わいや渡邉酒造のお燗でおいしい無骨なお酒まで様々なものを飲みました。

せんきん(仙禽、NATUREシリーズ)
松井酒造(松の壽、日光囃子)
・渡邉酒造(旭興、たまか)
※()内は代表銘柄


5. 群馬県(20)

第5位は群馬県

日本3大河川の利根川を擁する県です。清流、利根川の水は軟水でおいしい日本酒を作るのにもお米を作るのにも適しています。30弱の酒蔵がありますが、飲んだことがあったのは土田酒造のみ…偏りが過ぎる(笑 研究醸造シリーズや麴歩合99%のものなど濃醇な味わいで、どこかしら尖った日本酒が多めでした。

土田酒造(土田、誉国光)
※()内は代表銘柄


6. 三重県(18)

第6位で初めて西日本の都道府県が登場しました。三重県です。

"酒米の王様"とも称される山田錦。一説ではその山田錦が初めて栽培された土地ともされる三重県は稲作も盛んで、降水量も多く酒造りに恵まれた地域でもあります。而今で知られる"木屋正酒造"が最も多く、次に 酒屋八兵衛 シリーズの"元坂酒造"が続き、5蔵の日本酒を飲んでいました。

木屋正酒造(而今)
元坂酒造(酒屋八兵衛、伊勢錦、風の宮)
河武醸造(鉾杉)
清水清三郎商店(作、鈴鹿川)
※()内は代表銘柄


7. 島根県(17)

お次も西日本で島根県

中国地方と今までよりグッと西日本にきました。出雲大社が有名な島根県ですが、酒の神様といわれる"クスノカミ"を祀っている佐香神社などもあり、お酒と密接な関係の土地の一つであります。味わいが豊かで常温や燗酒にしてより美味しい日本酒の多いイメージがあり、島根県のお酒で飲んだお酒の9割が燗をつけて飲んだものでした。

板倉酒造(天穏、無窮天穏、イトナミブルワリーシリーズ)
旭日酒造(十旭日、出雲だより、八千矛)
玉櫻酒造(玉櫻、殿、純米とろとろにごり酒)
王祿酒造(王祿、丈径、溪)
※()内は代表銘柄


8. 山口県(15)

続いても西日本、本州の最西端となる山口県が8位です。

県のほとんどが海に面しており、昔から流通の活発であった土地です。杜氏制を廃止し、システム化を進めて品質と再現性を追求した結果、今や日本はもちろん世界中で飲まれている"獺祭"を醸す旭酒造があります。その他にも"天美"の長州酒造や"大嶺"を醸す大嶺酒造など近年に再建・復活を遂げた酒蔵がある点も面白い県です。

・長州酒造(天美)
永山本家酒造(貴)
岩崎酒造(長陽福娘、西都の雫)
旭酒造(獺祭)
※()内は代表銘柄


9. 奈良県(14)

またしても西日本が続きます。近畿地方から奈良県です。

清酒発祥の地ともされる"正暦寺"があり、日本で最初の酒造技術書とされる古文書 "御酒之日記" にも記載があります。濃醇な酒が多い印象があり、室町時代当時の酒造りを回顧した甕での酒造りをしたりと清酒発祥の地ならではの面白い取り組みをしている酒蔵も多く、日本酒の面でも注目したい県です。また酒蔵に「〇〇本家」という名前が多いのも清酒発祥の地と関係があるかもしれません。

大倉本家(金鼓、大倉、濁酒)
久保本家(初霞、睡龍、生酛のどぶ)
美吉野酒造(花巴、南遷)
油長酒造(風の森、水端)
倉本酒造(KURAMOTO、倉本、金嶽)
※()内は代表銘柄


10. 長野県(14)

数では奈良県と同じく同率の9位となったのは日本の中心あたりに位置する長野県

避暑地としても有名で、山に囲まれた土地は豊かな水資源があり、酒米 "美山錦" 発祥の地としても有名です。長野県酒造組合によると約80もの蔵があり、全国でも2番目の数とのこと。長野県自体広いですしね。長野県のお酒は「コレをよく飲んだ」というものがなく10蔵のものを一期一会で少しずつ飲みました。

伴野酒造(澤の花、Beau Michelle)
伊賀屋酒造(岩清水)
豊島屋(神渡、豊香)
丸世酒造(勢正宗)
※()内は代表銘柄


その他

昨年の都道府県別と比較したものがこちらです。ちなみに東西はNTTのエリアで分けさせてもらいました(参考

飲んだ総数が違うので一概には言えませんが、昨年(約170杯)と比較すると西日本のお酒の比率が増えた印象があります。一概には言えませんが、東日本の方がフルーティーで軽快なもの、西日本の方が味わい深いどっしりしたものが多い印象があります。自身でも去年より燗酒が好きになっていて積極的に飲んでみようと意識していたところがあります。

また、全国のお酒を幅広く飲んではいましたが、山梨、和歌山、愛媛、長崎、熊本、宮崎、沖縄 の8県のお酒は飲んでいませんでした。
こうしてみると、山梨はブドウの産地として有名で、日本酒よりワイナリーのイメージ。それ以外の県は四国・九州・沖縄…とみんな西です。酒販店さんも各地の地酒を軸に商売しているところが多く、現在住んでいる新潟では西日本のお酒は入手しにくいといった影響もあります。特に沖縄は日本酒の蔵はあるそうですが、1つだけで新潟では流通しているのを見たことがありません。入手して飲む機会はあるのか(笑

逆に珍しいところでいうとフランスのお酒を飲みました。フランスといえば、#あべマフィア としても知られる 今井翔也さんが杜氏をつとめる東京・三軒茶屋にも蔵を構えるWAKAZEがありますが、WAKAZEでなくフランス人の蔵元の「Les Larmes du Levant」、日本語にすると「昇涙酒造」です。

記事の中にもありますが、米の味を感じる濃醇な味わいで、冷たくではなく常温か熱めの燗酒で本領を発揮するタイプのお酒です。昔ながらのバターたっぷりの濃い目のフレンチとあわせると美味しいだろうな…と想像できます。やはりワインのイメージが強いので、フランス本土での人気が気になるところ。


2. 蔵別ランキング

続いて、飲んだお酒を酒蔵別にまとめてみました。おいしいお酒はたくさんあり「コレが好き」というお酒は挙げていくときりがないし、何かしら漏れそうなので、飲んだ数でランキングを作りました。重複している銘柄もありますが、酒蔵別での飲んだお酒をカウントしましたので、数の多い酒蔵さんから順にお酒と酒蔵の紹介を(主観全開で)していきたいと思います。


1.阿部酒造(新潟)

2021年、酒蔵別で最も飲んでいたのは新潟県柏崎市の阿部酒造さんです。500超の中、リキュール込みで25杯飲んでいました。割合にしてしまうと0.05%ですが、間違いなく気に入って飲んでいた蔵の一つです。

"「圧倒的にうまい」プロダクトを造ります " とある日本酒の中で一番最初に飲んで衝撃を受けたのが★(スター)シリーズのVEGAです。 最初に白ワインの様な香味の日本酒が好きだとわかり、いろいろと調べている間に出会ったのがVEGAでした。ワインのエチケットのようなお洒落なボトルと濃醇で厚みのある旨みで虜になり、他の★シリーズはもちろん、昔ながらの越乃男山、平仮名あべシリーズ、圃場別シリーズ、その他企画品など多くの商品を飲みました。個人的には "ホボホボゼンコウジキモト" という麴割合96%のお酒が旨味爆発で激イチ押しです。

味がおいしいことに加えて、今住んでいる柏崎の酒蔵であること、6代目の蔵元である阿部裕太さんが同い年であることや、また他業種とのコラボだったり、酒米育成プロジェクト、今年から始まるコーラシロップ造りなど挑戦的で美味しいお酒を造っているので個人的に応援している蔵でもあります。関係するクラウドファンディングは以下を参照ください。

また、酒蔵やこれからのプロダクトであったり、様々なインタビュー記事などもありますので、何個かリンクを置いておきます。

阿部さんご本人はよく「うちはまだまだ小さな蔵」という旨を言っておりますが、グングンと急成長中かつ、伸びしろたっぷりな阿部酒造はこれからも要注目です。


2.武蔵野酒造(新潟)

続くのも同じく新潟県の上越市にある武蔵野酒造さんです。同一銘柄もいくつかありますが、こちらは21杯飲んでいました。

2020年には飲んだことのない酒蔵さんでしたが、2021年には飲んだ数で第2位に入りました。酸っぱいお酒が好きな自分へカネセ商店さんから「きっと好きなやつが入ったよ」との連絡があり、飲んだのが スキー正宗 朝一搾りシリーズです。酒造りの期間のみ販売している朝一に搾った生酒を即、瓶詰めするという無濾過生原酒シリーズです。日によって大吟醸だったり、普通酒だったりと飲んでみなければわからないお酒です。勧められて飲んだものは2020年の12月25日搾りのもの、乳酸っぽい酸味がグッと効いた後にじんわりと感じるお米の甘旨味…めっちゃ好きなやつでした(笑 

カネセさんでも「コレは美味い」とタンク買い別注しちゃうほど(笑 おかげで色んなシリーズを飲み比べてるうちに蔵別で2番目に飲んでいました。世の中の新潟清酒らしさを完全にひっくり返す面白くておいしいお酒です。蔵内の設備なども含めた詳細や、他の朝一搾りシリーズは以下のリンクから購入できますので是非。

武蔵野酒造さんも朝一搾りだけでなく、仕込みの一部に芋焼酎を使ったものや、ワイン樽熟成の日本酒など挑戦的でおいしいお酒をどんどんと造っている要注目の酒蔵さんです。


3.土田酒造(群馬)

続いては群馬県の川場村にある土田酒造さんです。こちらは20杯飲んでおり、土田さんが委託醸造で作られていたモノもカウントしています。

初めて土田酒造のお酒と出会ったのは2020年の12月、"あおぎり" さんのインスタグラム で目にした「酒米違い、麹歩合違いで10種類の日本酒のみ比べができる」と。日本酒好きでなければ「何を言っているんだ?」となるような企画「研究醸造シリーズ」が初めての出会いでした。低精米のお酒のイメージといえば、俗にいうオフフレーバーの多いタイプか、油長酒造さんの風の森シリーズの様に低精米をは思えないフルーティーさをもったもののイメージでしたが、土田酒造のものは嫌な香りもせず、濃醇で米の味が前面に出ていて「何コレ…美味い…」と思った記憶があります。

平成29年から「全量純米生酛仕込み」に転換したそうで、低精米の飯米で米の美味さを前面に押し出したお酒のイメージがあります。濃醇で中華やカレー、エスニックなど味が濃くてクセのあるものにも…むしろ、そういう料理と一緒の時に料理に負けずに良さが出るイメージです。実際に土田酒造さんの企画で群馬県内のカレーと合わせた「シン・ツチダ×カレーグランプリ2021」なんてのも開催していました。

濃醇なうま味を生かして地元のカレーと一緒に町おこしのような形で地域貢献できるとかとっても素晴らしい!!好き!!

味ももちろんですし、研究醸造の10種類など普通やらない(やれない?)様な角度でのお酒造り、「ツチダPRESS」という公式ブログも見やすく、面白く発信してくれてるところなど色んな好きが詰まった土田酒造です。


4.新政酒造(秋田)

お次は秋田県秋田市にある酒蔵、新政酒造さんです。21年の初酒でもある新年純米しぼりたてに始まり17杯飲んでいます。

きょうかい6号酵母が分離された酒蔵として、基本的に生酛づくりを行い、蔵の環境で自然に造れるお酒のみを醸す酒蔵です。日本酒好きの間で知らない人はいないであろう酒蔵のひとつで、新政のお酒をきっかけに日本酒が好きになったという方も聞きます。人気ゆえに自分ではとても購入する機会もないし、「俺なんかより本当に好きな人が買ってくれ」といった気持ちなのですが、カネセ商店さんのおかげで飲む機会に恵まれました。

全体的に「フルーティーですっきりと美味しいし」といったイメージこそありますが、頒布会でのお酒なんかはかなりマニアックな研究醸造的なお酒が多いです。自分も何種類か飲む機会がありましたが、ある程度詳しくないと、説明資料を読んでもチンプンカンプンなほどのお酒でした(笑 ちなみにどれも美味しいお酒になっているのでやっり凄い。それに加えて去年は「No.6」シリーズが10周年を迎えて様々な企画酒がリリースされていました。「日本酒界のスティーブ・ジョブズ」と言われることもある佐藤当主の記事は数多ありますが、面白かったのを何個かピックアップしましたので是非。

また自身が代表を務めるJSP(ジャパン・サケ・ショウチュウ・プラットフォーム)や販売サイト「UTAGE」でライブ配信や限定酒の販売など積極的に日本酒の発信を行っており、デザイン性も高くスタイリッシュなプロダクトで気付かれにくいですが、最先端にいながら挑戦し続け、日本酒の為に発信もし続けているとてつもないモンスター酒蔵です。


5.せんきん(栃木)

続きまして栃木県さくら市にある ㈱せんきんさん です。季節ものなどの限定を中心に12杯飲んでいました。

自分が日本酒にハマるきっかけとなった夏のお酒「せんきん かぶとむし」を醸している酒蔵さんです。いままでの日本酒のイメージをひっくり返す甘酸っぱいお酒でした。間違いなく自分の中の日本酒のおいしいの基準の一つになっています。「酸が特徴」というイメージやブランディングをした後は木桶であったり生酛による乳酸無添加、地元産の米と水のドメーヌなど突飛なことはせずに、回顧し、基本に忠実…その基本のレベルをあげていくようなお酒造りのイメージです。

薄井さん自身も上記の記事内でおっしゃっていましたが、兄弟で酒造り…しかもそれで傾いていた酒蔵を立て直した…ってなんかいいですよね。マンガとかアニメの世界みたいで(笑

また、今では春夏秋冬それぞれの季節に合わせたお酒というものをよく見ますが、せんきんの四季シリーズ(さくら、かぶとむし、あかとんぼ、ゆきだるま)はラベルも可愛く、わかりやすいので季節ごとの風物詩のイメージも定着しています(自分の中では)。また、アッサンブラージュ…お酒のブレンドも初めて知ったのはせんきんのものでした。

ワインに基づいた考えで、日本酒に酸味というアクセント…またそのイメージをつくりあげたせんきん。多角的で挑戦的な薄井さんだからこそのプロダクトやストーリーがこれからも楽しみです。


6.板倉酒造(島根)

続いては島根県出雲市にある板倉酒造さんです。同一銘柄、リキュールも込みで11杯飲んでいました。

最初に飲んだのは島根県の酒米"佐香錦"でつくられた 純米大吟醸 だったと思います。最近、主流なフルーツを思わせる吟醸香などはありませんが、穏やかな旨味がゆっくり、じんわりと身体に沁みていくお酒です。「天が穏やかであれば窮する(困る)ことは無い、世界とその未来が平和であることを願う」という意味で、仏教の聖典にある "無窮天穏" から命名されているそうですが、「まさに!!」と納得のお酒です。

また、以下の小島杜氏のインタビューや公式HP内にあるどぶろくを作るにあたっての文章がとても面白い。酒造りに惹かれて「なぜ、酒を造るのか・飲むのか」といった疑問に真正面からぶつかりにいっており、酵母や酒米などのスペックでなく、杜氏さんの考えがみられるのがとても面白いです。

また、無窮天穏SAGA というシリーズのお酒があるのですが、脈々と受け継がれてきた杜氏さんの血潮などといった本来の意味に加えて小島杜氏自身が好きなゲーム「ロマンシング サ・ガ」にかかったりもしているそうで、「この人もゲーム好きなんだ」なんて親近感がわきました。そういう点でも惹かれます(笑 

情報が入りすぎるとどうしても意識してしまいがちですが、杜氏さんの思いに触れて飲むお酒もまた格別ですので、是非一読してみて板倉酒造さんのお酒を楽しんでみてください。


7.美川酒造(福井)

福井県福井市にある酒蔵、美川酒造さんです。同一銘柄を何度も飲んでおり、計10杯飲んでいました。

日本酒の酸が好きと気付いてからいろいろと日本酒を探すうちに辿り着きました。酸のある日本酒が好きな人が行きつくある種の頂(いただき)だと思っています。蔵でのお酒の多くを山廃造りで造っているとのことです。

蔵付きの酵母が乳酸をたくさん生成する酵母だそうで、どのお酒も酸がしっかりとしています。…と酸の話ばっかりしていましたが、酸という圧倒的な個性がありつつ、旨味、甘みなどもしっかりあるお酒。また、大昔から使っている木槽の影響なのか樽熟成を思わせるような木の香りも感じます。新酒も旨いけど、熟成させても旨そうです。また、酸のことばかり話しましたが、搾り終えて出てくる酒粕をもう一度発酵させて搾った甘味強めのみりんのようなお酒もあります。甘辛度の基準となる日本酒度はなんと-150 越えという(笑 

特徴的で、ホント悪口でなくイイ意味で変なお酒のイメージがあります。一度、お会いしてほんの少し話しただけですが、酸や甘みという個性の中にあるのは美川さんの柔和な人柄を思わせる優しい旨味です。特徴的ゆえに好き嫌いが分かれる可能性は大…いや、特大ですが、一度飲んでみてもらいたいお酒の一つです。


8.天領盃酒造(新潟)

新潟県佐渡にある酒蔵、天領盃酒造さんです。特約店限定銘柄を中心に美川さんと同様の10杯飲んでいました。

代表の加登さんは 廃業寸前の酒蔵をM&Aで買い取り、史上最年少蔵元となった方で、『マツコ会議』などにも出演していました。「#テキーラ加登」としても有名とかなんとか… こういった派手な話題に目が行きがちですが、恐らく地頭が良くて熱心なんでしょうね、蔵元として経営などはもちろん、兼任で杜氏となり3年目でしょうか。設備も拡充し、加登さんの理想のお酒を少しずつ体現していっている蔵です。

メインとして天領盃雅楽代(うたしろ)という2つのシリーズがあり、個々で違いはありますが、全体的に甘旨みを感じ、スッとキレのある天領盃と、穏やかな甘さと酸の余韻が気持ちよい雅楽代といった印象です。

また、20代の若い蔵元のみで日本酒を造る「二才の醸」や佐渡の中にある酒蔵5蔵での日本酒から佐渡の農業や日本酒文化を盛り上げようという企画など、天領盃のお酒に触れる機会がこれからより一層増えてきそうです。

巨大で古くなった設備やマイナスからのスタートなど様々な問題はあるとは思いますが(どこの蔵にも大なり小なりあるでしょうが)酒蔵見学させていただいた時の加登さんから感じましたが、挑戦というよりも野望にも近い高い目標にむかって、飲む人間もワクワクさせてくれそうな酒蔵さんです。


9.奥羽自慢株式会社(山形)

山形県鶴岡市にある酒蔵、奥羽自慢㈱さんです。同一銘柄の生、火入れ、にごりの違いなども含めてこちらも美川さん、天領盃さんと同様の10杯飲んでいました。

初めて飲んだのは多分、純米吟醸。2年ほど前の日本酒を好きになった直後くらい、ラベルは金の筆文字で(ちょっと)厳ついイメージに対してなんだか飲みやすく漠然と「美味しいなぁ」とのイメージがあります。飲んだお酒である吾有事(わがうじ)とは蔵元の体調不良や経営不振をきっかけに立ち上げた新ブランドの様です。

それからいろんなお店で見かけ、何種か飲む機会がありましたが、なんて言うか香りもよく、美味しいし、変な癖がなく手元にあると気づけば飲んじゃうお酒です、スーパーユーティリティープレイヤー感。

中でも2つの酒販店さん限定のオーダーメイドであるサングロウというお酒をよく飲みました。柑橘系の香りにふわっと優しい甘旨みにそれをさらっていく酸味…冷やして、燗にして、燗冷ましにして、カクテルのごとく色々割って…と。このあたりは2つの酒販店さんの販売ページのリンクを置いておきますので、暑苦しいくらいの(笑)熱量を感じる紹介文と共に是非、お試しください。

酒米だけでなく、飯米を使ったものもみんな綺麗、凄い。優しく、寄り添ってみんなを裏切らない感じのお酒、吾有事とともにこれからも注目したい酒蔵さんでした。


その他

酒蔵ランキングで9つの酒蔵さんを紹介し終えての考察です。

味の好みとともにある特徴がみてとれます。それはよく行くお店で扱っている銘柄ということで、土田酒造以外はすべてカネセ商店で取り扱いのある銘柄でした。以前、記事にもした長岡駅前の 角打ち+81 カネセ商店 さんで取り扱っている酒蔵がほとんどを占めています。酒販店 "カネセ商店" さんが出している飲食部門です。

お酒の好み以上によく行くお店の傾向が色濃く出た結果かもしれません…逆に土田酒造も #麺dig の記事ではおなじみの あおぎり さんでしか飲んだことがないので、こちらもお酒以上にお店の好みが反映されているのかも。逆にお酒の新入荷情報を見てお店に行くパターンもあったので、そこはお酒の好みとしておきましょう(笑

飲んだお酒の蔵別ランキングを見ていると、酒蔵もしくは商品のラインで味のイメージがしっかりと定着しているものが多い印象があります。あと甘みや酸味など味のしっかりしたものを好む傾向がみられます。比較的モダンな味わいのお酒が多く、美川さん以外は蔵元さんか杜氏さんが若い酒蔵です。
また、最近は精米歩合が低いものや、純米吟醸よりは特別純米のような、より米感だったり、味のしっかりしたものを好んで飲んでいます。綺麗でおいしいものもありますが、綺麗すぎるよりもお酒の特徴を感じる方にシフトしていった印象です。季節柄、燗で飲む機会も増えているのも要因かもしれません。


3. まとめ

本当は飲んだお酒の日本酒度や、酸度、精米歩合等まで、集計して考察してみようと思いましたが、さすがに無理でした。飲んだら楽しくなっちゃうもの(笑

日本酒を好んで飲むようになり、早2年ちょっと。好きな日本酒は増える一方…というか飲むようになって、以前苦手だったものも改めて飲むと美味しく感じたり好きなところとそうでないところをよりハッキリわかって楽しめるようになってきました。今年はちょっと苦手意識のあった普通酒なんかも飲んでみようと思います。

感染症もとどまるところを知らず、残念なことに飲食店の時短営業要請などで日本酒や飲食店をとりまく環境は依然、厳しいものとなっています。何かのきっかけで好きなものが人に伝播していったらいいな…と思い、(あと忘備録として)書きました。少しでも日本酒や酒蔵さんに興味をもってもらえたら嬉しいです。


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