今いないならいらない
1月8日(水)
東京オリンピックの応援ソングをなぜか私が作詞作曲していた。丸一曲が完成し、脳内で最後のワンフレーズが流れ終わった瞬間に目覚めたが、もちろんどんな曲だったか少しも思い出せない。熱は少しだけ下がった感じがあるが、左肋骨の激痛は頻度が高くなっている。数十秒に三、四回ペースでズキン、ズキン、と痛む。広範囲に衝撃が走るような痛みだ。声を出さずに耐えているより、「いてーいてー」と言っていたほうが痛みが分散することに気づいたので私はいてーいてーbotになった。罪のないバイアグラ医師を呪いながら5個入りあんぱんを2つ朝食にして、薬を飲んだ。
私の母は離れていても私の体調不良を察するエスパー能力があるので、元気ですか仕事始めは順調ですかとLINEしてきた。隠しても仕方がないのでインフルだというと、看病しに行くと即レスされるが、母を迎え入れられる状態に家を整える重労働に体が耐えられないので断る。
T氏は何を思ったか、「インフルダイエットだね(スマイル絵文字)」とくそおもしろくもねえ馬鹿発言をしてきたので無視した。つきあっているわけじゃないとはいえ、週2で会うくらい近しい関係性の一人暮らしの人間が寝込んでいるっていったら、ふつうもうちょっと心配しないかな。うつしても困るし看病してくれとは思わないけれど「何か買って持って行こうか?」くらい言ってくれてもよくないかな。往復二時間かかるとかならともかく、うちは彼の職場と彼の自宅の中間地点だし、仕事帰りに途中下車してコンビニ寄って買ったものを持ってくるくらい大した手間じゃないと思うし私だったらそうするけれど。けれど。
この間大学時代の友人Aちゃんと会ったときに「ダメな男でもいないよりいたほうがいい」という話をしたしそのときは本当にそう思ったけれど、私は自分が弱っているときにいないならいらないかもしれない。このタイミングで空気になるなら常日頃からもう私の人生において空気以上の存在感を発揮しないでほしい。普段は「お互い何も期待しない求め合わない関係」とか綺麗事言っていても弱ってくると本音が出るな。
今日が全体の仕事始めなので、私の特別休暇を知った職場関係の人たちが心配して連絡をくれた。みんな優しくて胸がいっぱいになる。
前の職場のくそパワハラ上司は、私がインフルだったとき、「俺にはうつってなかったから安心してください!」ってメールしてきたな。あいつもくそやろうだったな。
呪詛ばかりが渦巻いて余計熱と痛みが激化しそうだったのでまた寝た。レンチンしたあずきのチカラを痛む部位に載せると、痛みの間隔が長くなってよく眠れた。
夜、昨晩に続き解熱剤を飲むと熱も痛みも一気にひいたので、風呂に入り、能町みね子『結婚の奴』を読んだ。著者が恋愛感情も性的交渉もないゲイの男性と「結婚」と称して同居し始めるまでを描くエッセイ。web連載は、男性の家で同居を始める第一回しか読んでいなかったので、「結婚」の経緯以外にも過去の回想に多くの章が充てられていることに驚いた。雨宮まみさんについて書かれた数章は他とトーンが違った。最後まで読むとどうしてもこのテーマの本に彼女のことを書かなければいけなかった理由がわかった。憧れていた女友達に言われた「私はやっぱり子供を産まないと、女じゃないと思ってるから」という言葉に復讐心を燃やした若き日の著者の気持ちも痛いほどわかってつらい。
同居することになる相手男性の持ち家である三階建て一軒家の描写が、読んでいてわくわくした。文章から伝わってくる家主の家への愛。DIYやリノベーションを経てどんどんキュートさを増していく内装。バラまで育ててるし。ああ、持ち家いいなあ。
深夜になっても眠くならなかったので、友人ふしぎちゃんがよくつぶやいている「家事ヤロウ」というTV番組を見てみた。普段の平日なら私は寝ている時間なので病気特権だ。バカリズムとねむきゅんさんの結婚について番組冒頭で言及していて、2人を推しているふしぎちゃんがリアタイで「きゃーきゃー」とツイートしていた。10年以上のつきあいになるけどきゃーきゃー言ってる(書いてる)ふしぎちゃんを初めて見た。番組ではカズレーザーとバカリズムと中丸くんがわいわいしながら餅を使った料理に挑戦したり、家事便利グッズの値段を当てたりしていてほっこりした気持ちになった。友人の推しているものに触れるのは良い異文化交流。そういう異文化交流ができるちょっとしたパーティーをふしぎちゃんと一緒に企画中なので楽しみだ。