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ドイツ表現主義の誕生 早崎守俊 三修社

18世紀の終わりにニーチェが「ツァラトゥストラはかく語りき」で宣言した神々の死。
著者は、ムンクの「叫び」を近代の終焉と読み、もはや神が不在となり、神の恩寵に頼ることができなくなった恐怖の叫びであろうと考える。このムンクの「叫び」が表現主義を先取りしていると。

ヴィルヘルム・ヴォリンガーは「人間がわめき叫ぶ、これが表現主義のあらゆる創作にのっている書かれざる表題です。」という。そして、自然主義、印象主義とダダイズム、シュールレアリズムなどの間で「汲みつくされて空虚になった世界をまえにした自我」「孤独を充分意識するようになった自我」を超克しようした表現の意志が表現主義だと定義する。
さらにヴォリンガーは表現主義の危機と終焉を裁断した。著者も「近代の終焉」というカオス的とポスの中で生まれ、そして死んだ一過性の熱病が表現主義であったと結論する。

しかしそれにしても、キルヒナー、ノルデやココシュカそしてマルク、カンディンスキー、アンソール、この「激情的で内向的」かつ「生命的」な「一過性の熱病」としての表現主義芸術のなんという魅力的なことか。
なお、後半には「表現派の詩と小説と戯曲」についても述べられている。

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