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闇の太陽への歪んだ羨望【日記:2023/08/22】
基本的に、他人の生き方に口出しをする気はないが、オタク界の鬼才みたいな人が人並みの幸せを掴んでいるのを見ると落ち込む自分がいる。
身勝手な陰キャの願望であるとは自覚しているが、こういう存在は骨の髄まで狂っている人であって欲しいと思うからだ。
四六時中、創作とエンタメのことばかりを考え、人付き合いや息抜きはあれどそれら全てをもモノづくりに還元しようとするような、そんな人間で。
だから、東方projectの原作者であるZUNさんの結婚が発表された時なんかは、正直かなりショックだった。
キャラクターデザインもプログラミングも、作曲もシナリオライティングも一人でできるような人間は、イカれた創作狂いだと思っていたから。女性と付き合ったり、結婚したり、そういう一般的価値観には一切興味を示さない人間だと思い込んでいた。
別に「成功してるくせに家庭円満なんて……うぎぎ」というような嫉妬の感情ではないと思う。
どちらかと言えば悲しみ。このレベルの天才であっても、恋人や友人、子供といったようなポピュラーな幸せを必要とするということに対しての。
だってそれは東方レベルの物を作れる人が、世界的な成功を収めたとしても満足できなかったということであり、人間の幸せは結局そこにはないと言われているみたいだから。
素直に祝福できない私が悪い。それはもちろん分かっている。
でも闇の太陽が、所詮昼の光を反射しただけの月に過ぎないなんてことを言われると、夜の住人としては少し辛い気持ちになってしまう。
と、そんな感情を『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い』を読んでいたら思い出してしまった。
本作に登場する人物、根元陽菜(通称ネモ)が主人公である黒木智子(通称もこっち)に抱えているのも恐らく同種の感情だと思うからだ。
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このシーンは3年生になって最初の自己紹介の場面。
まともな挨拶をしようとしたもこっちに向けて、ネモがこう言い放つ。
余裕に見えてこの女、結構重いぜ。
この台詞には、特にそれがにじみ出ている気がする。
ボッチを卒業し、丸くなりつつある主人公のもこっちに対し、あくまで自分が憧れる変人であって欲しいというような歪んだ羨望を感じるから。
結局、この後カマしたもこっちに続き、ネモも声優を目指していることをカミングアウトすることになる訳なんですが、そのシーンの彼女が顔が凄く嬉しそうなんですよね。
……いいな、と一人の人間として私もそう思う。
叶うならば、もこっちがいつまでも陰険で下品でおもしれー女であり続けますように。
現実世界の人に価値観を押し付けるのは良くないが、偶像の美少女にぐらいそう願いたい。
私やネモには、闇の太陽が必要だと思うから。
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「いいね」とか美少女じゃなかったらキモ過ぎて許されなかったよ。