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『陰陽師 とこしえの夢』

『陰陽師 とこしえの夢』
原題:陰陽師 晴雅集〈2021年〉

 夢枕獏の小説「陰陽師」が原作。原作小説は、シリーズの序盤3冊を読み、野村萬斎が主演の映画2本と稲垣吾郎主演のドラマは見ている。その上でこの「清明集」を見ての正直な感想は、中国人が陰陽師を理解するのは、やはり難しいのだろう…である。衣装は、頑張って狩衣などのテイストを残すものを作っていたし、祈祷や占術は呪術にすり替えて理解したら中国ドラマにある仙術に近いものがあるからどうにかなる。ここらへんまでは、許容範囲だ。だが、人間関係…安倍晴明と源博雅の関係は、かなり曲解されていたとしか思えない。何故、博雅が式神になるのだ?博雅も陰陽師らしい人物として描かれている時点で、嫌な予感はしていたのだが…


安倍晴明を演じた趙又廷(マーク・チャオ)は、静かで派手な動きがない。本来はアクション俳優なので若干残念にも思うが、続編で撮影済みながら監督不祥事(盗作疑惑)の為にお蔵入りが噂される「朧夜曲」では、もしかしたらアクションシーンがあったのかも知れないが、今となっては見られる望みは薄い。趙又廷は、三生三世十里桃花での黒い衣装のイメージからガラリと変わって、安倍晴明は白い衣装が目をひく。静かな動きは多いが、その佇まいと演技は流石であった。


源博雅を演じた鄧倫(ダン·ルン)、終盤のアクションシーンは見事であった。もともとこの人、演技としても喜怒哀楽が薄めだな…という感想で、それはこの映画でも思ったのだが、見せ所はしっかりと魅せてくれたと思う。


さて、この映画で安倍晴明と源博雅が立ち向かうことになるのが、長平公主と鶴守月。長平公主を演じているのは、王子文(ワン·ズーウェン)さん。登場のときにはギョッとした出で立ちでしたが、悲しみや愛憎に満ちた女性を情感たっぷりに見せてくれていたと思う。そして鶴守月を演じているのが、我らが若様·汪鐸(ワン·ドゥオ)です。1度目の視聴では気づかずにスルーしてしまったのですが、映画冒頭の安倍晴明の師匠も汪鐸が演じていた!やはり演技は上手いな…若様(◍•ᴗ•◍)   見事な身体は言うことなし、ミステリアスに装飾された上半身の裸体、撮影前の準備に相当な時間がかかっているらしいのだが、美しくて怪しい魅力満載だ。それでいて力強い。


安倍晴明の式神たち…雪天狗、金霊子、狂画師、殺生石、みんなイケメンである。元もイケメンでありながら、衣装やヘアメイクがそれぞれに似合っているのだ。



映像はバトルシーンも含めて、流石中国映画!!と迫力満点で素晴らしかった。CGではないだろう、セットも見ごたえ充分であった。
……だが、陰陽師·安倍晴明という人物を演じるには、やはり野村萬斎さんを超える俳優は、そうそう現れないだろうな、と思う。


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