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迷光は強く光り輝く【ストレイライトGRAD感想】

ついに実装されましたね、ストレイライトのGRAD。どんな重い話が出てくるのかとビクビクしてましたが、ストレイライトの各メンバーの特徴を発揮させつつ新たな一面を見出す良いストーリーでした。

傍からみたストレイライトは「強い」というユニットイメージでしょうか。
後発で入ってきてあさひをセンターとしたカリスマ性やビジュアル、赤と黒を基調としたユニットカラー。場所が違えば「ライバルアイドルユニット」として登場していたでしょう。
けれど、今回GRAD編で通して見えてくるのは、ストレイライト各アイドルのある種「弱点」。弱い部分が浮き彫りになったように思えます。
そして同時に、弱点を覆すほどの強い意志決意も描かれています。

以下、ストレイライトGRADコミュのネタバレがありますので、未プレイの方は今すぐプレイをお願いします。


芹沢あさひ/まごころを君に?

あさひの弱点。それは「気持ちを込める」ことの意味を見出せないこと。
GRADを間近に控えているにも関わらず、そば屋で修行すると言い出すあさひ。困惑するプロデューサーはなんとかあさひの突発的な行動を止めようと、あさひの動向を追いかける。そこで浮き彫りになるあさひの問題点……それが「気持ちを込める」ことを理解していないことだ。
気持ちを込める……それは人にどう伝えれば分かってもらえるだろうか。特に、あさひに理解してもらうにはどう言えばいいのだろう。我々はなんとなく「気持ちを込める」と使っているが、その基準は? どれほどやれば相手に伝わるのか、そもそもなぜしなければならないのか。明確にそれらを答えられるだろうか。
あさひはそんな曖昧な「気持ち」という基準では動かない。最高のパフォーマンスをすること、明確な優劣をつけること。そうすればアイドルで一番になれる。それが芹沢あさひの信じる世界だ。
だが不思議なことに、アイドルのファンというのは気持ちがこもってるかどうかを、判断できてしまう。あさひにとっては不条理で不合理かもしれないが、たとえパフォーマンスだけ良くても、ファンはいつか離れてしまうだろう。今は良くても、それは将来壁として立ちふさがるかもしれない。そうなってはアイドル生命として危機的だろう。

これは全くの憶測、妄想に近いのだが、あさひはこれまでの人生で「気持ちを込められたこと」「優しくされたこと」があまりないのではないか。イベントシナリオ『WorldEnd:BreakDown(以下WE:BD)』のあさひによる回想ではクラスの子たちに煙たがられていたし、WING優勝後のコミュで学校ではいつも一人であることを匂わせる発言もしている。
誰かに優しくされたり、思いやりを持った他人と接することができなかった子に「気持ちを込めろ」と言っても理解ができないのではないか。そんな風に思ってしまう。

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ともかく、危機感を持ったプロデューサーは、あさひとともにそば屋の出前(修行)をすることに。言葉で理解してもらえないなら、行動で示す。イケメンで有能なイメージのある283プロのPだが、若い、というべきか不器用なところがあると感じられる一幕だ。
大将が怪我をしたため、岡持ちを引き受けるP。依然岡持ちは持たせてもらえず不満そうなあさひ。出前先の情報をすべて記憶している完璧なあさひとプロデューサーのどこが違うのか。それは出前先の老婦人宅で分かる。
そっけなくお代をもらって次に行こうとするあさひに対し、プロデューサーは事情を説明したり老婦人がやけどしないようハンカチを渡したりと丁寧に対応する。これが「気持ちを込める」または「思いやり」ということだろう。
あさひも、決してそれが出来ないわけではない。あさひは老婦人が熱いそばが苦手なことを記憶していた。そして他の出前先に早く効率的にそばを届けることも考えている。それがあさひの考える、彼女なりの「思いやり」なのかもしれない。けれど悲しいことに、そういった思いやりは中々目に見えない。彼女は間違っていないが、目に見えない以上分かってもらうのは難しい。少なくとも彼女に今必要なのは、「言葉で伝える」ことなのだろう。
あさひはプロデューサーの姿を見て思うところがあったのだろうか。ここで初めて「毎度ありがとうございます」と言えるようになる。アイドルのかすかな成長を感じ取り、喜ぶプロデューサー。
非常にまれにみるそば屋の修行を通して描かれるアイドルの成長物語に一旦の区切りがつく。改めて振り返るとなかなかすごい、突飛なストーリーだな……。

進んでGRAD決勝後勝利コミュ。あさひは印象的な言葉を放つ。

「伝えられなかったら、伝えられるようになればいいっす」

プロデューサーは言葉だけでは足りないから、行動で示そうとした。
あさひは行動だけではダメと悟ったから、言葉で気持ちを伝えるようにした。
「気持ちを伝える」にはどちらかだけでは足りないのだ。そのことを改めてアイドルから教わった。我々もまだ修行が足りないようだ。
あさひ自身にも変化が見られたし、プロデューサーにとっても気付きの多いストーリーだったのではないだろうか。

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優勝後コミュより。まごころを君(黄身)に………なんでもないっす


黛冬優子/Fuyuko Two Face

冬優子の弱点。冬優子とふゆ、正反対の二つの顔を持っていること。そして一方を隠してアイドルをしていること。
ご存じの通り、黛冬優子には二つの顔がある。そしてその二つの性格は真逆である。「口が悪く捻くれた性格の冬優子」「万人と冬優子自身が理想とする可愛い完璧なふゆ」。その真実を知る我々プロデューサーは「いつかバレて大事になるんじゃないか」という不安を常に抱えている。普通の人間なら、そう思うだろう。人間にとって完璧を装い続けることがどれだけ大変か、歳を重ねるごとに嫌というほど実感する。
けれど冬優子はそんな不安を一笑に付し、ふゆを完璧に演じる。

一般論として、性格に裏表があまりない方が良しとされている。だから冬優子とふゆの両極端な二面性は弱点とみなされる。そんなことは当然、冬優子にもわかっている。それでも、冬優子はふゆを演じ続ける。「要は見せなきゃいいんでしょ?」と言うパワープレイを見せていく。その覚悟と年季の入った執念に我々は圧倒されるほかない。
冬優子のGRAD編は、いかに冬優子が覚悟を持ってふゆの顔でアイドルをやっているか、弱点を通して黛冬優子という女性がどれほど強いかを我々に見せつける。そんなストーリーだ。
特に強いと感じたのは、密着取材時にGRADへの意気込みを語るシーンだ。可愛いふゆだけでなく、野心を腹に抱えた冬優子の心境もそれとなく発言するという技を披露している。WING編ではかわいいふゆを見せようとしてカメラマンに見抜かれる事件もあったが、ストレイライトでの活動等などを通して可愛いだけでなく裏の顔をほんの少し見せる技法を取るほどに成長もしているように見受けられる。「この子は可愛いだけじゃない」と観客に思わせることで、アイドルとしての魅力を更につけ加えたのだ。

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そんな彼女のふゆを演じることに対する徹底ぶり、アイドルに対する姿勢、野心を間近に見たら誰しもがこう思うだろう。カッコいい、と。
もちろん、黛冬優子の事情を知っているP(と我々読者)だからこそ出てくる言葉だが、それでも言わざるを得ないだろう。彼女としては全くの不服な言葉だろうけど。

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和泉愛依/すごいよね

愛依の弱点。自分をすごいと思えない過度な謙虚さ。あるいは、アイドルに向かない温和な性格。
WE:BDを一度読めば、もしくは彼女をプロデュースしたことがある人ならわかるだろう。彼女は決して、アイドルに向いているわけではない。人前に出ることにトラウマがあり、他人との競争……順位を付けられることに抵抗のある子。そんな彼女が苛烈なアイドル社会に適応するには、どうしても無理が生じる。愛依はGRADの参加にやる気な態度を見せるが、時折複雑な表情を見せる。学校ではその暗い影を友人に指摘され、更に思い悩む愛依。
今までの愛依はストレイライトの二人がいたからこそ、その能力を発揮できた。身近なライバルには競争心よりも憧れの気持ちが強く表れ、それが原動力になっていた。だが、今回のGRADでは自分ひとりで戦うことになる。「なんのために競うのか」その理由が愛依には見いだせなかった。
だが、プロデューサーに「愛依はすごいんだって、愛依自身に証明したいんだ」と言われ、気が付く。

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「自分がすごいと証明されることは、
まわりのみんながすごいってことも証明されることなんだ」

おそらく、彼女はそういう結論に至ったのだろう。
人によっては、愛依の考え方に疑問を持つ人もいるかもしれない。どれだけ口で「この勝利はみんなのおかげ」のような言葉を耳にしても「どうせ心の内ではそんなこと考えてないでしょ」と邪推してしまうのが人の心というもの。
だが、和泉愛依は本気で思っているのだ。「みんながすごい」と。それは既にWE:BDで証明されている通りだ(もし未読の場合は今すぐイベントを読んでほしい)。プロデューサーの言うように、この考え方をできる愛依こそ本当にすごいと言わざる負えない。きっと聖母かなにか、徳の高い存在の生まれ変わりなのだろう。
頑張る理由を真に見つけた人は強い。GRAD優勝後のコミュでは、優勝時に撮った愛依の笑顔の写真がギャップ萌えとしてバズる。ここでも愛依は「プロデューサーが助言してくれたからでしょ。やっぱプロデューサーすごいわ!」と言う。彼女のスタンスはどこまでも変わらない。それが何よりもすごいことなのだと彼女自身は知らず。

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人間誰しもが弱い部分を持って生きている。それとどう向き合い、成長するか。そんなことを考えさせられる今回のGRAD編でした。ストレイライトはやはり、強い。



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