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『428 〜封鎖された渋谷で〜』【ゲーム感想】

積みゲーを崩すとき、「どれから手をつけよう」と悩んでるうちに今遊びたいものが分からなくなりません?自分は踏ん切りがつかないタイプで、そういったことがしばしば…。今回手を出せたのはAC6の主人公が621って呼ばれてるから「じゃあ次は428でいくか」といった数字繋がり。ふつう同じジャンルの『パラノマサイト』遊んだ次にやるべきでは…。

ざっくりあらすじ

『428 〜封鎖された渋谷で〜』は女子大生誘拐事件から始まる群像劇サスペンス。熱血天然刑事加納、渋谷を愛する青年亜智、癖強フリーライター御法川、ウイルス研究者大沢、記憶を無くし着ぐるみを着た女性タマ。立場も事情も違う人々が、渋谷を舞台にした大きな陰謀に巻き込まれ、次第に結束して渋谷を救うストーリー。実写の一枚絵なんだけど、要所に動きも入れつつ、一枚絵ならではの構図が多用されてたり、テレビドラマっぽいけどテレビドラマっぽくない不思議なノベルゲームだった。

ジワジワくる構図の一枚絵。
淡々と文字を読んでいるだけでは疲れていくので、
こういったクスリとさせる一枚絵で場を持たせてくれる。

群像劇の魅力とシステム

本作は複数の人物の視点を行き来して物語を埋めていくザッピング的手法が取られている。ある人物のささいな選択によって他の人物の未来が変わっていくバタフライエフェクトというか、偶然が折り重なって物事が進んでいく妙が面白い。

一人の人物のストーリーを追っているとめちゃくちゃ良いところでKEEP OUTとおあずけされる。続きが気になってゲームを読み進めてしまう。

展開や読む順番によっては問答無用でBAD ENDに直行するのだが、キャラが道半ばで死ぬのはともかく、内容がちょっとアレなものも。

追手から逃げていたらゴキが落ちてきてヒロインが帰らぬ人に…。そんなわけあるかよ!

基本的に緊迫したストーリー展開でギャグ的バッドエンドもそれなりに多く、なんだか話の腰を折られたようでテンポが悪い印象。バタフライエフェクトの結果、そういうこともあるのもわかるけど。このノリをどこまで許容できるかでまた評価が変わってきそう。


主役のようで主役ぽくない。けど主役。加納 慎也

個人的に新米刑事の加納 慎也がお気に入り。
正義感が強く熱血ゆえに感情に流されやすくどこか天然。キメ顔がカッコいいのに情けない時の顔はとことん情けない。だいぶ仮面ライダーブレイドの橘さんというか役者の天野浩成さんの中身が出てるような…?

カッコいいシーンはとことんカッコいい。
序盤にある亜智と口論してるうちに犯人を見失うちょっとマヌケなシーン。
会話の内容も中身が無くて天野さんの声で脳内再生余裕。
恋人の父親が突然渋谷にやってきたという報せを受けて素っ頓狂な表情してるのもまた良い。
なんかジワジワくる顔ドアップシーン。

序盤は行動が空回りしてどうにも頼りない印象で、事件を追う刑事の立場だけど、なかなか核心に迫れる行動も無く(群像劇の一人というのもあって)チュートリアルで選べるキャラなのに主役感があまりなかった。それが事件を追っていく中で精神的に成長していき、終盤の犯人を追い詰めるための決死の行動は息を吞む名シーンでした。

不思議なメディアミックス。CANAANと428

真エンディングに到達すると、本編で少しだけ名前が出たカナンという少女の物語が読める。

最初の文でここまでうわ!めっちゃきのこっぽい!って感じたのは久しぶり。

いままで実写サウンドノベル読んでたと思ったら、脚本奈須きのこの文章が出てくるんだから、読み物として別ものすぎる。

観たのはもう10年近く前だったから
登場人物のことカナン編を読んでようやく思い出したレベルで覚えて無かった。
見放題やってるとこ無くてアマゾンでレンタルするほかないという。

実はアニメの方は放送当時に観ていたけど、こうやって実写テイストの群像劇ミステリとラノベチックな檄強少女のバトルものが同じパッケージに入ってると困惑の方が強かったかも。きのこの文章好きだから楽しめたけど。

当初CANAANはスピンオフって書いてあったので、428本編の取りこぼした話でもやっていく感じなのか?と思ってたら428の事件の黒幕が逃げてカナンへと決着は持ち越される形で終わって続編ぽい。かと思いきやカナンの舞台は渋谷ではなく上海で、ストーリーの路線もだいぶ違ってアクション(と軽めの百合)。メディアミックスなのかスピンオフなのか、続編と呼ぶべきかなんだか不思議な関係性。どういう経緯でこのメディアミックス企画が出来たんだろ。


発売から10年近く経っているものの面白さに遜色は無く、休みの日に一気に読み終えてしまった。システム面もうちょっと快適だと嬉しいんだけどなぁ…って部分もあったけど、ノベルゲームは物語の面白さが一番大事なのでまぁ良いのかな。
そして『パラノマサイト』はこの時系列を行き来する存在すら言及したアンサー的作品だったのだなという納得も得られたので、非常に良い体験でした。


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