キャンプ=Wellnessの場にしたかった。していこう。
和歌山県海南市、下津の山の上にあるみかん園に1日ひと組だけ受け入れるキャンプ場「Mandarin Field」を開設して、6月で丸2年になります。
おかげさまでこのGWも多くの方にご利用いただき、感謝するとともに、まだまだ認知が低いことを、なんとかせねば、と考えている今日です。
ここは「ほかにはない」ことを形にしようと創った場所ですが、この「ほかにはない」って何? を少し書いてみます。
持続可能性を提案できる場にしよう。
「Mandarin Field」があるのは、農薬に極力頼らずにみかんを育てていく農業を実践している「下津きょうだいみかん山」の中。
農園主の大柿さんと知人を介して出会い、みかん農業の現状を聞き、そのあとでいろいろと調べ、適正に農薬を使う=適正価格で買ってもらえる、という流れに「?」を抱きました。
この地域でのみかん栽培は、山の斜面で行われています。害虫もいるし草も伸びる。足場の悪い斜面でそれらとうまくやっていくには、農薬が必要です。駆除・除去にはかなりの労力を要するから。
でも、労力をなんとかできれば、あまり農薬は使わなくて済むし、土壌も元気。なにより、安心して口に入れられる食べ物を提供できる。
「下津きょうだいみかん山」はその実践に挑戦し続けていて、だからこそ、キャンプ場がみかん農業の応援になればと考えました。
しかし、農薬に極力頼らないみかん栽培では、収量に限界があります。ゆえに同じ面積のみかん園を有していても、売上に差が出る。その差を補えるひとつになればと、キャンプ場の管理を農園主に外注しています。
私は運営者の立場として、予約が入ってから利用日前日まで、お客さんとのやり取りを担当。お客さんがスムーズに農園での時間へ入れるように、質問への回答をし、またこちらから情報提供をする。
現地でお客さんが出会うのは農園主であって、体感するのは自然の一部である農園。そこに私の存在は不要です。
農園主と話し、農園を見て、持続可能な農業に少しでも興味を持ってもらえるきっかけになればと願っているので。
今シーズンは、キャンプ場にサウナを導入しました。
心に何かが生まれる場にしよう。
キャンプ場開設にあたり、最も意識したのは「心」でした。
私自身は、キャンプをするようになって30数年になりますが、フィールドを選ぶ際には、そこで静かに過ごせることを優先します。
時間との向き合い方を自分のペースで、ってところを重視したいからです。
それができるフィールドだと、感性(ちょっと大げさですが)がビンビンしてくる気がするので。
ウッドデッキのへりに腰掛けていて、目の前に蝶が飛ぶ姿を見るだけでも、なんだか嬉しくなってくる。流れていく雲が頭上にあると、仰向けになって伸びをしたくなってくる。そうこうしているうちに、日常で張り詰めている気持ちが、ほぐれていく。
「Mandarin Field」では、生活音が聞こえません。
山の上だから車の往来がない、貸切だから人の声もない。農園主である大柿さんとキャンプ場開設に向けて話をすべく農園へ向かうたびに、この静けさに惹かれていきました。しばらく過ごしただけで、帰路は心が軽くなっていることに気づきました。
これが、お客さんに提供できる一番の価値だな、そう確信してのキャンプ場開設です。
やるべきことは、Wellnessの提案だ。
開設して、お客さんから感想をいただけるようになりました。
「写真出見るよりも断然よかったです」
「星空が最高でした」
「静けさと鳥の声に癒されました」
「この環境での薪風呂、最高でした」
などなど、『こんなところに本当に人が来てくれるのだろうか・・・』という不安とは裏腹に、嬉しい言葉をたくさんいただけるようになりました。
そうか、私はここでWellnessを提供したかったのだ。
お客さんとのやり取りを通して、また現地の環境と日々向き合う中で、そう気づきました。
世界は今、生活のダウンサイジングや健康への関心の高まり、心の豊かさを求める動きなど、よりよく暮らしていくことへの流れが生まれています。
グレートリセットとも呼ばれるそれらの動きの中で、大切なのはWellness。
キャンプでアウトドアクッキングを楽しむ、親しい人々と笑顔で過ごす。これらももちろんWellnessの構成要素です。
しかし「Mandarin Field」は、そのひとつ手前で、『よりよく暮らすことへの興味を喚起できるような環境』を提供したい。
風って気持ち良いね。鳥の声って癒やされるね。静けさって落ち着くね。空を見ていると元気が出るね。など。
思うことは人それぞれですが、このような思いが心の中に沸いてくる場でありたいなぁ、と思っています。
私自身は、メンテナンスに行った際に、のんびりサウナを楽しむこともありますし、農園主が園内にいないときには、ウッドデッキで瞑想したりもします。
思い思いに「時」と向き合い、何かを思ってもらえたら嬉しいな。それはつまり、言葉ではなく場でWellnessを提案することなのです。
そんなこんなで、実はまだまだ発展途上ですが、そして認知拡大に向けた動きもたいしてできていませんが、進んでいきます。