ジュニアアスリートメディカルサポート通信Vo.20 〜キック力について必要な筋力について科学する〜
ジュニアアスリートメディカルサポート代表の宮田大揮です。我々は、小中学生のアスリートをサポートして5年ほどが経ちました。2024年7月から、クローズされていたサポート体制をウェブ上にオープンしました。具体的には、医学の力をジュニアアスリートの能力を最大限引き出すためにフルコミットする形で使っていこうというのがコンセプトで、アジアから世界に誇れる選手を様々なスポーツで輩出することを目的としています。
第20回は「キック力について必要な筋力について科学する」を取り上げたいと思います。このメディカルサポート通信も20回になりましたが、序章をお伝えしている形になりますので、詳しい内容に興味がある方はHPよりご連絡いただければ幸いです。
「キック力」は様々なスポーツで必要とされるものですが、今回は競技の人気から問い合わせの多いサッカーについてお話させてもらえればと思います。サッカーにおける「キック力」とは格闘技と違いボールを蹴る力を指します。つまり、ボールをより力強く、遠くに飛ばすことができることを目的とします。もちろん、キックの種類によってカーブをかけたり、ドライブをかけてボールを落としたり、バックスピンをかけてボールをより高く飛ばしたりもしますが、ここでは遠くにかつ速くボールを運ぶことにフォーカスしてお話したいと思います。
当施設で相談される内容としては、「強いシュートが蹴れない。ボールが遠くに飛ばない。」が多く、同じ相談でもそれぞれ要因が異なることが多いです。どうしてチームのコーチではなく、メディカルバックアップの当施設に相談があるかというと、チームのコーチなどに相談すると「中学生になったら蹴れるようになるから、今はしっかりボールを扱えるようになっていれば良い」というお返事がほとんどのようで、選手自身から「同級生で自分よりも小さい子でも、自分よりも強く、遠くまでボールを蹴れているのはどうして?」と質問されるため、純粋な疑問なのだと思います。
今回はサッカーに特化した話なので格闘技などのキックは割愛しますが、「キック力を強くする」のではなく、ボールを遠くにかつ速く飛ばすことに焦点を当ててお話したいと思います。サッカーボールは32面体でできており、表面が五角形と六角形の組み合わせで作成されています。そして内部にはゴム素材の球体があり丸く、頑丈なボールとなっています。この球体を遠くに速く飛ばすためには足で蹴った際にボールの反発力を最大限に引き出す必要があります。ボールの反発力を最大限に引き出すにはボールの重心に蹴る力を伝える必要があり、ボールの重心を理解してキックができれば求めているキックを蹴ることができます。
では、「同学年の子でとくに体格面(体重や身長)で自分より小さい子の方が遠くに速いボールが蹴れるというのはどういうことか?」についてですが、ボールの重心をキックで捉える技術が備わっているか?いないか?の違いになります。ボールの中心にある重心をしっかりとキックで捉えられるかどうか?は、インステップキックでボールが蹴れるか?ボールを回転させずに蹴ることができるか?にかかっており、端的には繰り返しボールを蹴ることで自然と身につけることもできます。もちろん、得意不得意はあるので習得までの期間が長い人もいれば、短い人もいますが、やれば必ずできます。一度習得したと思っても重心から少しずれるとボールに力が伝わりにくくなるので、飛ぶ距離や速度は大きく変わってしまいますので、反復練習で精度を高めておくことが大切になります。ここまではよく言われていることですが、メディカルサポートで出来ることは、より速く、より遠くに飛ばすために必要な要素について言及したいと思っております。
つまり、ボールの芯を捉える能力は身につけた上でより強いキックをするためには、
①体重を増やす
②身長を伸ばして足を長くする(リーチを長くする)
③筋力をつける
の3つになります。①と②については別な項目として当施設でフォローしておりますが、今回は③の筋力についてフォーカスを当てていきます。キック力ですと足の筋力が注目されがちですが、重要な筋力は腹筋、背筋、大腿四頭筋、ハムストリングになります。論文的な考察も行われておりふくらはぎの筋肉はキックには大きな影響を与えないことがわかっており(無意味ではないのですが統計的な有意差が出せなかったと言う意味になります)、重要な要素は体幹と太ももの前後の筋肉ということになります。大腿四頭筋とハムストリングの筋肉が強くなると蹴り足の力がつき、速くて遠くにボールを飛ばすことができるようになります(軸足の支えも大切であるため両足バランスよくトレーニングすることも大切です)。つまり、体幹を鍛えながらハムストリングの筋力を養い、それに合わせた大腿四頭筋の筋力をつけることが重要になるため、速く走ることに必要な筋力とほとんど同じになるため、小学生年代でも自重によるトレーニングで鍛えていくことは良いことと我々は考えています。当施設では、ジュニアアスリートのバックアップとして成長に悪影響を与えないように大腿四頭筋やハムストリングへのアプローチを提案しておりキック力向上に寄与しています。最後に、ボールの重心を捉えることですが、すぐに身につけれる子供には必要がありませんが、習得に時間のかかる子は多くの場合、この見えない「ボールの重心」を意識できないからだと考えられています。ボールの真ん中を蹴れ!と言われて、本人は蹴っているつもりだが足が思い通りに運べていない場合もありますし、見えない重心の意味がよく理解できていない場合もあります。そのような場合には下記のyoutubeにあるような重心を視覚化したボールなどをトレーニングに用いてみても良いかもしれません。
https://www.hinomarc.com/post/asai01
このようなことに医学的にフォローすることは日本の保険診療ではできませんので、小児科などで相談することができない側面もあり、我々は2024年7月からジュニアアスリートメディカルサポートとして一般向けにオープンいたしました。ご興味のある方はぜひとも下記サイトもご覧ください。